生誕20周年記念展示「ヨハンナ・グリクセンのある暮らし」を訪ねて
フィンランドを代表するテキスタイルデザイナー、ヨハンナ・グリクセン。彼女の代表作“ノルマンディ・コレクション”が生まれて今年で20周年を迎えました。経糸と緯糸が織りなすシンプルで美しい幾何学模様は、「暮らしとおしゃれの編集室」の読者の中にもファンの方が多いかもしれませんね。実は編集人のウメダもそのひとり。この秋、20周年を記念した展示「ヨハンナ・グリクセンのある暮らし」が開かれると聞き、会場のひとつとなった東京・渋谷の「haus&terrasse(ハオス&テラス)」を訪ねました。
ふだんはギャラリースペースになっている2階に上がると、目に飛び込んできたのはタペストリーが印象的なリビングスペースです。ここは来日したヨハンナ・グリクセン自身がプロデュースした空間。家具やテキスタイルの配置はもちろん、窓辺に飾った花もヨハンナさん自らフラワーショップで選び、しつらえたそう。
くるりと振り返ると、今度は4人掛けのダイニングテーブルが。プレイスマットや椅子の座面にさりげなく散りばめられたテキスタイルが、あたたかな食卓を演出しています。ヨハンナさんはご自宅でもヴィンテージ家具を愛用していて、ご自身の作品と「Alvar Aalto(アルヴァ・アアルト)」の家具のコーディネートを楽しんでいるそう。さらにテーブルの上に置かれたカトラリーはヨハンナさんがご自宅から持ってきた”私物”と聞いて驚きました。まさにここは「ヨハンナ・グリクセンのある暮らし」を体感できる空間なんですね。
新作”オセアニード”は、”アアルトスツール”の座面のラウンドシェイプから着想を得たといいます。丸形のクッションは椅子の座面にぴったり。家具とテキスタイルのコーディネートで新たな魅力が広がります。
今回、改めて「ヨハンナ・グリクセン」のテキスタイルに触れて、経糸と緯糸を交差することで生まれる織物の奥深さに圧倒されました。例えば、上の写真のパターンは、数mm~数cm単位で青と白の配色を変えることで完成しますが、それが寸分の狂いもなく繰り返されてあのシンプルで力強い幾何学模様が生まれるのです。
その緻密な制作過程の一旦に触れられるのが、こちら。ヨハンナさんの制作ノートやパレットの実物を展示したコーナーです。ノートの中には、パターンを作る際の数式やイメージスケッチ、織サンプルがギッシリ。「ヨハンナ・グリクセン」ならではの美しくも力強いテキスタイルは、高度な織の技と同時に、精巧な”設計図”によって生まれるんですね。通常の展示では、おそらく厳重に保管ケースに入れられるであろう貴重な資料をこんなに間近に見られるなんて! と大興奮。
期間中、1階のショップスペースはヘルシンキの旗艦店さながら、「ヨハンナ・グリクセン」のアイテムで埋め尽くされました。ファブリックはもちろん、クッション、バッグ、ポーチまで、東京でこれだけの品揃えが見られるのは初めてかもしれません。
「ヨハンナ・グリクセン」の世界をたっぷり堪能できる今回の展示、東京での開催は終了してしまいましたが、この後、神戸、香川、福岡などを巡回する予定です。20年という長い歳月、真摯に物づくりを続けてきたヨハンナさん。残念ながらご本人がいらしたレセプションには出席できませんでしたが、展示そのものからヨハンナさんのお人柄が伝わる、親密であたたかな空気が流れていました。ぜひ皆さんの街でも、じっくりと「ヨハンナ・グリクセンのある暮らし」を体感してみてくださいね。
photo:岡 利恵子
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