歩くことは思考の時間 vol.4 小島 聖さん
家族3人で
1600メートル級の低山に登りました。
私が小さい頃、両親と一緒に登った山です。
ほとんど記憶にはないのですが、体に刻まれていたものが、
今こうして私のなかによみがえり、細胞を駆り立てる。
子どもの頃の経験は大事ですね。
山に行くようになって、自分のなかの何かが変わったということはありますか? と聞いてみました。
山と街を行き来するのが
自分にはちょうどいい
「山にのめり込んでいたときは、もう余計なものはいらないと断捨離的なこともしました。自分のまわりにものがあふれていると、体まで太ってしまうような気がして。それらを全部手放して、もっと身軽に、シンプルに生きたいと。でも、やっぱりファッションも好きだし、映画や舞台を観たり、美術館に行ったりすることも手放したくない。自然と街の両方を知っていて、それを行ったり来たりするのが私にはちょうどいいのかなと。どんな環境でも生きていけるという自信はつきましたが、やっぱりベースは街がいい」
山に登るようになって10年ちょっとが過ぎ、山とのつき合い方、遊び方も次第に変わってきたと言います。そして、小島さんは昨年に出産。
「今は完全に子ども中心の生活で、本格的な山歩きはできないけれど、月に一度くらいは家族3人で日帰りで低山に行き、頂上でお弁当食べて帰ってくるということはしています。18歳のときから毎朝30分、5キロ続けているジョギングも、今は時間を見つけるのがなかなか難しくて、べビーカーを押して長い距離を歩くことが運動代わり。歩くことはどんなときでもできますから。作家のヘンリー・ソローを考察した今福龍太さんの本の中に、こんなくだりがあります。”歩くことは、空間の移動であることを越えて、認識の大きな飛躍をもたらす身体知の技法でもあった”と。まさにそうだと思うんです。歩くことは思考の時間。歩くことで考えがまとまったり、ふと何かを思いついたり。歩くことで自分が解放されて、直感的になるのかもしれません」
今は穏やかに山や自然とつき合っているという小島さん。自然は常に変化し、小島さんも家族も変化する。その変化のなかで、その時々の自然を楽しめばいい。自然との付き合い方には正解はないのです。
「暮らしのおへそ Vol.26」より
photo:在本彌生 text:和田紀子
Profile
小島 聖
東京都生まれ。1989年に女優デビュー。1999年、映画「あつもの」で第54回毎日映画コンクール女優助演賞を受賞。コンスタントに映像作品や話題の演出家の舞台にも多数出演。国内にとどまらず、海外の山にも登るのが好き。料理やアウトドアに関するライフスタイルでも注目されている。
http://blog.honeyee.com/hkojima/
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