南仏の太陽を感じる、ぽってり愛らしいテラコッタのポット

今日のひとしな
2025.12.08

〜「tömpa(東巴 / とんぱ)」より vol.8〜


南仏の蚤の市で出会ったchevrette(シュヴレット)は、見た目の素朴さに反して、手に持つとずっしりとした重みがあります。その赤みがかったテラコッタの質感や、上部だけ釉薬がかけられた独特のデザインを見ると、つい手が伸び、持ち帰らずにはいられません。
重さも気にならないほど、棚に並ぶ姿や釉薬の色合い、形の愛らしさに心が弾みます。南仏の太陽の下で焼かれた土の温もりや、乾いた空気に触れて育った器の個性を感じると、そのまま連れ帰るしかないのです。そして、手にした瞬間から、日本に持ち帰った後に自分の店に並ぶクールな姿を想像しては、帰国前の現地でもひそかに楽しませてもらっています。


19世紀後半から20世紀初頭にかけて作られたものが多く、南仏の家庭では日常的に水やワイン、オリーブオイルなどを保存し、食卓にそっと置かれてきました。素焼きの土は湿度や温度を自然に調整して水を冷たく保つ仕組みになっており、上部だけに施された釉薬とのコントラストからは、実用性と美しさの両立が感じられます。もしかすると、畑仕事にこのポットを持って行く光景もあったのかもしれません。


シュヴレットと並んで写るのは、南仏の家庭で長く使われてきたオーブン皿やコンフィポットです。ぽってりとした厚みのあるフォルム、マスタードやブラウンの素朴な色合いは、見ているだけでほっとする温かさがあります。どれも日常の食卓で活躍してきた器たちで、オーブン皿は焼き料理に、コンフィポットはオリーブや保存食の保存に。使い込まれた表面には、前の持ち主の暮らしの時間がしっかりと刻まれています。


南仏の火と土の文化は、強い日差し、乾いた土地、そしてオリーブ畑やブドウ畑という地中海に典型的な景色を背景にしています。テラコッタの赤やマスタード、茶褐色は、土の色そのもの、あるいは釉薬が焼成時に出した味わいの色です。その風土と暮らしがこの器の色と形にダイレクトに反映されています。


私は、まだ暗いうちの明け方に出発し、蚤の市を巡るのが恒例です。テーブルや地面にぎっしり並べられた古い陶器の中から、「釉薬の色むら」「表面の焼き跡」「手に触れたときの厚み」などを確かめながら、ひとつひとつ選ぶ時間は、私にとって旅の何よりの醍醐味です。


水差しやコンフィポットは、そのまま置くだけでも存在感のある佇まいですが、花を生けるフラワーベースとしても魅力的です。季節の花や野草、ハーブなどをざっくりと入れるだけで、南仏の陽気な空気や温かみを感じさせる空間が生まれます。


誰もが現地で出会ったものには特別な思い入れがあります。私も、この一点ものの器たちがどんな方のもとで日々の暮らしに迎え入れられるのかを想像しながら、お店でお客様とお話しする時間を楽しませてもらっています。




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tömpa(東巴 / とんぱ)

静岡県湖西市新居町新居2731
TEL:053-594-8633
営業時間:11:00〜17:00
定休日:日・月
(※展示会期間中は日・月も営業 / 最新情報はSNSを確認)
Instagram:@tompa_japan
(※営業日や展示会・料理教室などWSについては随時Instagramでお知らせ)

Online Store:
https://www.83com.com/
https://tompa-antiques.stores.jp/
https://www.rakuten.co.jp/tompa/

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