マエダサチコさん【前編】参考書がないなら自分で実験して編み出す

仕事の壁、暮らしの壁
2018.07.10

この連載では、「ナチュリラ」で人気のおしゃれさんたちに、こんな質問をしてみました。「いままで仕事をし、暮らしてきた中で、ぶつかった壁、悩みは何ですか? どのように乗り越えましたか?」
今回登場していただくのは、キャンドルアーティストで「Candle.vida」を主宰するマエダサチコさん。驚くような技術でアートキャンドルを作るときも、常におだやかな表情なのが印象的です。マエダさんにとって「壁」とは、ぶつかるものではなく、ぶつかる前に手を打って、横をすり抜けるもの。そんな、ちょっぴり個性的な悩みの解決法を教えていただきました。

text:福山雅美 photo:砂原文

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実際に触れるまで、キャンドルでできているとはとても信じられません。バラの花びら一枚一枚の、繊細な重なり。小さいのに驚くほど精緻に形づくられたマーガレット。アートキャンドルの製法に関する数々の特許を持つマエダさんは、「もしかしたら私、世界で一番ロウのことを知っているかもしれない」と笑います。なぜなら、「それだけ、たくさんのことを調べ、実験してきたから。そして、誰よりもたくさん作ってきたから」

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キャンドルに興味を持ったのは、小学生時代の理科の実験がきっかけ。「仏具ロウソクを使って融点を調べる実験で、卵の殻にクレヨンで色をつけたロウを流して、キャンドルを作ったのが面白くて」

その後、自分でも作ってみようと思ったマエダさん。当時は、書店に行ってみても料理のレシピや園芸のように、キャンドルの作り方が載っている本はありませんでした。けれど、そこは根っからの凝り性で研究家気質。花に興味を持てば、その構造を知りたくてピンセットで花びらを一枚ずつ外して分解するし、パンの膨らむ原理を知りたくなれば、家族に「もう、いい加減やめて」と言われるまで毎日焼き続けるという性格。

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もちろん、キャンドルにも没頭します。手本がないなら、自分で実験して作り方を見つければいい。どの温度で溶かすのがベスト? 固まるまでの時間は? 思うような形を作るには? いろいろ条件を変えながら、来る日も来る日も、キャンドル作り。
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「ソイワックス、パラフィンワックス、ミツロウなどロウの種類によって融点が違うし、同じソイワックスでもクリーム、ハード、ソフトと、タイプによって扱い方も変わる。ロウを薄くのばすときは、気温によって固まる時間も変わるから注意が必要なんです」……当時、参考書さえなかったアートキャンドルの技術は、この10代の女性によって、少しずつ体系化されていったのです。

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その後、作品は高い人気を得て、個展や店舗のディスプレイなど活躍の場を広げ、講師を養成するスクールを開くまでに。新しいことを次々とこなしていくマエダさん。その過程で、うまくいかなかったことや、悩んだことがあるのではないかとたずねると、返ってきた答えは、「悩んだこと……実はないんですよね。壁ができたときは、悩むんじゃなくて、すぐに解決法を探るほうに意識を向ける感じでしょうか」

困ったことがあっても、しゃがみ込まない。すぐに「じゃあ、どうすればいい?」と具体的な自分の動き方を考える。悩むだけで状況がよくなることはまずないけれど、たいていのトラブルは、早いうちに手を打つほど、ダメージをより小さくすることができます。

「生きていれば、ときに悪いことが起こるのは仕方のないこと。それは受け入れる一方で、そんな状況がずっと続くわけではないと、どこかで思っているんです。そうやって楽観的に考えれば、一歩引いて、むしろ冷静にものごとに当たれるでしょう?」


→後編へ続きます

→より詳しく読みたい方は、ナチュリラ別冊『幸せに暮らすくふう』をご覧くださいね

Profile

マエダサチコ

Sachiko Maeda

キャンドル教室「Candle.vida」主宰。独創性のある作品で注目される。2013年にアートキャンドル協会を設立。キャンドルの花器と生花と組み合わせる「ワックスコーディネーター」の教室が話題に。2018年8月に、ア―トキャンドルの制作技術をまとめた著書を出版予定。
http://www.candlevida.com/
Instagram「@candle.vida.maeda

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