「FLW」デザイナー・大橋利枝子さん【前編】「オリーブが好きだったっていう人は、みんなロマンチック」
そばかすがチャームポイントになることも、かごのかわいさも、公園で食べるサンドイッチのおいしさも。大事なことはみんなオリーブに教わった。80年代、90年代、少女たちに熱狂的に支持された雑誌『オリーブ』。その熱狂をつくり出していた、素敵な先輩を訪ねます。
text:鈴木麻子
「オリーブは物ではなくて、スピリットなんですよね」。
大橋さんが考えるオリーブ的な物をひとつ教えてくださいという問いに、スパッと返ってきた答えです。ボーダーシャツ、ベレー帽、かご、コンバースのスニーカー………。“This is オリーブ”な物は、いくらでも思い付きます。でも、オリーブが少女たちに見せていたのは、物だけにはあらず。物の奥に見える物語だったようです。
「オリーブでファッションページをつくるときは、映画をつくるみたいな感じで“主人公の女の子はこういう子”みたいな設定を決めて、コーディネートを考えていたんです。この子は本を読むのが好きとか、ピーチティーをよく飲んでいる、とかね。そんな女の子だったら、この靴を合わせるなとか、こんな髪型にしているかなとかイメージをふくらませていくわけです」
本もピーチティーも、誌面に直接出てくるわけではありません。でも、その背景があることで、登場するアイテムには意味が生まれ、独特の世界観がかもし出されていくのです。
「そういうやり方をしていたのはオリーブ特有じゃないのかな? それって、オリーブの源流ともいえる、スタイリストの大先輩・近田まりこさんがしていたことを、みんなが倣ってしていたんです」
オリーブという雑誌が、いろいろな人に影響を与えたということは、すごくよくわかると大橋さん。仕事などで知り合う中で「いいな」と思える人は、かなりの確率で「オリーブが好きだった」人なのだそう。「女性に限らず男性もそう。そういう人って、みんなすごくロマンチックで、物やお店、人の奥にある物語が好きなんですよね」
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<大橋さんから見せていただいたアイテム>
↑ オリーブ時代にスタイリストの先輩・吉本由美さんから譲り受けたカフェオレボウル。
↑ 「オリーブはスピリットだから」という大橋さんに無理をいって選んでもらった“オリーブ的なもの”が、10年もののセントジェームスのボーダーカットソー。「今はもう着ないけれど、なんだか手放せなくて……」
↑ 画家・中原淳一さんが編集長となり、昭和30年代に発行されていた、少女向けの雑誌。「こんな雑誌をつくろう」と、オリーブも始まったのだとか。オリーブが目指していたスピリットがそこかしこに。
Profile
大橋利枝子
1980年代後半~90年代前半の『オリーブ』にてスタイリストとして活躍。2012年からリネンブランド「FLW」のデザイナーとしても活動。
3/18に『FLWのソーイング&スタイル』(文化出版局)を発売予定。3/19(土)~26(土)に、東京・吉祥寺「ギャラリーフェブ」で出版イベントを開催。本に載っている服を一部販売、春物の受注展示会を開催。
http://www.foglinenwork.com/flw/
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