リアルな生活から生まれる器Vol.2 器作家 イイホシユミコさん
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今、大事にしているのは、自分で器を「使う」こと。
サンプルづくりなどで、「毎日、デッドエンドと戦っている」
と笑うほど忙しい中、買い物に行き、どんなに簡単でも、
自分で作ったおかずを器に盛りつけます。
「食材を選ぶところから、ものづくりが始まっていると
思っています。旬の野菜と言っても、新たな種類が出てきたり、1年前と品揃えがガラリと変わりますよね。
器の上に何をのせ、どんな表情になるか。
それは、リアルな生活をしていないとわからないんです」。
今、プロダクトで作ろうと、試作を重ねているのは、
紫色の器なのだとか。
「ホワイトシチューなどを食べる紫色の器が
あったらいいなあ〜と思って」。
仕事中心の生活では、愛車での移動が息抜きのひととき。
時折車を飛ばして映画のレイトショーを見たり、
知人とおいしいものを食べに行く夜も。
イイホシさんの「おへそ」は、
たくさんあるわけではありません。
でも、朝食はカリッと焼いたトーストだけでいいと
決めることも、旅に持って行くのに、
「モンベル」の真っ赤なポーチを選ぶことも、
ささいなすべてが過不足なく、イイホシさんらしいのです。
「今、こういう状態で、こういう理由だから、
コレをしている」。イイホシさんが、やりたいこと、
やっていることを語る言葉は、とても明確です。
「これ」と決めることは「あれ」を切り捨てる
作業でもあります。もしかしたら、間違いかもしれないし、
1年後には気が変わるかもしれない。
でも「今はこれ」ときっぱり!
だからこそ、もし間違えても、どこが違うかを理解でき、
次の一歩を踏み出すことができます。
「ろくろの上に土を置き、手を添えれば、
器らしきものはできます。だからこそ、
ちゃんとした意志を持たないと」。
インターエフエムをかけて、仕事を始める…。
朝日の中でろくろに向かうイイホシさんを支えているのは、
どんなに迷っても、
言い訳しないで前へ進む決意のようでした。
text:一田憲子 photo:有賀傑
Profile
イイホシユミコ
器がツールとなってそれぞれの人の想いが浮かんでくるような作品を手がける。手作りのものは作り手の手跡が残らないように。プロダクトのものは味気ないものにならないように。「手作りとプロダクトの境界にあるもの」がコンセプト。東京と大阪に直営店がある。http://www.y-iihoshi-p.com
肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。