脇 雅世さんvol.1 「たんぱく質中心の糖質オフに挑戦中」

大人暮らし これからの食卓
2019.12.02

子どもが独立して、夫婦ふたりの生活に。仕事や暮らしのスタイルを今の年齢に合った形に変えようと思いつく……そんな人生の節目は、ふとした瞬間に訪れます。これからの日々は「のんびり自分流に」と、暮らしや考え方を切り替える方も多いようです。特に個性が際立つのが、日々の食卓。体調や食の好みが変わってくる年代に差しかかることもあり、心も体も健やかに過ごせる“今の自分にちょうどいい食事”が、それぞれ定まってくるのかもしれません。
そこで「暮らしとおしゃれの編集室」では、食まわりの仕事をする素敵な先輩方に、年を重ねた今、日々の食卓にどんな変化があったかをお聞きしてみました。連載第6回は、料理家の脇 雅世さんが登場。『これからの暮らしと食卓』でも詳しくご紹介していますので、ぜひあわせてご覧くださいね。

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毎日の献立。その構成は食べるメンバーや家庭の状況で、ずいぶんと変わってきます。ボリューム満点? 野菜たっぷり? あっさり薄味? 

脇雅世さんの家も、ここ数年ですっかり食卓のありようは変わってきました。3人いた娘が、ひとり減り、ふたり減り……。いろいろ変遷があって、現在は夫婦と娘ひとりとなりました。夫婦だけだった時期もあり、「若い人がいないって、献立にも影響するんだなあと思った」と、振り返ります。

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「娘たちがいた頃より、完全に力を抜いていましたね。作るのは、素材中心のシンプルな料理。あれもこれもと入れないで、単一素材の料理が中心でした。たとえば夏、オクラ2パックを買ったなら、全部一気に電子レンジで熱を通して、ちょっと塩味をつけたものを作る。それに肉を焼いたのを合わせて、以上! みたいな(笑)。余ったオクラは、翌日に持ち越しです」

1日1つ、副菜を作り、余ったものは次の日に。その時にまた一品作れば、副菜は2つ。余ったぶんは翌日に持ち越し……と、献立の一部を重ねながら、まわしていました。

「常備菜というより、今まで作っていた分量が夫婦ふたりだと余るから、それがストックおかずになっていたという感じかしら」

食べ盛りの娘3人の心と胃袋を満たすべく、なんやかんやと多くの料理を作っていた〝アレコレ期〞。大人ふたりの、粗食を基本に時々ごちそうを楽しんでいた〝ホドホド期〞。そして今、脇さんの食卓は、新たなステージへと入っています。

「夫が、お腹が出ているのってかっこ悪いよねっていい出したんです」

その時だって、太るような食事を作っていたわけでありませんでした。でも、年を重ねるにつけ、基礎代謝が落ちてくるのは事実。かつてと同じものを同じだけ食べていたら、どんどん太っていくのだなあと、じわじわとサイズアップしてきたウエストに手をやりながら思いました。

さて、そこからさかのぼること数か月。脇さんは、ある健康食の本に出合います。そこには「MEC食」なる食事法が紹介されていました。

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「ミート、エッグ、チーズの頭文字をとってMEC(メック)。沖縄の離島にいる医師の書いた本でした。離島だと、夜中に救急患者が出ても本島の大病院に搬送できず困っていたんですって。そこで、何か根本から島民の病気を予防する方法はないかと、その先生が考えたのがMEC食。血糖値を上げないよう糖質のある食事を控えてたんぱく質を多く摂取。食べ物は30回嚙んで消化よく、というのが基本です。その方法を試したら、糖尿病や高血圧の患者さんの症状がかなり改善されたと書いてあったんです。ダイエット効果も期待できるとも」

そのことが頭の片隅にあった脇さん。夫の中高年太り対策に、「あれならできそう」と思い、始めてみることにしました。脇さんも一緒に、糖質を控える食事に挑戦です。

「ちょうど、夫婦ふたり生活の時でした。娘に気を使うこともないし、始めやすかったんですよね」

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炭水化物はすっぱりやめ、調味料も糖質の入っているソースや酒、みりんなどは不使用、大好きだった甘いものも口にしないという、かなり真面目な糖質オフ。そのぶん、肉や魚などのたんぱく質は多め、油脂もたっぷりとっています。

「この食事法は、最初はゆるくじゃなく、とことんやったほうがいいみたい。1か月くらい続けたら、かなり体がすっきりしてきて『あら、いいじゃない』って」

それから、1年半以上、今やMEC+野菜の献立は、当たり前のものとなっています。

「レシピ提案の仕事でも、使う食材や調理法など、何かしらの制約があったほうがやりやすいタイプ。逆に『なんでもOK』っていわれると困っちゃうんです。糖質オフも同じかな。これはダメという食材があると、献立を考えるうえで幅が狭まるので、案外ラクな気がします。ちょっとゲーム感覚というか。これがダメなら、じゃあこうしたらどうかとか、あれの代わりにこれを使ったらどうかとか……」


→vol.2につづきます

 

「“これから”の暮らしと食卓」より
photo:萬田康文 text:鈴木麻子

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Profile

脇 雅世

masayo waki

料理家。フランスで10年近く、料理を学んだあと、服部栄養専門学校国際部ディレクターを務める。その後、料理教室を主宰し、テレビや雑誌などで活躍。自身の経験を生かし、IH用の鍋や包丁など調理道具の開発にも携わる。

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

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