「出す」ためのおへそ Vol.2 ―「断捨離®」提唱者・やましたひでこさん

暮らしのおへそ
2020.11.19

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まずは
目の前のものひとつを捨てることから。

行動が先です。
ひとつ捨てることを味わったら、
きっと本当の自分を出せるようになります。

私たちは、いつも過去を悔やみ、未来を心配し、
「今、ここ」からずれていきます。
ずれるのが人間の本質なのです。
でも、ずれている自分、ぶれている自分に気づいて
回復することならできるんですよね。

やましたさんが伝えるのは、「コップ1個から始める」ということ。

「からっぽの空間にあれも買おう、これも買おうと希望を膨らませて足し算をして、いっぱいになったとき、希望が不安になってしまったことにすら気づかない。思考停止が起きて、その状態で意志のある引き算なんてできるはずがないんですよね。練習しなくてはできないのが引き算です」

きちんと出すものが出せるようになると、「今、ここ、私」にフォーカスできるようになると言います。

「私たちは、ぶれて、ずれるのが本質なので、ぶれない自分づくりなんてできません。でも、ずれている自分、ぶれている自分に気づいて、回復することはできる。ぶれたときに、元に戻るためにまずすることが断捨離です。目の前のモノの不要、不適をモノを通して自分に問いかけ、それを通して、要、適、快を選び抜いていく。その行為自体が、『今、ここ、私』をつくるのです」

私たちは足し算と引き算のセットで機能しています。
足し算は簡単なのです。買えばいいから。
でも、引き算には意図と意志が必要。
出すためには、トレーニングが不可欠です。

どうしたら、引き算ができるようになりますか? と聞いてみました。

「お稽古です。1個ずつ捨てていきます。行動が先なんです。捨てたらどうなるかを味わえばいいんです。みんな『できる・できない思考』なんですよね。やったことがないから、最初はできるわけないんです。できないに決まっているのに『どこから手をつけたらいいですか?』と聞かれると、いつも、『どこからなんて考えている暇があったら、目の前のもの!』と言っています(笑)」

自宅で開いた講座は、やがて評判となり、さらには、請われて日本各地にセミナーに出かけるようになりました。その講演を聞いた編集者に声をかけられて出した初めての著書『断捨離』(マガジンハウス)がベストセラーに。50歳を過ぎてから、やましたさんの人生は、急速に回転しはじめました。

「もともと目的思考ではなくて、状況対応型だから、試行錯誤しているうちに、扉が開いて、あっここだ! と入っていく感じ」と語ります。

目的思考型の人は、目的までたどり着いたら幸せ、と感じるもの。だったらやましたさんにとって幸せとはなんなのでしょうか? 

「私は、自分の要、適、快、すなわち、心地よさをいつも希求しているから、今このときが幸せです」ときっぱり。


右/キッチンに水きりかごは置かず、シンク横にペーパータオルを敷いておき、洗った器はその上へ。水けがとれたら、新しいペーパータオルで食器を拭いてしまう。 中/パントリーには、必要な量だけの食材をストック。すべてを見渡すことができる。 左/トイレットペーパーやペーパータオルなどのストックは、パッケージから出して収納。

 

仕事中心の今は東京のマンションが拠点。実は2年前、40年間暮らした石川県小松市から、沖縄県那覇市へ移住する選択をしました。

「リタイアした夫は、友達と過去を蒸し返して楽しく笑い合っていて、私は何かが違う! と思っていました。ある日夫が『寒いなあ、暖かい沖縄あたりに住みたいものだ』とつぶやくのを聞いて『だったら沖縄で暮らそうよ』と提案。夫は『時期尚早だ』と言ったんですが、『まずは、旅行がてらに見に行かない?』と誘ったら、いいマンションが見つかって、夫もその気になり(笑)購入することになったんです」

でも、沖縄が「終の住処」とも思っていないそうです。「また、どこかへ行けばいい」と考えているのだとか。著書のなかで、やましたさんはこんなふうに綴っています。
 
「なぜ私たちがこんなお気楽、楽観的でいられるかといえば、やはり持っているモノたち、抱え込んでいるコトたち、かかわっている人たちが少ないからでしょう。(中略)移住して、つくづく思うことがあります。それは、生活を複雑にしてはいけないということ。人生を悩みの宝庫にしてはいけないということ」

そんなやましたさんの軽やかな生き方をうかがいながら、もし目の前にあるものを見極めて、不要なものをひとつ手放してみたら、どんな扉が開くのだろうと試してみたくなりました。

 

『暮らしのおへそ Vol.30』より
photo:有賀 傑 text:一田憲子

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Profile

やましたひでこ

Hideko Yamashita

一般財団法人「断捨離®」代表。学生時代に出合ったヨガの行法哲学「断行、捨行、離行」に構想を得た「断捨離」を日常の「片づけ」に落とし込み、誰もが実践可能な自己探訪のメソッドを構築。関連書籍は累計500万部のミリオンセラー。
https://yamashitahideko.com

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

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