和紙を通したやわらかな光を楽しむ 森田千晶さんの和紙
~ 「組む東京」 vol.10 ~
書をしたためる、包むなど、和紙の使い方は数多あると思いますが、今日は、森田千晶さんの作品の中でも“空間に施す和紙”を紹介します。
私は昭和な人間ですので、空間にある和紙といえば、障子や襖を思い出し、その感触がしっかりと潜在意識に刷り込まれていると感じています。特に障子紙のように光が透けるものは、朝な夕なの表情の変化に、時折、時間が止まったように感じ、心奪われることがあります。幼い頃、寝る前に電気を消したあと、パジャマのままで祖母と障子の影絵遊びをしたことが、忘れられない情景として思い出されます。
和紙は、光が透けるとき、または反射するとき、他の素材では作れない柔らかく暖かい光の空間を作り出します。植物の繊維の柔らかさと、ランダムな光の透過や反射の効果が、幻想的な光空間を生み出すのです。
レース状の和紙を貼り合わせて、カーテンのようにかける。それだけで空間は一変します。こちら、大掛かりのようですが、設置はそんなに難しくはありません。和紙は、普通の紙よりも丈夫で、レースの和紙は殊更に軽いので、扱いやすいと思います。みなさんの暮らしの中にも取り入れてみてはいかがでしょうか?
こちらは夜の風景。天蓋のように照明の下を和紙で覆うと、まるで木漏れ日に包まれているかのようです。
こちらは、植物をモチーフにした和紙を、ガーランドのようなイメージで窓辺にさげているものです。この和紙ガーランドにアロマのスプレーなどをかけると、ゆれるたびにほのかに香るディスプレイにもなります(香料自体に色がついていると、和紙が染まってしまうので、ご注意ください)。
そして、このガーランド状の和紙が「今日のひとしな」。様々なバリエーションがあり、下の写真の、テーブルに置いたような形で販売しています。
<テーブルに置かれた、和紙のガーランド 各2160円(税込)>
和紙を、ガラスや鏡に簡単に貼ることができるのは、ご存知でしょうか? やり方は、ガラスに和紙をあてて、水の霧吹きをかけるだけ。とてもシンプルです。ひと冬のディスプレイで窓に貼り、静かにはがせば、また翌年も使うことができます。
私は、森田さんが和紙を触る手を見るのが好きです。その様子を見ていると、彼女が素材とどれだけ真摯に向き合っているかが伝わってきます。原材料である楮(こうぞ)を切り出すところから、全ての工程を自らの手で行う。それは生半可なことではありません。写真は、楮の表皮を取り除いているところです。
植物の恵みを尊び、生かす。そこには温度がこもり、作品は、生きているようにオーラをはなち、まわりの空気をも作り出します。さらに、和紙に描き出されるイメージには、美しさ、可愛らしさ、ときに、命の神秘や力強さ、凄みまでもが映し出され、この形の生命感が、森田さんの作品の他に例えようがない情趣を生み出しています。
国内外のものづくり、手工業の交流拠点となる場として、ショップ、ギャラリー、コミュニティ・スペースの機能をもつお店。「今日のひとしな」の執筆は、代表・キュレーターの小沼訓子さん。
東京都千代田区東神田 1-13-16
tel:03-5825-4233
営業時間:12:30~19:00
不定休(サイトをご確認ください)
http://www.kumu-tokyo.jp/
インスタグラム「@kumutokyo」
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