透ける光が美しいアンティークポジャギの世界

今日のひとしな
2025.12.29

〜「tömpa(東巴 / とんぱ)」より vol.29〜


冬の冷たい風が窓の外を通り過ぎる頃、室内にはストーブのぬくもりと、やわらかな光が満ちています。窓辺に掛けられたポジャギは、その光をやさしく透かし、かすかに揺れる影を床や壁に落とします。布を通して広がる淡い色彩が室内を満たし、幻想的な雰囲気をつくり出します。それが、韓国の伝統的な布細工「ポジャギ」です。


上質のモシ(苧麻)などを使ったアンティーク、天然藍や草木で染められたやわらかな色合い、フランスの古布の風合いの未晒など。店にも自宅にも、まるでコレクションのようにポジャギが増えてきました。毎年夏(たまに冬にも)に開催するポジャギ展では、韓国在住の方からもご注文をいただくほどで、その質の高さと豊富さを、ぜひ皆さんにも見ていただきたいと思います。


夏には、風に揺れながら光を透かすポジャギが、涼やかな風とともに暮らしの一部になります。冬の窓辺では、冷たい外気との対比の中で、布を通した光が室内を柔らかく照らし、布一枚で暮らしの表情が変わると日々実感しています。


ポジャギとは、小さな布片を丁寧に継ぎ合わせて仕立てられた韓国の伝統的な「包む布」です。光をやわらかく受け止める透け感や、布の重なりが生む影の美しさが魅力であり、同時に実用的な生活道具でもありました。歴史的には、朝鮮王朝時代(1392–1910年)に絹やモシ、麻などを素材にしたポジャギが作られ、宮廷用の豪華な一枚布と、庶民用のパッチワークのジョガッポが存在しました。限られた生活空間で布を無駄にせず、保管や運搬に使う知恵から生まれたものです。


よく語られる「福を包む布」という話についても触れておきます。韓国語の 「보자기 (bojagi)」 はもともと「包む布」を意味し、“복 (bok/福)” とは別の言葉です。伝統的には、布を包む・運ぶ・保管するなど、日常生活の実用品として使われてきました。博物館資料や学術文献でも、主用途は実用布であったことが記録されています。

それでも、ポジャギには「福を包む布」というイメージが伴うことがあります。それは、布を縫うひと針ひと針に思いを込めたり、贈り物を丁寧に包む習慣から生まれた象徴的な解釈です。近代以降、この象徴性が強調されるようになったことが、学術的研究でも指摘されています。つまり、ポジャギは元来の実用性と、美しさや願いを込める文化が重なった存在なのです。


最近では、当店でも若いご夫婦が新築のお祝いに、自分たちの暮らしのためにポジャギを選ばれることが増えています。布としての美しさだけでなく、日常に寄り添う存在として手に取っていただけるのを見ると、伝統と現代の暮らしが自然につながっていることを感じ、嬉しく思います。


当店で扱うアンティーク・ポジャギは、長い時間を経て育まれた「生活の布」です。
モシや絹、草木染めの布は、端切れをつなぎ合わせたパッチワークで、かつての日常生活の知恵と女性たちの創造性が息づいています。布の継ぎ目や経年による色の深まりは、単なる古さではなく、時間と記憶が織り込まれた美しさです。


プライベートでも仲良くさせてもらっている静岡の作陶家、鈴木進さん。気が向いたときにだけ(笑)当店のポジャギ展用にちょこっと作ってくれる、かなりレアな限定カップがあります。今のところ日本に数個しかないので、手に入れられたらかなりラッキー!きっとまた気が向いたら作ってくれるかと期待してます。誰も正確には予測できませんが、それもまたワクワクとする楽しみのひとつです。


どんなポジャギが入ってくるかはそのとき次第ですが、ありがたいことに素敵なご縁のおかげで、質の良いポジャギを手に取ることができています。


時には、自分が欲しい色合いを思い描きながら、布を自分で染めることもあります。天然の樹皮や草木を使い、少しずつ色を重ねていく時間は楽しいですね。


少し贅沢な楽しみ方として、韓国茶会の際にはポジャギをテーブルクロスのように広げて使ったこともあります。茶器やお菓子をよりいっそう引き立ててくれました。


来年も6月頃に展示会を予定しております。随時お問い合わせも受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。また、すべてではありませんが、一部の商品は通販でもご覧いただけます。季節ごとに変わるポジャギの表情を、ぜひご自宅でも楽しんでみてください。


東巴のキッチンとサロンの間には、弊店では珍しい新作の縦長ポジャギを掛けています。まだ数点ストックがありますので、ご興味のある方はどうぞお気軽にお問い合わせください。



オンラインショップはこちら

 

←「tömpa(東巴 / とんぱ)」の今日のひとしなはこちらから

←このほかの「今日のひとしな」はこちらから

tömpa(東巴 / とんぱ)

静岡県湖西市新居町新居2731
TEL:053-594-8633
営業時間:11:00〜17:00
定休日:日・月
(※展示会期間中は日・月も営業 / 最新情報はSNSを確認)
Instagram:@tompa_japan
(※営業日や展示会・料理教室などWSについては随時Instagramでお知らせ)

Online Store:
https://www.83com.com/
https://tompa-antiques.stores.jp/
https://www.rakuten.co.jp/tompa/

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

ページトップ