後藤由紀子さん【後編】本を書くのは、小さくても確かなことを伝える作業

仕事の壁、暮らしの壁
2018.05.18

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最近は、雑誌などの取材を受けたり、本を書いたりすることも多くなった後藤さん。「何かが得意なわけでもなく、上手にできるわけでもない。そんな人の話を聞きたい人がいるのかしらと、最初は尻込みしていました。でも、あるとき思ったんです。20年以上続けてきた主婦業、母親業は、すごく小さいけれど、私にとっては何よりも確かなこと。それを、そのまま伝えることだったら、私にもできる、と」

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その、“小さくても確かなこと”を伝えることで、少しでも誰かの役に立てるのなら……そんな思いで取材の依頼を引き受け、真正面から向き合い、嘘のない言葉で伝えてきました。その際、後藤さんが意外なほどの頑固さで守っていることがあります。それは、“自分が普段している以上のことを言わない”こと。

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たとえば、「丁寧な暮らしをしている後藤さんに……」と声をかけられたら、「いえいえ、私、まったく丁寧ではないんです。実際はこんな感じですよ」とありのままを見せる。そこで、一つ仕事がなくなっても構わない。とにかく、本当のことだけを伝える。そこは、一貫しているところです。

「まったく私なんて、こんなもんですよ。自分のサイズは、自分が一番よく知っています。背伸びする必要なんて、ぜんぜんない。だから、最初から全部見せてしまうんです」

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つい、抱いてしまいがちな、“本当の自分より、ほんのちょっと、よく見せたい”というよくばりな気持ち。そんなささいな見栄は潔く捨て去って、自分のサイズを見誤らなければ、生き方はぐんと軽くなるようです。

「欲がないっていうか、覇気がないっていうか。自分に自信がないんですよ。これまで、人生で『勝った!』なんていう経験はないものね。そもそも負けず嫌いでもないですし。いつも壁にぶつかっている状態が当たり前。でも、それも含めて私だから、きちんと受け止めて、そのうえで自分らしい生き方、暮らし方を見つけていけばいいんじゃないかなって、楽観的に考えています」

 

<後藤由紀子さんのこれまでの歩み>
22歳  人気雑貨店「ファーマーズテーブル」で働く
24歳  実家のある静岡・沼津へ
26歳  結婚して専業主婦に
28歳  長男を出産
30歳  長女を出産
32歳  髄膜炎にかかり1か月入院
34歳  器と雑貨の店「hal」をオープン
37歳  雑誌『ナチュリラ』の表紙に登場して話題に
40歳  初の著書『「hal」日和』(主婦と生活社)を出版
48歳  子離れし、東京での仕事も少しずつ増える

 

text:福山雅美 photo:砂原文

 

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→より詳しく読みたい方は、ナチュリラ別冊『幸せに暮らすくふう』をご覧くださいね

Profile

後藤由紀子

Yukiko Goto

静岡・沼津で器と雑貨の店「hal」を営む。暮らしの中で自分が心から「いい」と思ったもののみを店に並べる。二人の子供は、大学生と短大生となり、子育てもひと段落。暮らしの工夫や気づきを綴った飾らないエッセイも好評。『後藤さん、今日はどちらへ? 地元な暮らし 』(大和出版)など著書多数。http://hal2003.net/

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

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