心震える器と出会い、44歳でお店をオープン vol.1 「サビタ」主宰 吉田真弓さん
吹き抜けの店内には、大きなガラス窓から柔らかな光が降り注ぎます。器、キャンドル、上質な洋服やブランケット。店内に並ぶものを眺めていると、ものが持つ凛としたエネルギーに刺激され、心が研ぎ澄まされていくよう。
吉田さんが、このギャラリー「sabita」をオープンさせたのは、今から11年前のことでした。
「雑誌で陶芸家、安藤雅信さんのオランダ皿を見たんです。あまりの美しさに心が震えて。この器を扱うお店がやりたいと強く思いました」と語ります。
たった1枚の器との出会いで、行動を起こす……。吉田さんのアンテナの感度のよさと、想いを行動へと変換する回路の速度には驚くばかり。話を聞いてみると、そのアンテナはごく若い頃から性能が抜群だったよう。
「小学生の頃『野生のエルザ』の映画が大好きで、どうしてもケニアに行って動物園でない場所で野生の動物が見たい!と思ったんです。高校生卒業後、たったひとりでツアーに申し込んで行きましたね」と笑います。
高校時代に教科書にのっていたマティスの絵に魅せられて、展覧会があると知ると札幌から東京の美術館へ。さらに新婚旅行では、迷わず「イタリアのマティスが設計したロザリオ教会に行きたい!」と提案したのだとか。
一度心に刻んだことを持ち続ける持久力こそ、吉田さんの思いが本物である証。実はそのときの新婚旅行には、おまけのエピソードがありました。
「イタリアの小さな雑貨屋さんに立ち寄りました。オーナー夫妻は旅行好きで、世界中を巡って好きなものを仕入れていたんですよね。わあ、世の中にはこんな仕事があるんだ。いつかお店ができたら……と胸の中に小さな種が落ちた感じかな」と吉田さん。
vol.2につづく
『暮らしのおへそ』vol.21より text:一田憲子 photo:枦木 功
Profile
吉田真弓
東京のスタイリスト専門学校で学んだ後、北海道に戻り、アーティストでありデザイナーとしても活躍するご主人吉田茂さんと結婚。44歳の時に陶芸家、安藤雅信さんの器をメインに取り扱うギャラリー「sabita」をオープン。2010年に札幌市郊外、円山公園近くに移転。カフェも併設した。
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