収納力がありながら美しい! 端正なキャビネット

令和の家具事典
2024.05.19

※Come home! webに掲載された記事を転載しています


ICCA(イッカ)」が取り扱う家具は、材質や造り、デザイン、様々な視点から選りすぐった大正時代の逸品たち。そこには、当時の名もなき名人たちの美意識や思いやりが詰まっています。

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No.18
「端正なキャビネット」

 

食器収納のために作られたL字型の棚


L字型の棚。大正期のサイズの大きい棚では、比較的オーソドックスな形状のひとつ。
このような家具の多くは、食器棚として使われていました。

上段と下段の奥行きの違いによって生まれるちょっとしたスペースが、一時的にものを置くスペースとして便利なため、あえてそのような余白をもたせているのだと私たちは考えています。

棚板は可動式。食器のサイズに合わせて、棚の高さを調整できる仕様です。
また上段は3つのエリアに区分けされ、稼働棚によって収納の自由度が高い食器棚として設計されています。

 

あえて本棚として見立てる


食器棚として、これほどの機能性を有していますから、そのまま当時と同じ仕様で修繕するというのが、自然な流れなのかもしれません。

ただ、もともと付いていた上段の観音扉を取り外したとき、その佇まいの美しさについ見とれてしまいました。

扉がないほうがこの棚は美しい。そんな直感で、食器棚としてではなく、本棚やコレクションシェルフとして見立てました。

扉がないと食器棚としては、機能が不十分になってしまいますが、本棚の場合は扉の必要性は高くありません。また、当時の本はサイズが文庫本程度のものが殆どで、必然的に本棚の棚の高さも低いものが多い。

現代では雑誌を含め様々な高さの本がありますから、稼働棚であるという機能が、本棚としての利便性高めます。

そのような見立てのもと本棚としてリメイクを行いました。

 

オープンな棚としての完成度


もともと上段はオープンな仕様ではありませんでしたので、内部のデザインはそれほどこだわって作られていません。もちろんそのままでも十分雰囲気はありますが、もう一段階、完成度を高めるために、棚板の縁取りに装飾を加えました。

この家具にはところどころに、銀杏面取り意匠と呼ばれる装飾が彫り込まれています。
この意匠と相性がよい面取り意匠。これまでのアンティーク和家具の装飾面の組み合わせを見てきた中で、とりわけ完成度の高い家具で使われていた組み合わせにしました。

それが両紐面取り意匠と呼ばれるデザインです。

ちょっとした変化ですが、ぐっと上品さが増しています。
加えて、全体の雰囲気に合わせて、取っ手も雰囲気があるものに変え、デザインの完成度を高めました。

上段の魅せるオープンな棚と下段の高い収納力は、書斎やリビングに置けば、楽しく便利に活用できる家具として活躍してくれることでしょう。

「端正なキャビネット」
SIZE:W123.5cm×D46.5cm×H178.8cm
MATERIAL:ラワン材

 

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