安曇野から届く「nagi(ナギ)」阿久津真希さんの器やオブジェ
~sahanji+(サハンジプラス)より vol.16~
長野県・安曇野の山の奥深く、ひっそりと佇む一軒のギャラリー「nagi」さん。木々に守られ穏やかな空気が満ちている、そこは私にとって特別な場所です。訪れるとすっと心が凪いでゆくのを感じます。
名前の由来である「nagi=凪(なぎ)」は、「海からはほど遠い安曇野の森の中で、凪いだ海のような空気を感じてほしい」という思いから。
今年の5月に訪れたときには、「nagi」さんの敷地内の森で、野生の木苺を息子と一緒に夢中になって沢山摘ませてもらいました。
「nagi」は、ご家族の作られた作品のほか、何人かの作品をセレクトした素敵なギャラリーです。「nagibotan」という名前で作品作りをされているお母さまの阿久津清子さんから譲られたお店を、今はめぐみさんが営んでいます。
今日から3回にわたってご紹介するのは、まるで一冊の絵本のような、物語のような暮らしをされている、「nagi」さんファミリーが作るもの。めぐみさんのご主人・阿久津真希さんの作る器やオブジェ、お母さまの作られる洋服や布小物、お父さまの作られる木のもの。3人それぞれの素材は違いますが、どこか同じ空気を纏っている、凛としてあたたかな作品です。
今日は、阿久津真希さんの作品をご紹介いたします。
真希さん、お名前の響きから女性の作り手と思っていらっしゃる方も多いのですが、男性です。でも、そうお伝えすると「そうなんですか?」「やさしい感じなので、ずっと女性かと思っていました」と言われることも多いのです。
真希さんは主に器や花器などの陶芸作品を作られていますが、素材はそれだけに留まらず、木や針金を使った作品やオブジェなど、いろいろな作品を作られています。
器は潔く、白と黒。その時々の焼き上がり具合でいろいろな表情を見せますが、白と黒の微妙な色合いには強いこだわりをもっていて、「わたしが見たら差が分からないくらいの出来上がりなのに、これはお店に出せない、って頑なに言ったりするんですよ」と、めぐみさんがこっそり教えてくれました。
めぐみさん、今は育児を中心に製作をお休みされていますが、元々は絵を描く人。「nagi」や「サハンジプラス」の店内にも飾られています。ご家族みなさんが、それぞれの素材でものづくりをしながら日々を営んでいるのです。
真希さんの器はどれもシンプルでとても使いやすく、我が家の定番。どんなお料理も(下手なお料理だって!)受け止めてくれます。
ポトフ皿はお料理上手の友人達にも好評です。ずっと定番で作られている形が多いので、買い足していけるのもいいところ。割れてしまったマグカップを一客、というご要望にもお応えしています。
お店では安曇野の「nagi」さんの空気を少しでもお客さまに感じていただけたらいいなぁ、と思いながらディスプレイしています。
真希さんの器はどこか温かみがあって、例えばマグカップの取っ手のバランスが愛らしかったり、オブジェには時々、どこかクスッとしてしまう面白いものがあったり。ものづくりをされている方、皆さんに言えることだと思いますが、作品は作り手そのもの。温かかったり、クールだったり、ちょっととぼけていたり……。
長年のお付き合いとなる真希さんですが、シャイでいつもはにかんでいる50年生まれの青年(同級生!)で、あまり多くを語りませんが、作品に現れているような、温かみがあって、愛らしく、時々クスッとしてしまう面白い方に違いありません。次回安曇野へうかがった時にはそこのところ、じっくり観察してみますね。
次回は「nagibotan」の名前で布小物やお洋服を作られている、真希さんのお母さま、清子さんのもの作りをご紹介いたします。
2006年、お祖母様の暮らしていた一軒家を改装してオープン。器、道具、服など衣食住にまつわるものや、暮らしになじむオブジェなどが並ぶ。連載「今日のひとしな」の執筆は、店主の河村奈穂さん。
静岡県静岡市清水区堂林2-9-5
TEL:054-353-1155
営業時間:13:00~17:00
不定休
http://www4.tokai.or.jp/sahanji-plus/
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