「うっすら不調」のセルフお手当てにはお灸が最適!?【後編】
【前編】では、初めてのお灸体験をした後藤由紀子さん。「せんねん灸ショールーム銀座」でいろいろな種類を試して、お灸のイメージが「ちょっと怖い」から「なんだか気持ちいい!」に急上昇。体も気持ちもポカポカしたところで、【後編】ではショールームの上のフロアにある「お灸ルーム」に移動し、本格的な「お灸教室」に参加しました!
迎えてくださったのは、鍼灸師の小泉洋一さん。普段からここで、正しいツボの探し方やお灸の使い方をレクチャーする「お灸教室」を開いています。
いまの体の状態を
確認することからスタート
まずは問診票に記入。痛みやコリを感じているところ、過去の病歴などについて書き入れます。ちなみに、後藤さんの目下のお悩みは「肩こり、めまいや立ちくらみ、倦怠感、眠りが浅いこと」だそう。
後藤さん(以下、後):「こうやって書き出すことで、改めていまの体や心の状態を自覚することができますね」
書き終えたら、小泉さんからの問診と解説へ。お灸やツボについての理解も深めていきます。
小泉さん(以下、小):「お灸というのは温める治療法です。温めるというと一番手っ取り早いのはお風呂ですが、これは全身を温めます。後藤さんの肩こり、お風呂に入ると改善されますか?」
後:「はい、こわばりはなくなる気がします」
小:「料理をする方は想像しやすいと思いますが、脂は冷めるとかたまり、温めるとゆるく液体になりますよね。体の筋肉も同じことで、冷やすとかたまって温めると柔らかくなる」
後:「だからお風呂のあとは、全身がゆるんだような感覚になるんですね」
小:「そうです。お灸は同じように体を温めますが、ある特定の部分だけを温めると、そのツボに対応した内臓などに作用し、たとえばお腹の調子が変わったり、呼吸がしやすくなったり、子宮卵巣の腫れが引いてきたりっていうことが起きるんです」
後:「ポイントで温めて、そこに対応した部分が抱えている不調を整えていくということなんですね」
小:「その“ポイント”であるツボですが、実は世界共通のもの。WHO(世界保健機関)が20年ほど前に361か所のツボの位置を世界標準として決めたんです。ちなみに後藤さんは、ご自身の体にもツボが361個あると思いますか?」
後:「あるといいなと思います(笑)。あれ? その逆か! ないほうがいいのかな?」
小:「そうです。内臓とか器官とか、体の中にあるもの、そこに不具合が起きると肌にツボが出てくる。だから、ツボは少ないほうがいいんですよ」
自分のツボを
探す方法は?
お灸とツボの基本を学んだところで、いよいよ実践です。まずは自分の腕にあるツボを探していきます。
小:「体に不具合が起きると、そこに対応する部分が血行不良になり、肌のハリがなくなってたるみ、少し凹んだようになるんです。そこがご自身のツボです」
後:「ええ〜、そうなんですか!」
小:「ツボの探し方としては、目を閉じて手の感覚を研ぎ澄ませ、腕に指を当てて下から上へゆっくり滑らせていくのがコツ。『この辺りが少し凹んでいるな』というところを見つける感じです」
腕に集中して凹みを探し、「なんとなく」ではあるけれど、「ここかな」というポイントを見つけた後藤さん。そこにマーカーで印をつけます。
小:「そうそう、『なんとなく』でいいんですよ。実はね、このツボを探すという行為だけで、体がラクになるんです」
後:「え? 探すだけで? あ、なるほど、つまり自分の体や不調を自覚して意識を向けることが、体調を整える第一歩になるということですね」
もう片方の腕のツボも探して、第一段階が終了です。ちなみに後藤さんが探し当てたツボはこの2か所。
体を伸ばして
血行不良の部分を確認
次に、いまの体の状態をチェック。前屈をして、手がどれくらい床に近づくか、体のどこかにツッパリや痛みを感じないかなどを確認します。
バンザイするように後屈をして、首まわりの詰まりや手の上がり具合もチェック。
最後に首をまわし、違和感がある部分を見つけます。
後:「首の後ろがちょっと痛いというか……、こわばりを感じるかな」
自分で見つけたツボで
実際にお灸体験
体の状態を確認し終えたら、いよいよお灸タイム! 【前編】で教わったように、お灸の台座のシールをはがして指につけ、先端に火をつけて……
煙が立ったら、もう片方の手で台座の横を持って指からはがし、さきほどマーカーで印をつけたツボに置きます。
小:「じんわり温かくなってくるのを感じますか?」
後:「はい、感じます。ほんのり温かいです」
小:「そういう感覚のときは、そのツボの血行が整いつつありますよ、そのままお灸をしてくださいねという合図。もし“温かい”が“熱い”に変わったら、すぐに外してください。ツボの血行不良が改善したサインです。また、それ以上お灸をすると、場合によってはやけどしてしまいますよというサインでもあります」
「熱くなってきました!」と、台座をくるりと回すようにして素早く取り外す後藤さんは、すっかりお灸の達人!?
