あれもこれも欲しくなる「つちや織物所」の美しい布小物たち

今日のひとしな
2021.08.26

~「HJ GALLERY」より vol.26 ~

一本の軸が通っている人は美しく強い。

布というカテゴリーの中で、「つちや織物所」の品々はどこかモダンで独特な雰囲気を纏っています。使いはじめたら何か物語が始まるような感覚になり、「そんな物語が始まるのもいいんじゃない?」と、大切な人たちにも送りたくなります。鍋つかみを送った先で、毎朝白湯を入れられている様子を想像したり、書類ケースを送った先では、PCケースとして使用している風景を見て、それがとても豊かに思えたり。

先日のコラムではティッシュケースをご紹介しましたが、「つちや織物所」ではまだまだ色んな品が作られています。機械織りでありながらも織物の味わいが感じられるように工夫された、オリジナル生地を使ったコースターや鍋つかみ、ランチョンマットに書類ケース、風呂敷に名刺入れなど。どの布も最終的には、人の手で裁断、縫製がなされ、きっちりと美しい佇まいに仕上げられています。様々な布が使われていますが、そこには一貫した美学が宿っています。

二つ折りになっている名刺入れは、実は金具部分は奈良の金工作家・中村友美さんが作ったもの。彼女の金属作品は大好きでいくつか持っていますが、こちらの名刺入れの金具ひとつにも、オーナーである土屋美恵子さんのこだわりが見えます。布と金具の絶妙なバランスにはたまらないと感じずにはいれません。こんなにも日常の布のバリエーションがあり、こんなにもモダンで私が欲しかったものが並ぶ光景はなかなかなく、あれも欲しい、これも欲しいと心躍らせてくれます。

よくよく見ると、それぞれ細部にまでこだわりが見え、簡単に結論を出しているわけではない様にも見え、そのつくりの全てに丁寧さが溢れ出ています。使えば使うほどに味わいが増して、それが広がり、空間にも奥行きが増していく。共に過ごしながら、使うたびに嬉しくなるものたち。

私は家事の中で一番、針と糸を使う繕い物があまり得意ではないのですが、「つちや織物所」の鍋つかみがもし破れたり、穴が空いたりしたら、自分でつぎあてをして使いそうです。そのものを最後まで「使い切りたい」と思えるかどうか、要はそのもの自体を愛せるものと暮らすかどうか、私はそれがとても大切なことのように感じています。私の朝は、夏以外は白湯からはじまります。中村友美さんの薬缶で湯を沸かし、「つちや織物所」の鍋つかみを使って、その日の気分のカップに注ぎ入れる。その下には「つちや織物所」の手紡ぎのコースター。この光景を見たいから淹れているのかもしれないと感じるほど、薄暗い朝の空気の中での私だけの幸福な時間のひとつです。





夏が始まろうとしている6月ごろに「つちや織物所」を訪れました。

ささやかな楽しい時間の中の他愛のない会話から伺える、美恵子さんのものづくりに対する考え。工房の近くに綿花畑をお持ちで、そこで和綿を育てられ、収穫し、糸にして織るという「奈良 木綿手紡ぎの会」を開催されています。膨大で途方もない時間の流れの中で生み出される、綿から糸。そしてそれは端正な佇まいの生地に。その流れを軽やかに確かなものへと実践されている姿にもまた強く心打たれます。昔から人々が続けてきた手仕事を、今の時代でもこうやって力強く続けていくこと。「選べばその方法はある」という生き方に感じるものは大きいです。この日、畑へもお散歩がてら伺わせていただきました。まだ綿の苗は植える前で緑肥のライ麦畑が広がっていました。もうすぐ秋。あと少ししたら綿の収穫です。連綿と続く美しい日々がここにはあります。

まだ「つちや織物所」の品に出会ったことのない方、ぜひお手にとって、目で見て触れてみてください。


名刺入れ (上から)手織りのもの ¥8,800 、藍・白いもの ¥4,400


書類ケース(A4サイズ)¥8,250


紙袋 (小)¥3,850、(大)¥5,500


つの袋 (中)¥16,500、(特大)¥25,300  
※写真は特大サイズのもの


(写真1~8枚目まで:奥山晴日)

 

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HJ GALLERY

住所:奈良県奈良市三碓2-4-13-2
TEL:0742-52-5000
営業時間:11:00~16:00
営業日:木曜・金曜・土曜
https://www.hj-g.jp/
instagram:@hjgallery

※ペット、10歳未満のお子様の入店はご遠慮願います
 

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