春の庭づくりの基本、苗と種はどちらを選ぶべき?【園芸デザイナー・三上真史さんに教わる「春の庭づくり」vol.4】

特集:園芸デザイナー三上真史さんに教わる「春の庭づくり」
2024.03.14

草花が芽吹き、樹木の緑が少しずつ深まり、植物があわただしく活動をはじめる春は、ガーデナーにとって1年でいちばんワクワクする季節。園芸店にはさまざま植物が並び、どれを植えようかと選ぶのも楽しい時間ですね。けれど、「可愛いから」とつい見た目だけで選んでしまうことはありませんか? 植物には合う合わないがあるので、庭の環境や手入れ方法に適したものを選びたいところ。そこで、NHK「趣味の園芸」の講師としても活躍している園芸デザイナー・三上真史さんに、たくさんの苗や種、ガーデニンググッズが揃う「ジョイフル本田」にて、「種と苗はどちらを選ぶべきか」を教えてもらいました。これさえ知っておけば、はじめての園芸にも気軽にチャレンジできそうです。

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お世話に自信がない方は苗を選んだほうが安心


「実は種から育てるのは少しハードルが高いんです。まいて水をあげておけば芽がでるから簡単そうと思われるかもしれませんが、ポイントを押さえないと意外と難しいんです」。種のほうが苗よりも安価なので、庭全体にたくさん植えたい植物の場合はコスト面を考えても種を選びたくなりますが、思うように発芽しないケースも少なくありません。種が発芽するには、酸素と温度と水の三要素が必要で条件に合わないと発芽しづらいそう。「初心者さんにはまず苗から始めることをおすすめしています。庭にたくさん植えるとなると値段は張ってしまいますが、植えたいところにそのまま植えられるのでチャレンジしやすいと思いますよ!」

 

苗を選ぶときには根に注目してください



苗を選ぶときにおさえておくべきポイントは、ポット苗の底の穴から見える根の張り方。「底の穴から根が見えるものがおすすめで、しっかり根が張っている証拠です。ただし、はみですぎているものは根が張りすぎている状態が予想され、根詰まりしてしまって少し生育が悪い恐れもあります」。

そして、株元にも根が見えているとよりよいそう。「根は水を求めて張って行く性質があります。上に見えるくらいまで根が張っていると、水やりがうまくいっていてとても生育がいい状況なんです。だから、ポットの上部と底部、どちらも確認して根の状態をチェックしてみてください」。

 あとは葉が全体についているかどうか、ぐらつきがないかどうかも確認したいところ。「ポット部分を軽く押して、少し弾力があるものがしっかりと根が張った良い苗です。ぐにゃっとなっているものは根の張りが悪いと考えられます」確認するときは、間違っても抜かないようにしてくださいね!

 

種を植える場合、おさえておきたいポイントは?



※写真内の価格は取材時のものです。


「苗からが手軽ですが、だんだん経験を積んでくると種から育ててみたくなると思います。実際、種がちゃんと発芽するとすごくうれしいんですよね」。先述のとおり、種が発芽するには酸素と温度と水の三要素が必要。種にもよるけれど20度くらいになり、水分が含まれて発芽スイッチが入ります。そして酸素が取り込まれて呼吸し始めます。そのため、発芽し始めるまではずっと土を湿らせておく必要が。「一度乾いてしまうと発芽しづらくなってしまうんですよね。[そして発芽して根が出てきたら、今度は土が乾いたタイミングでの水やりに変わります。ずっと土が湿った状態だと、根が呼吸できずに根腐れしちゃうんです。]なので、種をまいたら水を切らさないようにするのが大事。しっかり水を与えることを意識するだけでも、発芽しやすくなると思います」

また、いきなり地植えするのではなく、まずは別の場所で発芽させてから植え替えるのがおすすめだそう。三上さんのおすすめは卵パック。「底と蓋を切り離し、底のほうは種をまくトレーに、蓋のほうは受け皿として使います。底のほうには排水用の小さな穴をあけてから土を入れ、種をまくのですが、部屋の窓辺に置いておきやすくおすすめですよ。発芽したら小さな苗の完成。植えたい場所に植え替えてください。地植えより成功率があがると思いますよ!」

 

パッケージの見るべきポイントはここ!

育てる植物によって種のまき方も変わるそう。「種は、“光を必要として発芽するもの”と、“光を必要とせずに発芽するもの”の2種類に分かれます。光を必要とするものは『好光性種子』といい、土の奥深くに植えてしまうと発芽しにくくなります。発芽スイッチが入るのに光を必要とするんですね。『種を植えたらしっかり土をかぶせないと』と考えがちですが、種によっては軽くかぶせる程度が好ましいものがあることを、知っておいてください」

一方、光を必要としないものは「嫌光性種子」といい、光があまり入らないよう深めに植えてあげることで発芽がスムーズに。「このタイプは光が入ると発芽に悪影響を及ぼすことがあるので、数㎝穴をほって種をまき、しっかり土をかけてあげましょう」


「これらの種の特徴は、それぞれパッケージに買いてあります。『軽く土をかける』などと書いてあるものは光が必要なタイプ。たとえばキンギョソウもそのタイプで、『土はかけず』と書いてあります。これは光を好む種子なので、土はあまりかけないようにしてくださいね」「深さ1〜2cmにまきしっかり土をかぶせる」などと書いてあるものは暗くないと発芽しないタイプ。代表的なものにジニアやハツカダイコンなどがあります。「種を購入する時は光を好むものか好まないものかパッケージをよく見てチェックするようにしてくださいね」

text:大勝きみこ photo:松村隆史

 

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Profile

三上真史

Masashi Mikami

1983年、新潟県生まれ。2011年から2021年3月までEテレ「趣味の園芸」ナビゲーターを務め、同年4月より講師として「三上真史ニッポン花づくし」を、2023年4月より「三上真史ニッポン実りのわざ」を担当。また、16年からtvk「猫のひたいほどワイド」水曜MCを務める。16年3月「第33回全国都市緑化よこはまフェア広報親善大使」、18年より「横浜の花と緑をPRするアンバサダー」に就任。21年6月よりGreenSnapのオフィシャルアンバサダーに就任。ガーデンコーディネーターや1級FP技能士、簿記等の資格を持ち、園芸や経済に関する講演会・イベントなど多方面で活躍中。Youtube「三上真史の趣味は園芸チャンネル」にて植物の育て方や楽しみ方を配信中。

blog:Mikami garden
Instagram:@engeiouji
X(twitter):@engeiouji

 


 


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