50代のスキンケアの数は多いほどいいわけではありません 【前編】
こんにちは、藤岡ちせです。40代まで東京やN.Y.でヘアメイクアーティストとして活動していましたが、50代で地元の高知にアトリエを開き、マンツーマンのヘアメイクレッスンを行っています。この連載では、お肌の曲がり角を何度も曲がってきた方々にはきっと、お役に立つであろうお話をしていけたらと思っています!
さて今回ヘアメイクレッスンに来てくれたのは、営業職として毎日バリバリ働く50代の女性。いつも大きくて重そうなバッグを自転車のカゴに乗せ、仕事の合間に化粧品を買いに来てくれているのですが、ある日、泣きそうな顔で「最近、どっと老けた気がするんです。ヘアメイクでなんとかなりませんか~」と助けを求めに来たのです。
スキンケア用品
いくつ使っていますか?
では、さっそくヘアメイクレッスンのスタートです。いつものとおり、普段使っているスキンケア用品や方法をチェックするため、持ってきてもらったアイテムたちを出してもらったところ……。彼女がいつも自転車のカゴに乗せているものより、ひと回り大きなバッグから何やらたくさん出てくる! 出てくる! スキンケア用品の山! まだ封が開いてないもいのもわんさか出てきます。え、多くないですか? 1、2、3…… え? 開封済みのものだけで9個もありますけど???
「こ、これ、毎日全部使っているんですか?」
「ええ、一応……」
「あ、朝と夜、それぞれ違うものを使い分けしているということですね」
「いえ、朝晩同じで、全部使っています」
「そ、そうなのですね。どんな使い方をしていらっしゃるんですか?」
そこで彼女が教えてくれたルーティーンがこちら。
1. 拭き取り化粧水
2. ブースター
3. 保湿化粧水
4. 美白化粧水
5. エイジング美容液
6. オイル美容液
7. 乳液
8. クリーム
9. アイクリーム
「え? なんか間違ってますか?」という表情で、こちらをきょとんと見つめてきます。その意識の高さには感心するのですが……いやいや、こりゃ使いすぎですぜ、お客さん!
余談ですが、知っていますか? 顔の皮膚の厚さは2mm程度しかなくて、そのうち化粧品を吸収できるのは、表皮のわずか0.02mm程度なんですって(皮膚科学の本より)。そんな薄い皮膚に短時間でそんなにたくさんつけても、有効成分がすべて効果的に浸透するとは考えにくいと思うわけです。
スキンケア用品は
皮膚のバリア機能を補うもの
さらに余談ですが、約4億年前、水中から陸に上がった人類の肌には、環境の変化から体を守るために自然と保湿される仕組みが備わったそう。そのセルフ保湿機能は現在も備わり続けているので、健全な皮膚の表面は皮脂で覆われ、脂質(セラミド)、天然保湿因子のおかげで水分が逃げないように守られているそーな。確かにそうだ、プールに入っても体内に水が入ってこないのは、この皮膚の機能でバリアされているからなのですね。
で、このバリアが破壊されると乾燥を引き起こすので、バリアの元となる皮脂を補強するのがスキンケア用品の役割。ただ、いくら皮脂で覆われていても、過剰な保湿を続けると肌のターンオーバーが乱れて逆効果になってしまうそう。そう、つまり彼女の9個は、つけ過ぎなのです。
加齢恐怖症は
誰もが通る道!
私が「ぎょぎょぎょっ」という顔をしていたので、ちょっと言いにくそうに「実は、この9個以外にも、未開封シリーズ、観賞用シリーズ、買ったけど使い方不明シリーズがあるんです」というさらなる告白が(笑)。買うと安心するし、眺めていると癒されるのだそうです。
でもその気持ち、わかります! この行動の心理って化粧品ヲタクと加齢恐怖の合併症なんですよね。私も、30代半ばを過ぎた頃、肌が老けるのが怖くて同じ症状が出ていました。
化粧品は高価なほどいいに決まっている、とにかくいろんな種類をたくさんつけておけば老化を防げると信じていて、さらに、ちっこい吹き出物でも出ようものならダッシュで皮膚科に走って泣きついていましたっけ。先生は「また、こいつだ」みたいな苦笑いの顔で、優しく強い薬を出してくれました。今思うとトンデモなく無駄な心配と散財をしていましたね(笑)。
その後、フェイシャルの習得に際して皮膚の勉強をし、「その時の肌の状態に合わせて化粧品を使う」ということを学びました。今は過保護をやめ、水分(化粧水)と油分(クリームなど)を基本ケアに。状態に合わせて美容液でバランスをとっています。
さて、今日のところはここまで。明日の【後編】では、9個もあるスキンケア用品を整理して、それぞれ効果的な使い方をお伝えしたいと思います。
illustration:大賀美穂
photo:藤岡ちせ
Profile
藤岡ちせ
ヘア&メイクアップアーティスト。テレビ、CM、広告、雑誌、ミュージックビデオを中心に活躍し、1998年から3年間、ニューヨークでも活動。美への探求心からハワイのボディトリートメントロミロミとフェイシャルを学び、自宅サロンを開くなど活動の分野を広げる。東京、鎌倉と移り住み、2019年に故郷の高知へ。住宅街の一角に、ヘアメイク、写真、オーガニックコスメなどを楽しめるアトリエ「APARTMENT102.」をオープン。
https://www.apartment102.net/
Instagram:@apartment_102_
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