お灸をしている時間は5分程度。その間に小泉先生が見せてくれたのがこちらの浮世絵の資料で、女性がお灸をしている様子が描かれています。
後:「江戸のころからお灸のお手当ては庶民の暮らしに根づいていたのですね!」
さて、続いて足のお灸に移ります。
小:「足にもたくさんツボがあるんですよ。後藤さんの不調の原因に働きかけるツボもあるのですが、まずは予備知識なしに感覚で探してみましょう。親指から上に向かってやさしく押していき、『押された感覚が他と違うな』というところを見つけてみてください」
「ここかなー」と後藤さんが探し当てたのは足の甲の真ん中ぐらい。同様にマーカーで印をつけます。実は、ここがドンピシャな位置だったようで!
小:「後藤さん、ツボを探し当てるのがお上手ですね。WHOレベルですよ! お仕事柄、感受性が豊かだからですかね~」
「あら、やだ」と、思いがけず褒められて照れる後藤さん。
後:「数分お灸をしただけなのに、体全体が温まって軽くなった感じ。不調といってもお医者さんに行くほどでもないし、なるべく薬に頼りたくない。そんな私みたいなタイプにお灸はすごく合っていると思います」
小:「個人差もありますが、すぐに体の変化を感じられるのも、お灸の特徴なんですよ」
このあと前屈や後屈をしてみると、血行がよくなったのか、お灸をする前より可動域が広がり、違和感があった部分もスムーズに動くことを実感した後藤さんでした。
後藤さんの
「うっすら不調」の原因は?
小:「実は今回、後藤さんが探し当てたのはすべて、肝臓とつながるツボでした。お悩みである肩こりや倦怠感、眠りの浅さも、肝臓の機能低下からきている可能性があります。体調不良って、大抵が内臓の機能低下が原因なんですよ。後藤さんの場合は、エネルギー不足でもあると思うので、お灸で血行をよくしつつ漢方で体質改善をすると、体調が変わってくるかもしれません」
丁寧な問診と自身で見つけたツボによって、長年の「うっすら不調」(聞けば、20数年前のお産の頃からだそう)の原因を導き出してもらった後藤さん。「ええ、肝臓ですか?」と、驚きつつ、不調の元がわかってすっきりした表情。お灸でのセルフケアのやり方を習得したり、漢方を取り入れるアドバイスをもらったりしたことで、より的確に不調に向き合っていけそうですね。
さて、今回のお灸教室から約1か月。その後の後藤さんはというと……。
後:「お灸を日常に取り入れるようになりました。これまで冷えの自覚がなかったのですが、実はすごく冷え性だったみたいです。お灸をするようになって人並みに冷えを自覚するようになりました。3日に一度、足にお灸をしているのですが、体の中からじんわり温まり、顔の血色もよくなった気がします。長年悩んできた不調も少しずつよくなってくれるように、これからも続けてみようと思っています」
text:鈴木麻子
photo:岡 利恵子
1Fのショールームにはせんねん灸の全ラインナップが並ぶ。無料のお灸体験も随時受付。3Fのお灸ルームでは、予約制で鍼灸師による治療や教室を実施。
東京都中央区銀座5-10-9 銀座YKビル1F
TEL:03-6228-5981
定休:月曜(月曜が祝日のときは営業)
営業時間:11:00〜19:00
https://www.sennenq.co.jp
http://okyu-room.jp
Instagram:「@sennenq_ginza」
Profile
後藤由紀子
静岡県・沼津で器と雑貨の店「hal(ハル)」を営む。最近は「出張hal」として日本各地で期間限定の出店も。二人の子供は社会人となり、子育てもひと段落。暮らしの工夫や気づきを綴った飾らないエッセイも好評。2月に『別冊天然生活 後藤由紀子さん 50代からはじめる日々の備え』(扶桑社)を発売予定。
Instagram「@gotoyukikodesu」
YouTube「後藤由紀子と申します」
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