漫画家・ヤマザキマリさん 心の「タガ」の外し方  Vol.1

暮らしのおへそ
2016.02.17

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その後の人生を決定づけた14歳での欧州ひとり旅

時は古代ローマ帝国建国から約800年。職を失った浴場設計技師シリウスは、ひとっ風呂浴びてさっぱりしようと公衆浴場へ。排水溝に吸い込まれ、ぷはーっと顔を上げると、そこは現代日本の銭湯だった……。そんな時空を超えた奇想天外なストーリーで大ヒットした漫画『テルマエ・ロマエ』。その作者であるヤマザキマリさんご自身もまた、国境を越えたダイナミズム溢れる人生を歩んできた方でした。

 

 

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累計900万部突破のベストセラー『テルマエ・ロマエ』(ビームコミックス)。「日本の銭湯からローマ人がバッシャーっと出てくる画面がふと浮かんで、その絵を漫画家の友だちに見せたら大うけで」。時空を超えた奇想天外なストーリーは、そこから始まった。

 

「音楽家の母に連れられ、妹と3人で東京から北海道の団地に移り住んだのが5歳のとき。母は当時には珍しい働くシングルマザーで、私たち家族は団地でもかなり浮いた存在でした。それでも母は『他人の目なんて気にしなくていい』と意に介さず。周囲と違うことに後ろめたさや引け目を感じることもまったくなく、『私は私、人は人』と飄々とやり過ごしていましたね。とにかく型破りな人で、 “母とはかくあるべし”というものがないんでしょう。だからこそ、英語もろくに話せない14歳の私にヨーロッパをひとり旅させるようなことができたんだと思います」 

リヨンからケルンに移動するとき、このまま野垂れ死にしてしまうのではないかと不安だったそうですが、ふと「頼れるのは自分しかいない」という気持ちが湧いてきたのだと言います。

「人間、苦境に置かれなければ、生まれてこない感情、自分への信頼感というものがある。それをつかみとるには、自分で動いて痛い思いをしたり、傷ついたり、恥をかいたりするしかない。失敗を恐れて動き出せない人は、自分の中で全部をやろうとしているんじゃないでしょうか? もうダメだと追い込まれたときこそ、世界に向かって自分を開いていったほうがいい。もし今いる環境にプラスになるものがないのなら、歩き出すしかないんです」

 

『暮らしのおへそVol.21』より text:和田紀子 photo:興村憲彦

Profile

ヤマザキマリ

Yamazaki Mari

1967年東京生まれ、北海道育ち。17歳でイタリアに渡り、フィレンツェの美術学校で油絵と美術史などを学ぶ。1997年に漫画家デビュー。イタリア人の比較文学研究者との結婚を機に、シリア、ポルトガル、アメリカで暮らし、現在は北イタリア在住。『テルマエ・ロマエ』がベストセラーとなり、一躍人気漫画家に。http://yamazakimari.com/

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