アクセサリーデザイナー・星芽生さん(後編)~大人の品格と自分らしさを添えて
冠婚葬祭のためのブランド「シュオ」を手掛けるアクセサリーデザイナー・星芽生さんのおはなし、つづきです。
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Photo:有賀 傑 text:田中のり子
大学でまわりが就職活動にあわてる時期になっても、「どこかの企業に勤める」という選択肢がピンと来ていなかったという星さん。運よく「アクセサリーを卸してください」というショップも現れたことと、長くフリーランスでジュエリーデザイナーをしているお母さまの姿を見てきたせいか、何となく「自分にもできるんじゃないか」という思いがあったそう。
若くして世に出てしまったら、社会の荒波にもまれ、早々に挫折を経験……といったエピソードもよく聞かれますが、星さんの場合、「初めてアクセサリーを作ってきたときからずっと楽しいと思えることを、ただただ続けてきた」と笑います。
「自分で言うのも何なんですけど、性格が明るいんです。もちろん当時は若いから甘く見られることもあり、仕事上で理不尽な経験もたくさんありました。でも、そこでひきずらないんです。また、厳しくても私をしっかり信頼してお仕事を発注してくださるお店と長くいいおつき合いができていたりしていたので、そういった期待にきちんと応えたいという気持ちのほうが強かったですね」
一瞬ひるんでしまいそうな数の注文にも、「やります!」と対応し、「こういうものが欲しい」とお題を出されたら、必死に考えてその期待以上に応えられるような「いいもの」を作り上げる。そんな経験の数々は、のちに展示会などで不定期に行うようになったジュエリーのリメイクプロジェクト(親しい人の思い出のアクセサリーや、引き出しの中で眠っていたり、使いあぐねているお手持ちのジュエリーを、リメイクしてよみがえらせる試み)にも生かされていったといいます。
持ち前の前向きな性格と、生まれ持ったセンスのよさ、そしてバイタリティ。それらが重なりあって、アクセサリーデザイナーとして、順調にキャリアを積み重ねてきた星さん。やがて友人である吉田さんと、「楽しいことをより真剣に、本気でやってみよう」という決意のもとに、2011年にスタートさせたのが「シュオ」というブランドだったのでした。
「シュオをスタートして、より大切にするようになったのは、全体のバランスです。デザイン的にただかわいいだけでなく、美しく見える長さやサイズ感はもちろん、つけ心地のよさや、見えにくい金具などの素材感にもしっかり気を配るようにしています」
自分たちが年を重ねてきたこともあり、「成熟した大人の女性が持っていて、恥ずかしくないもの」ということを強く意識するようになりました。年相応なデザインであるとともに、さらには「おばあちゃん」と呼ばれる年齢になっても、身につけていて嬉しくなるものを目指しているそうです。
こちらは星さんのおばあさまの写真と、ご本人にプレゼントしたというピンクのパイライトのネックレス。大のおばあちゃん子だという星さん、明るくてお茶目なおばあさまが大好きで、疲れたときはこの写真を見ているだけでムクムク元気が出てくるのだとか。
「シュオ」ではむやみに新作を増やすことはせず、定番をしっかり作り続けていくことを大切にしています。ファッションの目まぐるしいサイクルに迎合することなく「1年経ってみて、やっぱりかわいいから欲しい」「3年前に買ったリングに合わせて、ネックレスを新調したい」。そんなお客さまを大切に、長く大切に愛されることを目標としているのです。
星さんのもうひとつの元気の素は、手元を彩るネイル。アクセサリー制作は常に手元を見ているので、好きな色を塗ることで、テンションを上げていきます。たとえ仕事に追われて忙しい時間を過ごすときも、女性を美しく装うものを手掛けているのだから自分自身も女性らしい艶を忘れない。そんな心掛けのひとつでもあります。
「アクセサリーの仕事は、時には火も使う体力仕事でありながら、『あの素材に何を組み合わせよう』『この石のサイズはどうしよう』などなど、頭を使って考えることもすごく多いんです。きっとすごいカロリーを消費しているんでしょうね。毎日驚くほどモリモリ食べるんですけれど(笑)不思議と太ることはないんです」
心を健やかに保つために、ヨガ、水泳、スタイルをキープするためのストレッチなど、身体のメンテナンスは欠かさず、たっぷりと時間を取るようにしているそう。話していてこちらも元気になるような星さんのハッピーオーラは、そんな心身への心配りからも生まれてくるようです。
そもそもアクセサリーは、心と身体を守ってくれる「お守り」としての役割が起源。星さんのつくるアクセサリーが生き生きと力強く魅力的なのは、この作り手の「明るさ」「健やかさ」が理由なのかもしれないと思わせてくれるひとときでした。
Profile
星芽生(ほし・めおみ)
東京生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業後、2004年に「pommier(ポミエ)」を設立。ブライダルリングやジュエリーコレクションを展開。2011年よりディレクターの吉田直子さんとともに「shuo’(シュオ)」をスタート。http://shuo.jpn.com/
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