柴崎智香さんが作る、容姿端麗な鉄の燭台

今日のひとしな
2018.02.15

~ 「組む東京」 vol.15 ~


“床置きの背の高い燭台”は、普段の生活の中で、あまり目にすることがありません。けれど、それを空間にさしいれると、筆で線をひいたように全体の印象がひきしまります。

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<燭台 鉄 ミツロウ仕上げ 高さ110㎝ @組む>

写真では、アルミ銀箔の壁の前に燭台を配し、箔にほんのり反射する光の効果を出してみました。ろうそくの光と箔との相性は抜群で、例えば箔貼りの屏風の前に、この背の高い燭台を置いたら、ひときわ美しいしつらいになるかと思います。

今日ご紹介するこちらの燭台は、鉄作家の柴崎智香さんの作品です。熱した鉄をハンマーで叩いて形作る、鍛造(たんぞう)の技法で作られています。

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いわゆる鍛冶仕事のようなハードなものを女性が手がける、というのは、意外な感じもしますが、柴崎さんの作品は、鉄の重量感や硬さが前面に押し出されているわけではありません。例えばこの燭台のように、細く長く伸ばして成形しても、その形をキープできるのはハードな金属だからこそ。この絶妙のバランスの細さが、この作品に凛とした緊張感を与えています。仮に他の素材でこの細さを出そうとすると強度が出ません。

また、成形の方法も、熱して柔らかくして形作り、その形のまま固定されるということは、柔らかい形のエッセンスを造形の中に閉じ込めることができるということです。実際、鍛造は、熱くて重くて危険で、大変な重労働だと思うのですが、生まれる造形には、しなやかな曲線や細さ、繊細な表面の質感が生きていて、そんなハードさを忘れてしまうのです。

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<燭台 鉄 ミツロウ仕上げ 大/高さ40㎝ 20,000円(税抜) 小/高さ30㎝14,000円(税抜)>

こちらの燭台の支柱の形をごらんください。決してまっすぐではなく、美しい抑揚が感じられます。柴崎さんの作品には、フリーハンドの造形感覚が生きていて、例えてみれば、一枚一枚描いたデッサンのような味わい深さがあります。シンプルな形でありながら、微妙な手仕事の抑揚があって味わい深い、という燭台を探すのは本当に難しいと思っています。

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こちらも「組む」での展示風景です。ろうそくを灯すと、ぐんと雰囲気が出ます。

すらっとして、細身でスタイリッシュな柴崎さんが生み出す作品は、この燭台をはじめすべてが“容姿端麗”。かつ、金属の密度があって存在感もある。まさに、ご本人のようなイメージだと思います。


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組む東京

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