北欧ヴィンテージ家具で暮らしを豊かに! vol.5 買い付け
※Come home! webに掲載された記事を転載しています
〈北の椅子と〉よりvol.5 買い付け
こんにちは、「北の椅子と」服部です。
早くも最終回、5回目はちょうど先日ひな祭りの日に、北の椅子とにデンマークからコンテナがついたので、家具の1アイテムではなく、家具の買い付けから商品が店頭に並ぶまで、書いてみようと思います。
主人がデンマークに行くようになって、 17年になるでしょうか。就職先のたまたまの配属が家具部門。さまざまな家具のバイイングやアウトメイキングをしてきて、図らずも家具の世界に浸かってきた頃、自分の好きな家具、お客様に届けたいと思える家具が定まってきて、たどり着いた北欧ヴィンテージの世界。
もともと、私たちは京都で大学生活を過ごし、古物がとて身近にあり、弘法さんやら蚤の市やら、骨董店に足繁く通い、楽しんできました。また、ちょうどそうした多感な高校生や大学生の頃に、雑貨ブームの到来。『キャトルセゾン』や『フォブコープ』に欧米の定番の品を教えてもらったと思います。
そうした日常の中に、古きの中に物語を感じてしまう性質と、ミーハーな外国のもの好きとが混じって今のような仕事につながったのかなあ、と思っています。
北欧ヴィンテージと一括りにいっても、デンマークのミッドセンチュリーモダンだけ(デザインや良質な材料の観点から、現在では同じものを作ることは極めて困難)をヨーロッパを始め、アメリカやオーストラリアのバイヤー、もちろん日本や韓国、中国のバイヤーも買い付けるわけですから、先細りの在庫は当然のことと思います。希少性とともに、価格もどんどん上がって、最初は首都コペンハーゲンだけで短期間かつ、サクッと好きなものだけを買えていたのですが、今や考えられないくらいの長距離をトラックで走り回っても、なかなか良い品をコンテナいっぱい集めることが難しくなってきています。
北の椅子との実店舗を始めてからは、私はなかなか買い付けに同行できず、相方とスタッフにお任せして、私は日本で連絡を待って判断したり、店の運営をしたりしています。最後に同行したのは四年前。息子と遅れて現地に入り、先に帰国するスケジュールでスウェーデンとデンマークを駆け足で眺めました。
そんなカントリーサイドの農家の間借りでのステイ11月のある日のスケジュールはこんな感じです。
4:30 時差もあるので、息子が起きてしまいテレビをつける
6:00 お腹が空いてきて、キッチンで朝食の準備→皆で朝食
7:00 ほの暗いなか付近を散歩。お隣の家は見えないくらい向こうで、畑も池も、木々も一面真っ白。
8:00 マーケットに向けて出発。40分くらい運転。途中ガソリンスタンドで大好きなホットドッグと瓶のミルクココアを買う(ガソリンスタンドが小さな雑貨屋? コンビニエンスストア? と一緒になっているところも多い)
9:00 室内マーケットに到着 オープンはしているのかしていないのか、、けどまだまだ準備中。トラックが次々入ってくるけれど、ワゴン一台でやってくるディーラーもいるし、大家族でぞろぞろと手運びでやってくる人たちもいるのが面白い。早速買い付け、どんどんトラックに積んでいく。私と息子はおもちゃや本、布ものや雑貨の店を見て周り、相方とスタッフは照明や家具を。6歳息子は気になるところから動かない。けれど、私は別の気になるところへどんどん進んでいってしまう。
12:00 マーケット内の学食のようなカフェテリアで息子と休憩、昼食。好きなものをプレートに載せていって、レジを通るシステムだけれどお会計システムがよくわからず困惑。息子の笑顔にレジの人もにっこり。(買い付けに子どもが同行することで、手間もとっても増えるけれど、それ以上に周囲からの笑顔や会話に救われる。コペンハーゲンのバスには必ずバギーで乗れる場所があり、逆に言えばその場所がいっぱいなら次のバスを待ってくれといわれる。電車にもバギー専用スペースがあって、バギーだけでなく自転車を置くスペースも10年以上前からある。さすが脱炭素エネルギーの先頭を走っている国です!)
