95年前に作った初めての製品を修理する。【マルニ木工】の修理の現場から
※Come home! webに掲載された記事を転載しています
「日本の住文化を高めたい」そんな思いで創業したマルニ木工は2023年で95周年。
創業以来変わらず木製家具にこだわり、「工芸の工業化」をモットーに、職人の手仕事と機械加工のバランスを追求した家具を皆さまに提案しています。
「令和の家具事典」ではマルニ木工のこと、そして私たちが作る家具のことなどをお届けしていきたいと思います。
少しでも皆さまの暮らしのお役に立てますように。
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#26
一つ一つの椅子と向き合い修理する
マルニ木工では修理にも力を入れています。メンテンナスしながら使い続けていただくことで、永くご愛用いただけます。
今回はそんな修理の中身をご紹介いたします。
木部修理
曲木椅子第一号と呼ばれるこの椅子は、昭和3年12月20日(木)誕生。
マルニ木工が創業し、初めて製品化した思い入れのある椅子です。
創業者である山中武夫が「木」という素材を生かしてみたいという夢を抱いてから、様々な試行錯誤の末、工場を創設し、それからさらに約7か月後にやっと思い通りの曲木椅子が誕生したことは、よほど嬉しかったのだろう、と社史に記録があります。
今回、この椅子の木部が割れてしまったので、修理してほしいとのご依頼をいただきました。
①木部接着
このような割れの場合、一度部品を取り外し、割れてしまっている箇所を接着し、接着した部品を再度組み立てるという作業になります。
ただ、一度分解してビスを取ってしまうと、ビスが変形し、使えなくなるかもしれないという懸念がありました。
このビスはおそらく製造当時に使われていたビスだと推測されます。このビスが、今のビスに変わってしまっては、この椅子の良さが損なわれると思い、工場で相談をした結果、分解はせずそのまま修理することになりました。
隙間に接着剤を注入し、クランプと呼ばれる器具で木部を押さえます。
そのまま押さえようとしても、クランプの接地面がカーブを描いているため、うまく力がかかりません。
そこで木を加工し、力がうまくかかるような道具(左写真)を製作しました。
②研磨・着色
木部接着が終わった部材には多少、段差が生じてしまっています。それを平らにするため、磨いていきます。
研磨したのち塗装を施しますが、部分塗装のため、色を付けた部分に違和感が出ないように塗装を施していくことは職人の腕の見せどころです。
③完成
木部修理は、割れ具合がそれぞれ異なるため、イレギュラーなことの連続です。
割れの程度がひどい場合、直らないというケースも出てくることもごく稀にあります。
今回お預かりをするときも、お預かりしてみたものの直らないケースもありますとお伝えしたところ、お客様からは「それでも良いので一度修理してみてください」とおっしゃっていただきました。
弊社では「100年経っても『世界の定番』として認められる木工家具をつくり続ける」というビジョンを掲げており、流行に流されないデザイン、壊れにくい椅子の構造ということは100年経っても認められ愛され続けるうえでとても重要なことです。
しかし、最終的にお客様が直してでも使いたいと思っていただかなければ、残っていく家具にはなり得ません。
今回のように直せるかどうかわからない状況でも直してほしいと思っていただけることは本当にありがたいことだと改めて感じました。
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