下町の職人夫婦が作る、トタンの米びつ

今日のひとしな
2016.09.19

~in-kyo(インキョ)より vol.19~


東京・蔵前にお店があった頃の移動は、たいがい自転車。坂もない平らな道が多い町で、
隅田川を横目に見つつ自転車をサーッと飛ばして、ちょっとしたものを買い出しに行ったり、友人たちが営むお店へ顔を出したり。またその逆で近所のお仲間、お世話になっている方々も、自転車で「in-kyo」に来ることが多かった。

自然素材を中心とした生活道具を扱う荒物問屋「松野屋」の松野社長もそのひとり。移動の合間にふらりと、そして少量の注文の品を届けて下さるなど度々。なんてことはない会話から何かが生まれることもある。商売というものは、そうやって顔を合わせて会話をすることが大事なのだと、言葉ではなく行動で教えて頂いた。

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数多くの品々を扱う「松野屋」の商品の中でも、トタンの米びつは東京・下町で今もつくり続けられているもの。用途は米びつに限らず乾物を入れたり、インテリアの収納に使ったりと大きさによっても自由に選ぶことができる。

大きな工場で機械生産されていると思われがちだが、実は小さな作業場の中で、ご夫婦ふたりのほぼ手作業でつくられているものなのだ。以前に松野社長を通して、この米びつをつくるご夫妻と、食事をご一緒させていただいたこともある。チャキチャキの江戸っ子の会話は、明るく楽しくてテンポがいい。この風通しの良さがものづくりにも通じている。

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こうした手仕事の日用品は、大量生産ではないし、作家の方がつくる一点ものでもない。長年にわたり、毎日少しずつでもコツコツと手を動かしてつくられているもの。素朴で使いやすく、値段も手頃。トタンの米びつに限らず、まだまだ日本にはそうした暮らしを豊かにしてくれる日用品が、職人の手によって生み出されている。

その現場や職人を知る問屋を通じて、お店はそのモノにまつわるストーリーを知り、また使い手へとバトンを渡すのが役目となる。さすがにご夫婦のテンポの良いやりとりまではリアルに再現できないけれど、手作業によるものの確かさは、これからもしっかりと伝えていかなければ。

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in-kyo(インキョ)

日々の暮らしの中で、月日をともに積み重ねたくなるような器や生活雑貨が並ぶ店。日常着や、おいしいもののセレクトも人気。「今日のひとしな」のコラム執筆は、店主の長谷川ちえさん。

福島県田村郡三春町9
TEL:0247-61-6650
10:00~17:00 水曜・木曜定休
http://in-kyo.net

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