内田彩仍さん【前編】 うまくできないからこそ、一つ一つのことを丁寧に

仕事の壁、暮らしの壁
2018.09.10

この連載では、「ナチュリラ」で人気のおしゃれさんたちに、こんな質問をしてみました。「いままで仕事をし、暮らしてきた中で、ぶつかった壁、悩みは何ですか? どのように乗り越えましたか?」
最終回を飾っていただくのは、内田彩仍さんです! いつも、ふんわりとしたやさしい表情で、なんでも完璧に、素敵に、しっかりとこなしている内田さん。でも実は、「結婚したころは、何をするにも上手にできなくて。だから、まずは自分ができることに一つ一つ丁寧に取り組んで、それを、積み重ねるようにして、前に進んできました」と、意外な“若いころの壁”を教えてくれました。

photo:大森今日子


「朝、夫と元気に『おはよう』と言い合える毎日を平穏に送れたら、もうそれだけで十分なのです。ただ、そういう“普通の毎日”を送るためには、少し手をかけることも大切で……」。なるべくなら部屋をきれいにしておきたいし、毎日の食事も大事にしたい。でも若いころは、いまのように家事をささっとこなすことができません。

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そこで内田さんが意識したのは、「洗濯や掃除は、よりきれいになるように考えて、くふうしよう」「食事は、わが家の味を決めてみよう」と、一つずつ考え、楽しみながら進めること。わからないことは両親や義母に聞いたり、本や雑誌を参考にしたり。そんなふうに時間をかけてやってきたことがいま、内田さんの心の糧になり、本を書くという仕事にもつながっています。

「はじめて本のお話をいただいたときは、ただただうれしくて。でも、小心者の私は、すぐ不安になりました。自分も本が好きで、読むのを楽しみにしている一人。それだけに、書くほうの立場になって改めて考えると、普段していることを、どのようにまとめたらいいのだろうと、戸惑ってしまって」

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その不安を払拭し、頭の中を整理するため、内田さんは“カードブックを作る”という方法を思いつきます。本作りを始める前に、まずは一緒に歩んでいく編集者やカメラマンに、日々自分がしていることをわかってもらえるよう、きちんと伝えるのが大事だと考えたのです。持っていたカメラで自宅のインテリアや雑貨を撮り、パソコンを使って何十枚ものカードを作成。いつも大切にしている思いを、文章にして添えました。1か月ほどかけて作ったそのカードブックは、編集部でも話題になり、すぐに企画会議を通過。それをもとにして、はじめての著書を作り始めることとなります。

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足を踏み出すことができたのは、カードブックを作ったことで、「いつもしていることを、大きくも小さくもせず、ありのままに書けばいい」ということに気づけたから。それなら、大げさに見せる必要もなく、素直に無理なくできる。もし書いた原稿に迷いが出たら、一番身近にいて、一番自分のことをわかってくれている夫や友人に読んでもらえば、大丈夫。そう思うことで、前だけを見て進めるようになったのです。

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→後編へ続きます

→より詳しく読みたい方は、ナチュリラ別冊『幸せに暮らすくふう』をご覧くださいね

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Profile

内田彩仍

Ayano Uchida

福岡県在住。夫と愛猫・クリムと暮らす。ていねいな暮らしぶりや素敵な着こなしが注目を集める。主な著書に『季節の暮らしと服支度』、10月には新刊『いとおしむ暮らし』(ともに主婦と生活社刊)が発売される予定。

 

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