ラクするおへそ ― 有賀 薫さん vol.1
時短や手抜きといった
ネガティブな発想ではなく
簡単でシンプルで豊かな食生活を
送るための提案のひとつがスープ。
毎朝スープを作る
スープは体に負担がなく、水分もたっぷりとれて、芯から温まる。「目覚めにちょうどいい食べ物だったからこそ、無理なく続いたのだと思います」
トマト味が軽やかなマンハッタンスタイルの夏のクラムチャウダー。材料はにんにく、玉ねぎ、じゃがいも、にんじん、ホワイトコーン、トマト缶、本場アメリカで使われているホンビノス貝。パセリやクラッカーはお好みで。
ある日は、じゃがいもとにんにくを切って水で煮て、牛乳を加えるだけ。ある日は、蒸し煮にしたキャベツにサバの水煮缶と水を加えて温め、みそを溶き入れるだけ。スープ作家の有賀薫さんが毎日SNSに投稿するスープは、少ない材料で手間をかけずに作れる簡単でシンプルなものばかり。でも、そのどれもが驚くほどおいしい!
有賀さんがスープを作りはじめたのは、息子が大学受験を控えた8年半前。朝たまたまスープを作ったら、寝起きの悪い息子がスープにつられて起きてきたのがきっかけでした。
「だったら毎朝作ろうと思ったんですよね(笑)。ちょうど子育ても一段落した頃で、そうすると人って何かに没頭したくなるんです。私にとってはそれがスープ作りでした。記録のつもりでSNSに投稿したら、コメントをいただけるのがうれしくて、だから続けることができたんでしょうね」
1年後、たまった写真を発表しようと「スープ・カレンダー展」を開いたら、仕事の依頼が来るように。
「最初からスープ作家になろうと思っていたわけではなく、単に楽しそうだったから始めて、たまったから発表しようとなって、そしたら仕事がもらえて、だったらスープを仕事にしようかなと。目標もコンセプトもまったくない。運がよかっただけだと思います」
有賀さんは、大学卒業後、玩具メーカーに就職しましたが、3年で退職してフリーランスのライターに。結婚、出産を経て、子育てをしながらライター業を続け、スープ作家になったのは50歳のとき。それまで料理の仕事をしたことは、まったくなかったとか。
「毎月『スープ・ラボ』というイベントを開いてウェブにレポートを発表するうち、次第に認知されるようになって、仕事が広がっていきました。でも、いざ料理の仕事を始めてみると、みなさん料理をしたくないと言うんです。大変だとか、好きだけど時間がないとか。だったら大変じゃない方法を考えればいい。女性が働くことが当たり前になった今、家庭料理はもっと簡略化されていくと思うんです。手のかかるものは外で食べ、家での食事は簡素なもので、ラクをすればいい。スープは、手抜きや時短といったネガティブな発想ではなく、シンプルで豊かな食生活を送るための提案のひとつです。温かいものが1品あると、人は満たされた気持ちになりますから。でも、レシピを発信するだけでは限界があると思ったんですよね」
自分を上手にゆるめる術をもつ
家でずっと仕事をしているからこそ
一日のなかに自分で句読点を打つことが必要。
時には、思いきりはじけることも。
ウォーキングで体と心をリセットする
何かを考えたいとき、行き詰まったときは、近所の公園をひたすらウォーキング。「歩くと体がすっきりするし、イメージもわいてくるんです」
3時に豆をひいてコーヒーをいれる
「豆をひくという作業が楽しい。ふだんとは違った動きがいいんでしょうね」。「スノーピーク」の手動のミルをコーヒーブレイクの相棒に。
休日のおやつタイムは夫婦のお楽しみ
「夫が甘党なので、週末は簡単なおやつを作ります」。かき氷のメロンシロップを炭酸で割り、バニラアイスクリームをのせてクリームソーダに。
休日はサッカー観戦でストレス発散
1990年トヨタカップを観て以来のサッカーファン。Jリーグ開幕当初から浦和レッズのサポーターで、ユニフォームを着て埼玉スタジアムに夫と観戦に。
→vol.2に続きます
『暮らしのおへそ Vol.30』より
photo:キッチンミノル text:一田憲子
Profile
有賀 薫
ライターを経て、2011年より約8年半、約3000日にわたって毎朝スープを作り続ける。おいしさに最短距離で届くシンプルなスープを提案すると共に、手をかけなくても豊かな食生活を送るためのライフスタイルにも目を向けて発信している。9月11日に『スープ・レッスン2』(プレジデント社)が発売予定。
スープ・レッスン https://cakes.mu/series/3722
スープ・レシピ https://note.com/kaorun/m/me9ca8fc37def
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