夢中になればなんだってできる Vol.1 「goenº」主宰 森本千絵さん
その名前は知らなくても、一度は作品を目にしたことがあるはず。
砂漠に不思議な燕尾服のオーケストラが登場する
サントリー「ボス シルキーブラック」のCMや
Mr.Children、松任谷由実らのアルバムのアートワーク、
NHK連続テレビ小説『てっぱん』のオープニング画像や
映画『海街diary』のアートワークに
『絵本 母と暮せば』の絵など
その活動は企業広告にとどまらず、
本の装丁や空間デザイン、
さらには東日本大震災直後の「Pray for Japan」のロゴや
節電マークの制作までと多岐に渡ります。
そんな全方位OKのキャパシティの広さと
無尽蔵のパワーの源は、いったいどこにあるんですか?
人から見たら全力投球かもしれないけれど
無駄に力を入れると疲れますよね。
だから、力は入れずに心を入れる。
ただ無我夢中になっているだけなんです。
サーフィンをするときに力を入れると
傾いてボードから落ちてしまうのと一緒。
精神的な体幹はしっかりさせて、来た波にただ乗るだけです。
自分がどう乗るかではなく
ただ相手に身を委ねれば、無駄な力を使いません。
誰かの思いをカタチにして
誰かに伝える仕事
森本千絵さんは、大手広告代理店の博報堂で
アートディレクターとして活躍後に独立。
現在、デザイン事務所「goenº」を主宰する
コミュニケーションディレクターです。
「事務所の名前の由来は『ご縁』です。広告って、
誰かと誰かをつなぐコミュニケーション。
それをディレクションする人、という意味です。
私がやっているのは、誰かがやりたいこと、
伝えたいことがあっても、それをうまく絵にできないとか
言葉にできないとき、その思いを翻訳して誰かに伝える仕事です。
私が間に立って、きれいにカタチを整え、
CMやポスターという形でアウトプットしているので、
『森本千絵の作品』というとらえ方をされますが、
もともとは相手の中に最初からあったもの。
私の力ではなく、相手の力を使って
カタチにしているだけなんです」
数々の広告賞を受賞しているだけに、
クリエイター魂の塊のような人だと思っていましたが、
デザインするときは、自分の中を空っぽにして、
とことん「相手の力」を使うと言います。
そして、実は自分から何かを生み出したいという
タイプの人ではないのだとか。
「だからこそ、必至でゼロから何かを表現したい、
伝えたいという思いがはっきりしている人は、
みんな好きだし尊敬します。そういう人の仕事であれば、
何でもしますよ。その人が必死で伝えようとしている姿が
好きだから、うっかり好きになると、
その人丸ごと全部が好きになって他人事ではなくなって、
自分事になるんです。ユーミンの仕事をしているときは
ユーミンになるし、キリンビールの仕事をしているときは、
キリンビールの会社の人になる(笑)」
まさにイタコ状態と言えるほど、相手の中に深く潜り込み、
全力でのめりこみこんでいく森本さん。
Vol.2に続く
Profile
森本千絵
武蔵野美術大学卒業後、博報堂を経て、2007年に「goenº」設立。企業広告をはじめ、ミュージシャンのアートワーク、本の装丁、映画などの美術、空間やイベントのディレクションなど、多岐に渡って活躍。東京ADCグランプリや伊丹十三賞、日本建築学会賞など多数受賞。1児の母。http://www.goen-goen.co.jp/
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