【福田麻琴さん連載】素敵な50代になるために、いま私ができること ~ vol.6 金継ぎから学ぶ日本古来のスピリット

ナチュリラ
2024.08.16


『ナチュリラ』でのスタイリング提案でもおなじみ、人気スタイリスト・福田麻琴さんのコラム連載がスタートしました! 現在45歳の福田さんが「素敵な50代を迎えるために」最近心がけていることとは? 日常のなかでのおしゃれや暮らしについての“ちょっとした気づき”をダイアリーのようにお届けします。


 

いつかいつかと憧れていたことの一つ、“金継ぎ”に挑戦しています。日本古来より用いられてきた、陶磁器修復の伝統技法。私が目標にしているかっこいいマダムたちは、なぜか金継ぎをしている人が多くて。私もいつかやってみたいなぁとは思っていたものの、敷居が高いような気がしてなかなか手を出せずにいました。普段なら「ひとまずなんでもやってみる!」をモットーに生きている私。ここまで慎重になることは滅多にありません。なんとなく勘づいていたのでしょう、その奥深さに。安易に手を出してはならぬ、と……。


それでも思い切ってやってみようと決意したのは、お気に入りの“アスティエ”の花瓶が欠けてしまったから。そう、この時を待っていたのかもしれません。なんて自然な流れ! だって金継ぎする為にわざと壊すなんて本末転倒だし、そもそも子育て中ということもあり、家にある食器は丈夫が売りのシンプルなものばかり。あまり食器が割れたこともなくて。

そんなこんなで、やっときたこのチャンスを逃しはしませんよ〜。一度気持ちが固まれば、即行動! 自宅近所の金継ぎ教室を探し出し、通い始めたってわけです。で、無事に修復できた花瓶がこちら。もともとアンティークのような趣のある“アスティエ”の質感と金継ぎの部分がよくマッチしていると思いませんか?


で、これはハマる。が、思っていた以上に工程に時間がかかる(笑)作業してから乾かす時間が必要なので、一気に工程を進めることはできないんです。漆 → 刻芋漆(こくそうるし)→ 錆漆(さびうるし)……と修復材を薄く重ねては乾かす、その繰り返し。せっかちな性格なので、途中何度か休んだり、諦めそうになったり、しまいには「修理で預けたらいくらになりますか?」と先生に見積もりを出してもらったことも(苦笑)。

どちらも欠けとしては、ほんのちょこっと。でもこのちょこっとをそのままにして使い続ける気にはなれません。とはいえ、このちょこっとを直すのに結構な時間がかかる……。


けれどこの単純作業をしていると集中力が高まり、ストレス解消にもなっていることに気づいたんです。静かに何かひとつのことに集中する時間って、実はこれまでの日常ではあまり作れなかった私。無心で作業をするうちに心が穏やかになっていく新しい自分を発見しました。加えて、日本の伝統的な技術に触れている時間は“大人の知識欲”を刺激するのか、お教室に行くだけでどこか小さなギャラリーに来たような気分にも。アートへの憧れが心地よく満たされます。その感覚を味わいたくて、少しお休みをしても通い始めるとまたハマってしまうのです。


どちらの器もまたわが家で活躍してくれています。継いだ部分がチャーミングなアクセントになっていて、いっそう愛着がわきました。

金継ぎは道具も作業も日常では触れることがないもの・ことばかりで学びがとても多いのですが、この「昔の日本に還る時間」って、よく考えてみると今の時代に叫ばれているエシカルの極み。壊れた物を直す、物を長く大事に使う、そんなメッセージが込められているのだと思い至りました。ずっとずっと長い間、私たちのご先祖さまは自然と共存しながら、たくさんんの知恵を生み出してきたんだなぁ。日本人の中に流れるこのマインドをこれからもっと大切にしていきたい。さて、これからも少しずつ練習です。

さて、この連載も無事半年を終えました。ここまでお読みくださりありがとうございました。この先、公私ともにとある計画が進行中なため一旦ここで終了とさせていただきます。また時がやってきたら、こちらでお知らせいたしますのでぜひご覧いただけたら嬉しいです。
たくさんの感謝を込めて。まだまだ暑い日が続きますが、おしゃれと暮らしの愉しみをかき集めて元気に乗り切りましょうね!

写真と文/福田麻琴

 

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Profile

福田麻琴

ふくだ・まこと

1978年生まれ。フランス・パリ留学を経て培われたフレンチテイストに、ベーシックさと、そのときどきのニュアンスの両方をバランスよくを取り入れたスタイリングが人気。近著に『MY BASIC, MY ICONS 10年後も着たい服』(イースト・プレス)。IG「@makoto087

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

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