新連載スタート!【小さなヘアメイク相談室】ぬり絵メイク

小さなヘアメイク相談室
2024.04.22

はじめまして、藤岡ちせです。40代まで東京やN.Y.でヘアメイクアーティストとして活動していましたが、50代で地元の高知にアトリエを開き、マンツーマンのヘアメイクレッスンを行っています。日々ここにやって来るのは、お肌の曲がり角を何度も曲がってきている女性たち。彼女たちのメイクのお悩みや自己流のお手入れは、これまでプロのモデルやタレントにメイクをしてきた私にとって、驚くことばかりです。この連載ではそんなお悩みの数々を、ちょっぴり辛口モードで解決していこうと思っています。



今日「小さなヘアメイク相談室」にやってきたのは、40代くらいの、清潔感のあるキチッとした装いの女性。くっきりとした二重が印象的で、視線が合ったとたん、その人の目元に目を奪われました。で、その奪われた私の目は、何か大きな違和感をもったのです。

そんな彼女の質問はこちら。

「目元がボヤッとしているのが気になっていて、はっきり見せるにはどうずればいいですか?」

いや、あなたの二重はボヤッとしていないし、はっきりもしているけれど……と思いながら、目を閉じてもらいつつアイメイクを確認してみました。

なんということでしょう!

二重の幅全体に、マットなブラウンがはみ出すことなく塗りおさめられていたのです。まるでぬり絵のようにきっちり。中央に白い丸を描いたらガガ様のアノ目になりそう。外見のキチッと感がアイメイクにも表れ過ぎている……。

 

目を開けている間は二重のラインが隠れるのでわかりづらいのですが、目を閉じるとものすごい勢いで気になります。これが淡いピンクやオレンジなら、肌色に近いぶん気にならないかもしれないのですが、マットなブラウンはコントラストが強いから、すこぶる気になってしまうのです。

ねえ、ねえ、グラデーションは? グラデーションはないの?

……ない。

メイクアップは、グラデーションが命です。そもそも顔に色をつけること自体がおかしな行為で、不自然なこと。なぜ色をつけるのか、考えてみてください。それは、健康的に見せたり魅力的に見せたりするのが目的だと思うのです。好みのメイクをするのはもちろん自由ですが、人に違和感を与えたくないなら、ぜひともグラデーションを意識していただきたい!



ぬり絵メイクのご本人には、そんなグラデーションの話を伝え、まぶたを上下に分断するように塗られていたブラウンのアイシャドーの輪郭を指でぼかし、まつ毛のきわにダークブラウンのアイラインを引きました。これで、下から上に向かって淡くなるグラデーションが完成。

「ほお〜、ナチュラル〜! ナチュラルなのに目がはっきり大きく見える〜」と、彼女も大喜び。

なぜ大きく見えたのかというと、二重幅までしかなかったアイメイクをアイホールまでぼかしてグラデーションをつくり、濃いアイラインで引き締めることで、目のフレームが自然な感じで強調されたから。まぶた全体に広がりを感じる目の錯覚を利用したのです。

 



メイクアップは、基本的にすべてグラデーションでつくります。たとえばファンデーションは、フェイスラインや首の地肌に向けてぼかさないと、顔と首の色に差が出て浮いてしまいます。チークをぼかさないと“おてもやん”だし、ハイライトやシェーディングをぼかさないと“デーモン閣下”になるし、アイブロウをぼかさないと“タケちゃんマン”です。

このところメイクはナチュラル傾向にあり、あまり輪郭をとらないことが多いです。つまり、輪郭をはっきりさせると、一気に昭和なビンテージフェイスになってしまうのです。リップラインなんかも、くっきり描くとソレになりがちです。

さあ皆さん、メイクを更新しましょう!

「ぬり絵メイク」まではなっていないにしろ、グラデーションをつくる大事さを認識していない方は、まだまだ多いように思います。まずは明日の朝、アイメイクのグラデーションを意識してみてはいかがでしょうか。

 

illustration:大賀美穂
photo:藤岡ちせ

 

Profile

藤岡ちせ

Chise Fujioka

ヘア&メイクアップアーティスト。テレビ、CM、広告、雑誌、ミュージックビデオを中心に活躍し、1998年から3年間、ニューヨークでも活動。美への探求心からハワイのボディトリートメントロミロミとフェイシャルを学び、自宅サロンを開くなど活動の分野を広げる。東京、鎌倉と移り住み、2019年に故郷の高知へ。住宅街の一角に、ヘアメイク、写真、オーガニックコスメなどを楽しめるアトリエ「APARTMENT102.」をオープン。
https://www.apartment102.net/
Instagram:@apartment_102_

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

ページトップ