【福田麻琴さん連載】素敵な50代になるために、いま私ができること ~ vol.3「翁再生硝子工房」のワイングラスで贅沢なひとりの晩酌を
『ナチュリラ』でのスタイリング提案でもおなじみ、人気スタイリスト・福田麻琴さんのコラム連載がスタートしました! 現在45歳の福田さんが「素敵な50代を迎えるために」最近心がけていることとは? 日常のなかでのおしゃれや暮らしについての“ちょっとした気づき”をダイアリーのようにお届けします。
最近、生まれて初めて自分だけのマイ・ワイングラスを買いました。全く飲めなかったワインを好きになったのは、30歳でフランスに留学した頃。当時の現地ではビールより(なんなら水より)ワインのほうが安くて、カフェで注文するのはワインが当たり前。
以来、帰国してからも飲むお酒はワインばかりに。友人が来てもみんなでワインを楽しめるようにと、お気に入りの「木村硝子」で“ピッコロ”というグラスと丈夫なミニワイングラスの2種類を6脚ずつ買いました。割れたりして今では数は少し減ってしまいましたが、やはりみんなで飲む時はこのどちらかを愛用しています。
そして昨年、仕事で訪れた大分・別府の「SPICA」で出会ったのがこちらのワイングラス。話を聞けば再生ガラスでできているとのこと。再生ガラス……。SDGsに興味深々の私にはとても素敵な響きです。
「翁再生硝子工房」のもので、主にお酒や調味料などに使われていた古いガラス瓶を溶解し、吹きガラス等の技術を用いて製作されているのだそう。色々なガラスがミックスされているからか?ほんのりとグリーン色。ハンドメイドのため一つ一つ少しずつ形も違って、それがまた愛おしい。
「SPICA」の店内にはほかにも素敵なものがたくさんありましたが、この佇まいに一目惚れ!
かご、器、ガラス、布……。素朴だけれど使い勝手のいい生活道具が美しくディスプレーされていました。
最初、このグラスもやはり6脚買って来客用にしようと思ったのですが、置く場所もないし、そんなにたくさんのワイングラスは必要ないと思いとどまりました。それでも買うこと自体は諦めきれず、初めて一脚だけ買いました。誰かのためじゃなく、自分のために。そんな風に選んだ買い物もいいかも、と、ふと思ったんです。それから毎晩晩酌はこのグラスと一緒。お揃いのグラスが並んでいる食器棚に、少し歪なワイングラスが一つ。それがなんだか可愛くて、目に入る度ににやけてしまいます。
私を待ってくれている、私だけのワイングラスで飲むワインは、ワインそのものは一緒でも一層美味しく感じるもの。仕事が終わって帰宅して、一息ついたらこのワイングラスと一緒にお疲れさま会を。正直言うと、この持ち手の部分までワインが入るのでいつものグラスたちよりちょっと多く飲めるかなぁと打算もあったりして(笑)。自分専用のグラスだから、そのくらいの我儘も許してくれるような気がしちゃってます。
一脚のワイングラスでこんなに幸せな時間を過ごせるなんてね。こういう小さな幸せをゆっくり噛み締められるのも今だからこそ。それをたくさん探せることが、きっと本当の豊かさなのかも……。そんなことを想像していると、歳を重ねることがますます楽しみになるのです。
写真と文/福田麻琴
Profile
福田麻琴
1978年生まれ。フランス・パリ留学を経て培われたフレンチテイストに、ベーシックさと、そのときどきのニュアンスの両方をバランスよくを取り入れたスタイリングが人気。近著に『MY BASIC, MY ICONS 10年後も着たい服』(イースト・プレス)。IG「@makoto087」
肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。