セキレイのかたち

今日のひとしな
2026.10.21

〜「en-shouten」より〜 vol.21

木曽に移住してきて、同じように外から来た人たちと知り合う機会がありました。椿井木工舎の二宮大輔さんとも、そうしたつながりで。最初に知り合ったのは、パートナーの美香さんのほうでした。いつもおしゃれでダーニングをはじめ手仕事に造詣の深い方。そこから大輔さんの木工のことを知りました。


大輔さんは、愛知の自動車メーカーでモデラーをされていたのだそうです。車のかたちを粘土で削り出していく仕事。その話を聞いてから改めてワグテイルを手に取ると、なるほどと思うところがあります。


ワグテイルは、椿井木工舎のコーヒーメジャーです。鳥のセキレイ(Wagtail)にフォルムが似ていることから、その名がつきました。
縁の角度が絶妙で、コーヒー豆がとてもすくいやすい。使い心地や使っている様まで考え尽くされたような、凛とした佇まいがあります。素朴な工芸品の風合いとは、どこか違う。まるで工業製品のような正確さが、根っこにあるからなのだと思います。
中深煎り程度の豆で、すりきり一杯10g。使い込むにつれて、コーヒーの油分で色の深みが増していきます。


我が家ではショートタイプを使っていて、豆の容器にそのまま入れっぱなしです。コーヒースタンドではロングタイプ。大きめのコーヒー缶からでも豆を取り出しやすく、十分な長さがあって使いやすい。
瓶や容器に一緒に収納したい方はショート、手に取りやすいように出しておく方やカフェなどで使う方はロングがおすすめです。


お取り扱いを始めた頃の大輔さんの仕事は、もっとシャープでストイックなものでした。それが近頃は、同じ正確さを保ちながら、どこか温かみのある表情に変わってきたように感じます。
木曽に来てから、畑仕事や保存食づくりと、田舎暮らしを突き詰めてこられた二宮夫妻。最近は釣りや山登り、スキーと、山や川で過ごす時間も増えているようです。そういう日々が、少しずつ手元に出ているのかもしれません。



定番は褐色のチェリー材と、深いブラウンが美しいウォールナット。これに加えて、工房を構える木曽・上松町の広葉樹を使ったシリーズも仲間入りしました。
楢、山桜、鬼胡桃。木曽の里山に自生する広葉樹が、その素朴な表情を残しながらも、正確な加工によって美しく仕上げられています。木曽の広葉樹が見せる和やかな木目を眺めていると、木製品が大地から生えた樹木によってできているということを、素直に実感させられます。


暮らすように仕事をしている人と一緒に仕事ができるのは、幸せなことだなと思います。珈琲豆の沼にぬるりと潜り込む、ワグテイルの抜群の使い心地。野鳥のさえずる森でコーヒーを飲みたくなる、そんなメジャースプーンです。これからも長くご一緒できるよう、こちらも楽しんで仕事をしていきたいと思います。
(文・井上)

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