13:00 主人、スタッフと合流 店にホールドしておいてもらった大きなものを回収したり、保留していたものを他の買い付けと調整話し合ったり、再度価格交渉をしたり。
14:30 マーケット出発 マーケットに出ていないディーラー倉庫へ。
15:00 ディーラー倉庫着 今日はフィーカの時間はない! 早速倉庫の品々を見て、交渉。
16:00 終了(デンマークの人々の仕事は16:00終了。その後夕食をともにしたり、ご飯に招かれることはあっても、仕事は15:55に、「後5分で帰るよ」とかいって打ち切られる)
16:30 農家への帰り道に大きなスーパーマーケットにより、食料品を買い込む。肉の大きさにも、安さにもびっくり。野菜や果物は全て計り売り。ほとんどがオーガニック。)デンマーク都市部でスーパーマーケットに行けるなら、必ずオーガニックマーケット最古といわれる『イヤマ』に行きます。トレードマークのイヤマちゃんが可愛らしい上、ジャムや紅茶などの美味しいお土産をかうこともできます!
17:30 農家着(部屋の中はセントラルヒーティングでとても暖かくほっとする。)
夕食作り 主人とスタッフは本日買い付けたものの資料整理
18:30 夕食 豚のソテーにクランベリージャムをつけて食べることをデンマークで覚えて、私たちの間でも大流行り。キッチンにオーブンがあることが多いので、それも活躍! じゃがいももとても美味しいので、他の野菜とともに蒸し焼きに。チーズも種類が豊富で素晴らしい!
19:30 それぞれシャワーを浴びて 洗濯機と乾燥機を借りて 息子を寝かしつける。スタッフと私で本日買い付け分の雑貨を開梱 → 全て写真を撮って、買い付けデータを入力し、輸入資料を作る。そしてまた全てを梱包し、コンテナに積むためにパッキン作業。
24:00ごろ 就寝
そうして毎日買い付けを進めて、2、3週間滞在し、コンテナが詰まったら飛行機で帰ってきます。コンテナは1.5ヶ月くらいかけて神戸港に入ります。
通関して、トレーラにひかれてやってきたコンテナと再開するときは、テトリスのように中に詰めたものが何も壊れていませんように! と思い、また、再開の嬉しさのようなものもあり、開ける瞬間とっても緊張します。
私たち北の椅子とのスタッフは、主人以外全員女子。つまり、40フィートにぎっしり詰まった家具をコンテナからおろして、検品し、倉庫と店舗に振り分けていくのは女子の仕事。いつもその時ばかりは部活みたいで、力のない私は頭が下がるばかり。
雑貨は到着したその日から開梱、検品しながらあらかじめ設定しておいた価格と品番をつけていき、店頭とストックに振り分けていきます。基本的にカフェのスタッフが作業を担当しますが、いちいちに、「これ可愛い~」「このシリーズいつか欲しいんですよね」「これ安すぎ(高すぎ)ませんか~」とかって黄色い声が飛び交いつつ、手際良く作業を進めます。
家具は当日1日かけて検品やカタログ用の撮影だけ済ませて、倉庫と店頭に振り分けます。そして、先にオーダーをいたただいているお客様にご連絡をしたり、後日、輸入費用なども振り分けつつ価格を決めていきます。
そうして、お客様の前に、新着のものも既存のものすんと澄ましつつもギッチリと肩を寄せ合って並べられ、次の使い手に出会える日を待つのです。
北の椅子とは店頭でデンマークヴィンテージ家具の良さを熱く語るスタッフの、話の長さが有名です。自分たちが作ったものでもないのですが、とても思い入れを持って集め、修繕をするとその造り手の考えていたであろうこともわかって来て、何とか次の使い手に伝えたい。そんな気持ちがあふれこぼれるようです。
そう、ヴィンテージを扱う良さは、以前使ってきた人の跡が残る豊かさを次の使い手の方に、品物を通してお伝えすることができること。vol.1でも書いたように、まずはでンマークヴィンテージの椅子を使ってみて欲しいと思って、店を作りました。今後もこの仕事を通じて、循環の中にあり続けたいと思っています。
そして、これを読んでくださっている方々に、家具ってなんだ? 本当はどんな部屋を理想としていて、どんなものが必要なんだ? 手に入れた家具はこの後私たちとどう過ごしていくのだ? って、少しだけ立ち止まって思い巡らせてもらえる時間を頂けると嬉しいです。
いつかどこかで私たち、もしくは私たちの品とも巡り会えますように!
北の椅子と 服部真貴
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