【おへそ20周年】好きなように生きる ― 「ベイラー/サン」主宰 岩尾慎一さん、洋子さん
8月29日に発売した『暮らしのおへそ Vol.40』より抜粋してお届けします
何者かにならなくても
「これ」と好きなことが
わからなくてもいい。
嫌いなことを無理にしない。
それがいちばん大事。

自宅から歩いて5分で海に到着。最近早起きが好きという慎一さんが声をかけ、できるだけ家族みんなで散歩に出かける。この日は、もうすぐデンマークに留学する、Tamakiちゃん(真ん中)だけが家にいたので洋子さんと3人で、波打ち際を散歩。
自宅を出ると、すぐに瀬戸内海の穏やかな海が広がります。朝、この砂浜を、家族みんなで散歩するという岩尾家。東京から岡山へ移住して11年になると言います。
アパレル関係の会社で働いていたという夫の慎一さん。
「仕事は楽しかったのですが、もともともの作りが好きで、そろそろ本当に自分がやりたいことをやってみたいと思うようになって。ものを作るには、産地の近くがいいなと、出張でたびたび来ていた岡山を選びました」
当時、3人の娘たちはまだ幼かったのに、どんな仕事をするかは決まっていなかったといいますから驚きです。
妻の洋子さんは、魚市場でアルバイトをし、慎一さんは港に船が着くときにロープをかける仕事を。
たまたま見つけた家は海の近くで、隣が船を管理する船屋さんでした。
「そこのおばちゃんが『船の免許とってきたら船を貸してあげるから』と言うので、船舶免許をとりました」
こうして家族で船遊びに出かけるようになり、船の中で見つけたのが布バケツです。船には必ず消火用にバケツを備えなくてはならず、プラスチック製では劣化して割れてしまうので、昔から帆布が使われていたそう。
「古くてボロボロだったそのバケツがすごくカッコよくて。これは、日常のなかでも使えるバッグにできるかなと思ったんです」
それが今「ベイラー」というブランド名で作っている帆布のバッグです。ほかにも、余った生地を組み合わせたエプロンや、繊維を圧縮して作った小物などを販売しているそう。

船底の水をくみ出したり、消火用に使われる布バケツと同じクオリティ、製法で作った「ベイラー」のバッグ。簡素でありながら完成された美しさで、修理しながら使い込むほど味わいが出る。
「洋服を裁断する際に、3割の布は捨てられます。あるとき、パンツ工場に行ったら、半端な布でかわいいパッチワークのエコバッグを作っていて。意識があれば、余材でもの作りができるんだと知りました」と慎一さん。
散歩から帰ると、長女のTamakiちゃんがパンを焼いて朝ご飯を。
「作れるものは、できるだけ買わないで作るのがわが家の『おへそ』かな。そのほうがずっと楽しいので」
子どもたちの洋服はもちろん、将棋の駒は残った革で、みんなが大好きな漫画雑誌『週刊少年ジャンプ』を並べる本棚も、慎一さんが作りました。
洋子さんは、若い頃から絵を描くことが好きで、造形大学へ。在学中にインドに行った際は「3か月で3万円しか使わなかったの」と笑います。その後「何かが違う」と大学を中退。
「何者かになりたいなんて、なかったかもしれないですね」

古いビルにあるアトリエは、かつて縫製工場として使われていた場所。窓が低いので光が手もとを照らしてくれるそう。ここで、企画を練ったりサンプルを作ったり。
この続きは発売中の『暮らしのおへそ Vol.40』をぜひご覧ください。
photo:中川正子 text:一田憲子
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暮らしのおへそ Vol.40
Profile
岩尾慎一・洋子
慎一さんはアパレル会社で生産管理の仕事を。洋子さんは東京・六本木のレストランなどでアルバイトをした後結婚。2014年に東京から岡山に移住。衣料の製造過程で出るロスを、新しい素材として捉えて価値あるものを生み出すアップサイクルなもの作りブランド「3/sun(サン)」や、帆布のバッグ「BAILER(ベイラー)」を立ち上げる。
https://3sun.jp/
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