自分が好きな味をストックしておく ― ポルトガル料理研究家・馬田草織さん Vol.2
取材先や旅先で出合った
食材や調味料のなかで
気に入った味のものを常備しています。
それらを組み合わせるだけで、
手間をかけなくても
おのずと自分好みの味になる。
結局、自分が好きな味しか
食べたくないんです。
それがご飯と納豆だけでも、
自分が好きな味を食べているときが
いちばん幸せ。
薬味たっぷりのオイルサーディン梅茶漬けの他、パスタやうどん、中華麺の具としても大活躍。「とにかくわが家には欠かせません」という馬田さんは、中学1年生の娘をもつ母親でもあります。缶詰を活用する以外にも、忙しい毎日のご飯作りをうまく回す工夫やアイデアがあるのでは? と聞いてみると……。
「料理でいちばん面倒なのが素材の皮むきや切ったり、刻んだりといった仕込み。夕飯でそれをイチからするのは大変だし気が滅入るので、時間があるときに切る、塩をするといった2割程度の仕込みをしておくと気持ちがラクです。そして、自分が好きな味の調味料を揃えておけば、かけたりあえたりするだけで味がパシッと決まります。あとは、たまにはお気に入りのお店からお取り寄せをして、自分自身が食事を楽しむこともすごく大事ですね」
馬田さんは「自分が好きな味」しか食べたくない人です。誰かがいくら「おいしい」と言っても、それが自分に響かなければ意味がない。自分にとっての「おいしい」は、「自分が好きな味」。好きこそ正義。だから馬田さんは、取材先や旅先で「自分が好きな味」の食材や調味料を見つけたら、すかさず暮らしに取り入れ常備して、自分が今、食べたいように組み合わせます。自分が好きな味で食べればいい。それこそが、休むことのできない日々のご飯作りを乗り切るパワーの源のようです。
「2割仕込み」をしておく
素材の皮をむいたり、切ったり刻んだり。
肉はパックからすぐに出して塩や酒をふる。
そんな2割程度の仕込みが忙しい自分を助けてくれます。
薬味はまとめて切っておく
「急いでいるとき、玉ねぎの皮からむきはじめるのってイライラしません?」。長ねぎや玉ねぎは時間があるときに多めに切って、小分けにして冷凍・冷蔵しておくと、すぐに使えて便利。
使い切る量ごとに小さい容器で保存するのがポイント。玉ねぎのみじん切りは1/2個分ずつ冷凍、長ねぎの小口切りは5㎝分ずつ冷蔵。「薬味好きなので、大葉のせん切り、みょうがの小口切り、貝割れ大根のざく切りの薬味ミックスも常備しています」。氷水に5分ほど放ってから水けをしっかりきり、キッチンペーパーを敷いた容器に入れて冷蔵。1週間程度もつ。
豚塊肉は塩をする
豚肩ロース肉の塊(約300g)全体にまんべんなく塩をまぶしてラップをし、さらに保存袋に入れて冷蔵。翌日から使えて約1週間はもつ。塊のままゆでたり、薄く切って焼いたり、スープや煮物に。
余分な水分が抜けてうまみが凝縮した塩豚は、すでに塩味もついているのでほとんど調味料いらず。ふた付きの厚手の鍋にオリーブオイルをひき、豚肉とじゃがいもを重ねながら交互に並べ、にんにくを皮付きのまま、ローズマリー、コンソメ200㎖を加えて弱めの中火で30分蒸し煮にするだけ。「ホクホクに蒸されたにんにくをつぶしてソースにしていただきます」
お気に入りの調味料や取り寄せも活用
お気に入りの調味料があれば、好きな味が手軽に作れ、
自分が好きなお店のお取り寄せ品が冷凍庫にあれば、
毎日のご飯作りのモチベーションになります。
おいしい調味料の力を借りる
粗塩に干ししいたけ、昆布、干し貝柱のうまみを加えた「ろく助塩」は、「何でもおいしくなる〝ずるい塩〞」と馬田さん。かつお節のうまみと梅酢の酸味が効いた「煎酒」は、吸い物や鍋の隠し味や夏場のそうめんだれに。かつおだしベースでほんのり甘い「丸正酢醸造元」の「さんばい酢」は、あえ物やサラダに。和歌山「ふたば農園」の梅酢は、ご飯を炊くときに入れたり、おにぎりの手水にしたり。
photo:キッチンミノル text:和田紀子
『家事のしくみを、整える』より
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Profile
馬田草織
出版社で女性誌編集を経て独立。食や旅を軸に取材・執筆する一方、ポルトガル料理研究家として料理教室「ポルトガル食堂」も主宰。
http://badasaori.blogspot.com
肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。