中国茶の自由気ままさに惹かれて vol.2 中国茶の稽古「月乃音」主宰 渡邊乃月さん
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この合気道の鍛錬により、体幹が鍛えられ、お茶を淹れる姿が、どこから見ても美しくなります。
「合気道は、相手と視線を合わせず微妙にずらすんです。中心を知って、中心を外すんですね。お茶のお稽古中や茶会では、予想外の出来事も起こります。でも、それに執着することなく、心持ちひとつ整えれば、心穏やかに保つことができる。昔はすべてが体当たりだったけれど、合気道と茶道を両輪にすることで、景色がぐんと広がりました」と語ります。
10年前に独立してご自身の教室「月乃音」を開講。毎月1週目は、ひとり自宅にこもり、茶事の「組み立て」を考えます。お茶と一緒に出す点心の試作をしたり、器を見立てたり。
「いつも、新たな曲を奏でる演奏者でいたいなあと思います」と渡邊さん。
ふと気づくと考えているのはお茶のことばかり。なので、意識して一歩離れる術も身につけました
「夕暮れには、プシュッと缶ビールを開けて、ベランダで一杯。それも至福の時ですね。ロックのコンサートに行くのも大好きですし」と笑います。
一見真逆なものに軸足を移してみれば、さっきまで立っていた場所を、俯瞰して見つめることができる……。自分を見つけようと思ったら、逆に自分から離れ、他者や異質なものと「相対」させることで、大きな関係性の中の「個」を発見できるのかも。
渡邊さんの凛としたお茶の時間の裏側には、時には勇ましく、時にはおちゃめな姿が繋がっていました。自分にとって大切なものをひとつ決めたとき、さらにひとまわり大きな視野を持つ……。それがしなやかで強い、渡邊さんのおへその正体でした。
『暮らしのおへそvol.21』より
text:一田憲子 photo:岡田久仁子
Profile
渡邊乃月
2004年より中国茶の稽古「月乃音」を主催。現在は兵庫県芦屋川にて開講。静かに感覚を研ぎ澄ませ、お茶の飲み方、淹れ方、茶器室礼や故事諸事について指南している。毎年中国をはじめ、東南アジアの茶の産地へ赴き、学びや仕入れも。東京、台北、上海で茶会や、毎月一日茶店「カンフーティールーム」を催す。
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