料理家・渡辺有子さん まだまだやれることがたくさんある vol.1
ずっと「このままでいい」と思っていました。
でも、夫の「せっかくできる力があるのに
やらなくちゃもったいない」
という言葉に背中を押してもらったんです。
動いてみたら、まだまだやれることがたくさんある、と
小さな自信がもてました。
扉を開けて、一歩中に入るとカウンターと
細長いテーブルが一直線に伸びていました。
スタイリッシュなガラスのダウンライトがアクセントとなり、
静謐でありながら、個性を感じさせる空間に背筋が伸びる思いがします。
一昨年、料理教室「フードフォーソート」をオープンさせた渡辺さん。
棚にピシッと並ぶ器にも、きれいに拭きあげられたカウンターにも、
生徒さんに配るレシピブックにも、渡辺さんが伝えたい「おいしさ」が宿っているよう。
「毎日教室が終わったら、2時間かけて隅々まで掃除をします。
レッスン中は携帯禁止。適度な緊張感の中で、
少し背筋を伸ばして料理に向き合っていただきたくて」と語ります。
実は、教室を始めるなんて考えていなかったそうです。
進めてくれたのは夫で写真家の五十嵐隆裕さんでした。
「『今やらなくていつやるの? やる力があるのに
やらないなんて、もったいないよ』と言われたんです」。
料理家として働き始めて20年。料理本を出したり、
レシピ提案をしたり。着実にキャリアを積んできました。
「どこかで『このままでいい』って思っていたんです。
私ね、自分から『あれがやりたい』と
貪欲に突き進むタイプじゃないの」と笑います。
それでも、五十嵐さんは
「このままでいい、ってことはいつか下降するってことだよ。
次にやりたいことを考えて、少しずつ上がっていくことで、
“今”がキープできるんだから」とアドバイスしてくれたそう。
Vol.2に続く
『暮らしのおへそ』Vol.22より photo:馬場わかな text:一田憲子
Profile
渡辺有子
料理家。素材の味を生かした、やさしくシンプルな料理が人気。季節を大切にした丁寧な暮らしぶりや、センスある着こなしでも注目を集めている。スタジオ「FOOD FOR THOUGT」で、料理教室を開催。近著に『サンドイッチの時間』(マガジンハウス刊)がある。
肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。