禅僧・南直哉さんに聞きました。人生後半戦、心を平穏に保つ習慣とは?Vol.2
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「お釈迦様は”一切皆苦”とう言葉を遺しました。
生きるというのは切なく苦しいものだということです。
坊さんになって、法話やブログなどを通して自分の話をするようになると、
自分のような“生き難さ”を抱えた人たちの存在に気がつきました。
幸せな人でも、生き続けていれば、仕事や健康を失ったり、
大切な人との別れがいずれやってきます。
私は、仏教とは、そんな切ない人生を
なんとか工夫して生き抜くための道具だと考えています」
人生は苦、と聞くと、日ごろから仏教に親しんでいない私たちには耳慣れず、
悲観的に聞こえてしまいます。でも、人生は思い通りにならないもの、
という前提に立って物事を考えてみると、違った視点が持てるはずです。
南さんは、問題を抱えている人が連絡をしてくれば、断わらず、
会って、話をするということを続けてきました。
「もう20年にもなりますか。まあ問題を抱えているならお互い様ですから」
話を聞いてみると、解決の糸口は身近なところにあることが多いそう。
感情を冷やす方法
「たいていは人間関係の悩みですがね、
ほとんどの人は、感情が邪魔をして、自分の状況を把握できていません。
これがまずい。家族の問題で多いのが、
自分さえ頑張ればなんとかなる、と抱え込むことで、
逆にこじれてしまっているケースです。
大事なのは頑張ることではありません。
感情と問題を切り離して、
不具合がどこなのかを冷静に見ることです」
ときには愛とか思いやりでさえ、事態をこじらせてしまうそう。
でも、どうすれば冷静になれるのでしょうか?
「感情を冷やすという方法があります。坐禅がいい方法ですが、
やりやすいのは、既に読がだ本をぱらぱらとめくったり、
絵本やアルバムを見ること。近所を散歩するのもいいでしょうね。
難しい本や面白い本など、興奮したり考え込んだりするものはダメ。
これを習慣にできたらなおいいですね」
感情を冷やすとは、色々な感情が渦巻く心を平らに戻すような感覚でしょうか。
グラウンドをならすイメージと考えたらいいのかもしれません。
photo:枦木功
Profile
南直哉
1958年長野県生まれ。早稲田大学卒。百貨店勤務を経て84年曹洞宗において出家得度。福井県永平寺で修行の後、現在は福井県霊泉寺住職、青森県恐山菩提寺院代(住職代理)。『語る禅僧』(ちくま文庫)、『禅僧が教える 心がラクになる本』(アスコム)他著書多数。
肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。