頭も心もとろんとろんになるヘッドマッサージ vol.2 ~今回の先生:「VEDA LANKA」佐藤まど香さん~
足がホワホワになったところで、いよいよヘッドマッサージ。眉から指8本分頭上に移動したポイントが、中医学でいうところの「百会」、アーユルヴェーダの「第7チャクラ」(チャクラとは、身体の中にある「気=エネルギー」の出入り口)にあたる部分に、とろ~りと、最初のオイルをたらします。こちらのサロンで使われるオイルは、スリランカのメーカーから取り寄せており、現地では病院でも使われている医療用オイル。ごま油またはココナッツオイルがベースになっています。ちなみに私に使っていただいたのは「マハ・ナーラーヤナ」という26種類のハーブが溶け込んだオイル。神経をやわらかく、穏やかにしてくれる効果があるらしいです。
スリランカから届いたオイル。
数十種類の生薬をオイルに漬け込み、
何十時間かけて煮出して、薬効成分を抽出しています。
そのポイントから「オイルをたらし」「手のひらでなじませ」「髪の毛をひと束つかんでひねる」という動作を後頭部に向かって3か所行い、マントラ(祈りの言葉)を唱えます。これは例えるなら頭の「栓を開く」作業で、ちなみにマッサージ終了後には、髪の毛を逆方向にひねって「閉じる」作業も行うそうです。面白いですね。
マッサージは主に4つの手技を使って行われます。指を左右に動かし、摩擦でガシガシとこするようにするのは「ガルシャナ」と呼ばれ(ちょうどシャンプーで髪の毛を洗うときの頭皮マッサージに似ています)、音楽でいうところの「サビ」にあたるそう。それにひっぱったり、ポンポンと軽くたたいたりと、他の手技(「Aメロ」「Bメロ」「Cメロ」)を合わせて、それぞれ強弱をつけながら、まるで長い曲を演奏するかのようにマッサージは行われていきます。
このマッサージで、「マルマ」と呼ばれるエネルギーポイント、鍼灸でいうところの「ツボ」、アーユルヴェーダでは「心とからだの交差点」としてとらえられているスポットを刺激していきます。この「マルマ」は全身に108か所あり、ちなみにヨガのボーズはそれぞれ特定の「アルマ」を刺激する形を描いているそうです。
さてこちらのマッサージ。これが太字にしたいほど強調したいのですが、むちゃくちゃ気持ちいいのです……! まど香さんの手技は強かったり、弱かったり、一定のリズムなのだけど、まるで波のように強弱があって、そのリズムに委ねているうちに、独特のトリップ感が味わえるのです。自分の内部に深く深く入っていきつつも、何だか大きな存在にゆったりと抱かれているような。
そして、オイルの素晴らしさ。「油って、いいものなんですね……」と思わず口に出してしまったほど。それまで私が経験してきたマッサージは、クリームやジェルといった滑材は使わずドライのものばかりだったのですが、油が間に入ることで、「やわらかくなる感じ」→「とろける感じ」が倍増するという印象なのです。
そして世界と自分との境界線が、どんどんあやふやになっていくというか、大げさに言うと、今まで知らず知らずのうちにまとっていた鎧みたいなものが、ほろほろと剥がれ、「守ると思い込んでいた鎧が、実は自分を押し込めていたんじゃ」「もっともっとほぐれて、無防備でも、それはそれでよいのではないか……」的な気分になっていくのです。
施術後、まど香さんも話していましたが、「そもそも日本人は乾燥しすぎ」。湿気が多いので、こまめにお風呂に入るのはいいものの、必要な皮脂まで落としてしまっているので、実は身体は油分を枯渇しているそうです。
ちなみにアーユルヴェーダの世界では、「老化=乾燥」ととらえており、アーユルヴェーダの施術がオイルを多用するのは、一種の若返り法でもあるわけです。普段カサついている自分だけに、身にしみるお言葉でありました。もっと油を!
Vol.3に続きます!
photo:砂原 文 text:田中のり子
第2回「身体にふれることで、ありのままの姿を観察し認識するセラピー」はこちらから
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田中のり子
衣食住、暮らしまわりをテーマに、雑誌のライターや書籍の編集を行う。『ナチュリラ』(主婦と生活社)は創刊当初からのスタッフ。構成・執筆をした『これからの暮らし方2』(エクスナレッジ)が好評発売中。
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