大事なのは、自分以上になろうとしないこと Vol.2 陶芸家 大谷哲也さん、大谷桃子さん

暮らしのおへそ
2017.06.07

Vol.1はこちらから

 

やがてふたりは結婚。哲也さんは、試験場に勤めながら、
少しずつ器を作るようになりました。

「僕の作品は釉薬が命なんです。シンプルな白なんだけど、
ふわっと毛が生えたような質感……。この釉薬ができたときにはうれしかったなあ。
これを生かせるものを作りたい! と思いました」

 そして、花ちゃん、風ちゃん、緑ちゃんという3人の女の子が生まれ、
哲也さんは、12年間勤めた試験場をやめて独立。
今では、国内外で展示会を開き、器を手に入れるには、
半年〜1年待ちという人気ぶりです。

 大忙しの毎日ですが、一番大切にしているのは、
家族みんなでの食事の時間。

ootainAL4A8381A

朝食と昼食は哲也さん、
夕食は桃子さん担当。平鍋で肉のポットローストを作ったり、
庭で収穫した野菜でサラダを作ったり。

「いくら仕事に没頭していても、
子供にはご飯をたべさせなければなりません。
そんな日々の営みがあるからこそ、
いろんなことのバランスが取れてると思うんです」

そしてふたりが、忙しくても、おいしく食べて、
豊かな時間を過ごせるようにと考えたのが
「単純化」という方法です。

ootainAL4A8034A
パンを焼くときははかりを使わない。小麦粉4カップに酵母汁、
塩を加えてフードプロセッサーで混ぜボウルの中でサッとまとめて焼くだけ。


たとえば、パンを焼くなら、軽量カップで材料をざっくり量って……
といった具合。ひとつひとつの作業を単純化することで
「丁寧な暮らし」を諦めず、暮らしに定着することができます。

ootainAL4A8338A
哲也さん作のライスクッカーは、縁が高くなっているので
沸騰しても吹きこぼれない。沸騰したら5分で火を止めて15分蒸らせばできあがり。

 

「田舎だからおいしいものがすぐは手に入らない。
だから作る。ラクしてすぐできる方法を考えれば、
面倒臭くならないでしょう?」と哲也さん。

仕事も暮らしも、ふたりのものさしは、
自分たちの内側にありました。
自分たちがよければそれが正解! 
その代わり、「正解」を見つけるまでは、
とことん時間をかけます。

考え抜いて、自分の中からぽろりとこぼれ出た
答えを持って歩き出せば、なんにも怖いことなんてない! 
確かさは、自分の中に潜って探すものだと教えられました。

 

『暮らしのおへそ Vol.22』より

text:一田憲子 photo:岡田久仁子

Profile

大谷哲也 大谷桃子

Otani Tetsuya Otani Momoko

哲也さんは、大学の工芸学部卒業後オーストラリアへ。帰国後、滋賀県立信楽窯業試験場勤務を経て2008年に「大谷製陶所」を設立。桃子さんはアメリカのオレゴン州立大学で美術史を学び、在学中インドネシアに留学。帰国後、信楽窯業技術試験場で陶芸を学び、卒業後作陶を始める。13人の娘とともに5人暮らし。

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

ページトップ