大森伃佑子さん【後編】「着物も洋服も同じクローゼットに入っているというのがコンセプト」

”オリーブ少女”の先輩に会いに行く
2016.06.27

そばかすがチャームポイントになることも、かごのかわいさも、公園で食べるサンドイッチのおいしさも。大事なことはみんなオリーブに教わった。80年代、90年代、少女たちに熱狂的に支持された雑誌『オリーブ』。その熱狂をつくり出していた、素敵な先輩を訪ねます。

text:鈴木麻子

前編はこちらから


パフスリーブ、かご、レースの付け襟、ワンストラップシューズ。たくさんの「ロマンチックなもの」を私たちのクローゼットに遣わしてくれた大森さん。大人になった少女にぜひ伝えたいことがある、と、またメラメラと熱い炎をたぎらせ取り組んでいるプロジェクトがあります。「DOUBLE MAISON(ドゥーブルメゾン)」です。

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ギンガムチェックやリボンの柄の浴衣、刺繍レースの縁取りの着物、リボンを結ぶだけで完成するつくり帯、リネンの足袋、ボーダー柄の鼻緒の下駄、もちろんワンピースやブラウスだって!! とにかく「ロマンチック」の限りを尽くしたかわいい“身につけるもの”をデザインし、発表しています。

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2016年夏の新作浴衣「ソレイユ」¥29,000。太いボーダーにカンカン帽のモチーフがふわりふわり。ストライプの帯、チェックの下駄と、何もかもが新鮮!

「着物と洋服、“身につけるもの”という大きな視点のなかでは一緒。だから、従来のルールに制約されない、生きたコーディネートを提案しています。着物も洋服も同じクローゼットに入っている、っていうのがブランドのコンセプト。お着物なんだけど、服地でつくったり、洋服と同じ感覚の柄に挑戦したり。でも普段、着物を着る方も満足して頂けるように、お仕立てはきっちりと。着物ってね、二十歳の子も八十歳のおばあさんも同じものを共有できるのが素敵だと思うんです。お洋服だといろんなジャンルやカテゴリーがあるけど、着物って型は一つでしょ?」


十数年前、アンティーク着物を取り上げ話題になったムック『KIMONO姫』。着物の世界に、ガーリーな世界観を持ち込んだのが大森さんでした。その仕事などで着物と深く関わるようになって、「もっとこうだったらいいのに」という思いがふつふつと湧き上がりました。50歳を迎えたそのときに、「ならば私が」と、衝動的にブランドは始まったのだといいます。

「50歳になって、いまだったらできるかもって思ったんです。40代までスタイリストの仕事もいい感じでやってこれたなと思う反面、50歳からの次のステージは同じようにはいかないだろうなっていう思いはあったんです」

それまでがすごく面白くて幸せだったから、そのままでもよかった。でも、まったく違うことの経験だったら、やってみてもいいかなと頭をよぎったのだといいます。だから、99.9%「無いな」と思っていたうちの残りの0. 1%に大森さんは賭け、動き出しました。

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綿麻の浴衣「ヴォーグ」¥29,000。古典文様の波に大きな帆船が浮かぶ、爽やかな一枚。麦わら帽子とのコーディネートもしっくりと。

「かわいい服があって、日常着もあって、フォーマルドレスもあって、その中に自然と着物も並んでいてほしいと願いを込めました。着物って、大胆にやりすぎるとアバンギャルドになってしまうから、トラディショナルをわかったうえ、リスペクトしたうえで、私らしさを取り込んでいく。たとえば、正絹の有名な着物で色数がすごくあるものがあるんですけど、私は真っ白でもいいんじゃないかって思っていて。お洋服だって真っ白があるんだし。そして、伝統的なそれをコンサバで着るのではなくて、ベルベットのコートと合わせたり、リボンの西陣の帯と合わせたり」

きっちりとルールが確立され「こうあるべき」と思考がかたまっていた着物の世界に、ガーリーな革命を起こしている大森さん。オーセンティックな着物の世界に「かわいい」の扉をいくつもつくり、着物のたのしみを私たちに教えてくれています。

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綿素材の着物「エイミー」¥59,000。脇から裾にかけて、ベルベットのパイピングが施してあるというガーリーな一枚。

「オリーブ時代も含め、私、熱いんです。でも以前とはちょっと変わったかな。暑苦しいばかりじゃ、人の心は動かないのね(笑)。50代って面白いですよー。年齢ってやっぱり武器になるのね。この人の話だったら、って人が耳を傾けてくれることが多くなった気がします。そういう生きやすさみたいなものは備わってきました。よく50歳にもなってブランドを始めたな~と思うけれど、どうしても日本の社会だと、60歳リタイアって多いじゃないですか? だったら、『この世代がいかないと』っていう思いもあったのかもしれない」

ショップを持たず、展示会やオンラインショップのみで展開してきた「ドゥーブルメゾン」が、この夏、2か月限定で京都にショップを構えました。空間の隅々にまで大森さんの魂が通った古いビルの一室で、大森さんの熱く雄弁な思いにどうぞ浸ってください。
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昭和初期に建てられた京都・河原町の寿ビルディングに、7月31日まで期間限定でショップがオープン。週末には大森さんが在廊することもあり、お見立てをしてくれるそう!

 

大森伃佑子さん【前編】はこちらから

 

第1回 大橋利枝子さんはこちらから

第2回 堀井和子さんはこちらから

第3回 山下りかさんはこちらから

第4回 湯沢薫さんはこちらから

「DOUBLE MAISON」京都期間限定SHOP

期間:6月3日(金)~7月31日(日)
住所:京都府京都市下京区河原町通り四条下ル市之町251-2 寿ビルディング 3F
営業時間:12:00~20:00
定休日:水・木曜日
お問い合わせ:TEL 080-7760-8833

Profile

大森伃佑子

Yoko Omori

雑誌『オリーブ』でスタイリストとして活躍。その後、様々なアーティストのスタイリングやCMを手がけるほか、『装苑』で連載をもつ。2012年には「DOUBLE MAISON(ドゥーブルメゾン)」を立ち上げ、ディレクションを務める。着物と洋服を「身につけるもの」という大きな視点でひとつのものと捉え、従来のルールに制約されないかわいいコーディネートを提案している。この夏には、2か月間限定で京都にショップをオープン。浴衣を中心に、ドゥーブルメゾンの世界観が存分に楽しめる。

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