フレームを作るときに出る木屑を収めた「E&Y」のフレームのオブジェ
~ HOEK(フーク)より vol.27 ~
初めての2日連続投稿となります。男店主・大井智史です。今日のひとしなは、機能を前提としないオブジェのご紹介です。先日のコラムでご紹介したモビールを展開している「E&Y」から発売されている商品です。
「E&Y」はファニチャーレーベルとして、30年前からデザイナーの要素を抽出した様々な家具を発表してきました。そんな中、家具でもプロダクトでもない新しいコレクション「edition HORIZONTAL(エディション・ホリゾンタル)」を2010年より展開しています。
先日ご紹介したモビールも、本日のオブジェも、「E&Y」の中の「edition HORIZONTAL」というマルチプルコレクションラインから発表されています。このコレクションを作ったのは、モノの消化のされ方、消費のされ方のようなものに疑問を持ち始めたのがきっかけだったと言います。
商品をプロダクトアウトした瞬間に、深く作業していたことが一瞬にして意味を持たなくなり、奥行きが何もない単純に物になってしまうことに対する違和感があったそうです。そこで、不可欠とされる機能を前提としない、所有する喜び、人の深層心理のような部分に投げかけられるようなコレクションラインを作ったのです。ファニチャーやプロダクトのレーベルとしての、自分たちへの問いかけでもあると代表の松澤さんは言います。
今まで30人余りの国内外のデザイナーやアーティストと組み、進められてきたこのプロジェクト。商品化が実現しなかったケースも多く、現在発表に至っているのはわずか11作品のみ。このコンセプトの難しさ、奥深さがうかがわれます。でき上がったものはデザイナーの強いメッセージが含まれていますが、完成された作品にはどれも異常なまでの余白を持たせており、使い方は所有者の意思に委ねられます。
本日ご紹介のオブジェも、そんな「自由」を感じさせる商品です。見ての通り、これは「額」です。ただ、額の中身は変えられません。フレーム(額縁)を製作する際に出た木屑を中に閉じ込めているんです。その姿は無機質でミニマル。デザインとしても完成されています。壁に立てかけたり、棚に飾ったり。トレーとして使ってもいいかもしれません。
僕は、自宅では壁に立てかけて飾っています。中に入っている木屑が重力で下に少しずつ沈んでいき、額の中に余白が生まれるんです。そして、気が向いたときに、横にしたり縦にしたり変えています。向きを変えることで、その変化も楽しんでいます。また、日が当たる場所では木屑の色も変化していくので、時を感じることのできるアートとも言えます。モノの消化のされ方、消費のされ方という「edition HORIZONTAL」というコレクションのテーマそのものを代弁しているような作品でもあり、強いメッセージ性のつまったオブジェなんです。
デザイナーは言います。
「空間とモノの関係は 何かのきっかけで考えだすと 意外なくらい面白い。そして そのモノは 空間にとって 機能や実用から かけはなれる程 空間も 想像も 自由を帯びてくるように思う」
「E&Y」は、世界のデザイナーから「商品を発表したい」と熱望される程、素晴らしいファニチャーレーベルなんです。これってすごいことだと思います。信念を持ってやり続けることは、本当に大切ですね。最後に、「E&Y」 代表の松澤さんの言葉で締めくくります。
「ホリゾンタル(平面)の延長線上に、世の中の様々なものが置かれるとなると、明確な用途とか機能を持ったものでさえも、違った景色に見えるようになるんじゃないかと思っています。そんな気づきを少しでも促すことができたら嬉しいです。物は今までもこれからも残念ながら溢れ続けるだろうし、大きな変化は期待してないですが、小さな変化が繰り返されて、いい意味で微妙にずれていけばいいなあと思っています」
E&Y / 「short by short」
ヴィンテージ、プロダクトデザイン、ハンドクラフトなど様々な分野から、食器、インテリア雑貨、日用品、オブジェ、キッズアイテム、ファッションなどジャンルレスに紹介。「今日のひとしな」の執筆は、主に大井美代さん。ときどき大井智史さんも登場。
東京都渋谷区神宮前2-33-16 チサンマンション原宿502
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営業時間:12:00~19:00
定休日:水、木曜
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