坂井真紀さん特別インタビュー【前編】 映画『駅までの道をおしえて』で演じた役と“お母さん”の自分を重ねて

スペシャル企画
2019.10.18

直木賞作家・伊集院静氏の名作『駅までの道をおしえて』が満を持しての映画化。10月18日(金)から公開となります。物語の主人公は、愛犬の帰りを待ち続ける8歳の少女と、先立った息子との再会を願う老人。さびしい気持ちを胸に抱える二人は出会い、一緒の時間を過ごす内に思いがけない友情で結ばれます。そして、大事な何かを探す旅で出会った奇跡とは……。逢いたい相手がいるすべての人に贈る、新たな希望と出発のストーリーです。

主人公の少女の母親役を演じた坂井真紀さんは、『ナチュリラ』で過去何度も表紙と巻頭を飾ってくださいました。今回は久しぶりに坂井さんにお会いできるということで、編集部もワクワクしながらお話を伺ってきました!

photo:近藤沙菜 text:津田美咲
stylist:伊藤信子 hair&make-up:ナライユミ

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暮らしとおしゃれ編集室(以下、編):坂井さん、大変ご無沙汰しております。『ナチュリラ』に最後にご登場いただいたのが、なんと8年前でした! 久しぶりにお目にかかれて、とても嬉しいです。本日はどうぞよろしくお願いします。

坂井さん:もう8年も経ちますか! とても感慨深いですね~。こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。

編:早速ですが、今回主人公サヤカの母親役を演じられた、映画『駅までの道をおしえて』の中で、一番思い出に残っているシーンを教えてください。

坂井さん:サヤカ役の新津ちせちゃんと母親役の私、父親役の滝藤賢一さんの家族3人の自宅でのシーンは、サヤカが育った環境を表す大事なシーンだと思い、大切に演じましたので、すごく思い入れがあります。サヤカの成長の様子が垣間見られる場面でもあります。あと、サヤカが走ったり、犬と戯れたりするシーンも映像がすごくきれいで。一生懸命生きている、人生を歩んでいる感じが、何とも言えず純粋でキラキラしていて眩しくて、とても良かったですね。

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編:主人公のサヤカちゃんは8歳で、坂井さんのお子さんと同じくらいの年齢かと思います。サヤカの母親役を演じるにあたり、どんなお気持ちでしたか? 

坂井さん:私の娘と同い年なこともあり、役にはすっと入りやすかったです。男の子の母親役を演じるのであれば、「私に男の子がいたら、きっとこんな感じなんだろうなぁ~」と想像を膨らませるしかありませんが、女の子は少し想像の範疇です。ただ、それぞれの家庭で夫婦間や子どもとの距離感は違うので、日常の延長線上のようで、別世界ですよね。

編:子どもとの距離感でいうと、この作品では、両親がちょっと見守るタイプなのかなとお見受けしました。

坂井さん:そうですね。子どもを信頼して、いかに見守れるか、待つことができるかどうかは、私自身にとっても課題です。心配になってしまい、先んじて声をかけたり、手助けしてしまったり……。それが本当にいけないと日々反省しているので、「サヤカのお父さんとお母さんはとても勇気があるな、こういう家族いいな」と演じながら思っていました。


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編:父親役である滝藤さんと母親役の坂井さんが夫婦で食事をするシーンでは、黙々と箸を進めて最後に二人がぽつりと「えらいな」と言います。サヤカの成長に対するその一言に、両親の愛情が全て詰まっていると感じました。

坂井さん:私も自分の娘を見ていて、その成長は自分の想像をどんどん超えていきますので、「えらいな」と思わず言ってしまう気持ち、とてもよくわかりますし、我が子をずっと見つめてきたからこその言葉ですから、本当に愛情を感じますよね。

編:逆に、サヤカの母親役を演じていて、自分とは違うなと感じる部分はありましたか?

坂井さん:サヤカのお母さんは、自分をしっかり持っているし、どんと構えているので、かっこいいなと思います。私はいつもテンパっていることが多いので(笑)

編:映画の中では、ミシンを使いサヤカに洋服を作ってあげるシーンがありましたが、坂井さんも実際に何か手作りはされますか?

坂井さん:幼稚園に持っていく用のカバンを作ったことはありますが、四角いものしか作れないんです(笑)なので、洋服を作ることには憧れます。


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編:今回は女の子とペットの触れ合いが映画の軸となっていますが、坂井さんご自身はお子さんのころになにか飼っていましたか?

坂井さん:猫を飼っていました。

編:坂井さんは猫派なんですね! イメージあります(笑)。当時、ペットを飼うことで、子どもなりに何か気づきや学びはありましたか?

坂井さん:猫を飼うきっかけは、父親が野良猫を家に招き入れたことです。ペットとの日々は学びが多いですよね。ペットではないのですが、ケガをしている子猫を拾った時があったんです。子どもだったので、どうしたらいいかわからなくて。「動物のお医者さんはお金がたくさんかかる」と両親に聞かされてもいましたし、自分のお小遣いでは動物病院で診てもらうことはできないと思っていましたが、泣きながら獣医さんの元へ連れて行ったんです。すると、その獣医さんがとても優しい方で、タダで治療をしてくださって、ホッとしてまた涙が出てきたのを覚えています。その時は無我夢中でしたが、振り返ってみると、子どもでも命を目の前にすると積極的に考え、一人で動くことができるんだなと思いました。サヤカも愛犬ルーの死を経験して、初めて命というものを実感し、また命の終わりを知ることで、大人へと一歩成長をしましたよね。

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編:最後に、この映画の一番の見所を教えてください。

坂井さん:私たちが日々見過ごしてしまっている、大切なキラキラした日常がたくさん詰まっています。原作者の伊集院静さんがコメントを寄せてくださっていましたが、命は忘れなければ、ずっと私たちの心の中で生きている、と。これはこの映画のテーマであると思っています。そして私は、少女が犬と一緒にただただ走るというシーンを見て、生きていることを強く実感し、命の尊さを改めて心に刻みました。多くの人がなんだかんだと忙しない日常を送っていると思います。その中で、命の大切さや日々の小さな幸せなどに改めて気づくことができる映画なのではと思います。

編:母親役を演じてみて、そしてお母さんとしての坂井さんのお考えなど、たくさんのお話をありがとうございました。後編では、プライベートの坂井さんやおしゃれに関することをたっぷり伺います!

→後編はこちらから


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「駅までの道をおしえて」
10月18日(金)より全国公開
企画・製作:GUM、ウィルコ  
配給・宣伝:キュー・テック
©2019映画「駅までの道をおしえて」production committee

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