内田彩仍さん「家時間」vol.4 キッチン収納は十年後を考えて

「家時間」特集
2020.12.07

少し前に、長年住み慣れたマンションから、小さな一軒家に移り住んだ内田彩仍さん。住まいが変わり、家にいる時間が長くなったことで、ずっと大事にしていた「心地よく暮らす」ということに改めてじっくり向き合いながら見つめ直したのだそう。そんな日々を綴った本『家時間』から、今週、毎日1話ずつご紹介します。4日目の今日は、キッチンの収納についてのお話です。

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使い勝手を考えたキッチン収納
リビングに馴染むよう、家具のような素材と造りのシリーズを選んだカップボード、オープンシェルフ、吊り戸棚はリクシルのもの。背が高い食器棚の中の器がよく見えるよう、すぐ上の天井にダウンライトを新設しました。TOTOの淡いグレーのキッチンとの間にできた十五センチほどの隙間は、あえて埋めずにタオルハンガーを取りつけ、タオルと頻繁に使うアルコールスプレーをかけています。

キッチンは私にとって、家の中でどこよりも習慣が根づく場所だと思っています。だから、十年後の自分を想像しながら、今、キッチン収納を使い勝手よく整えておけば、まだ手習いのための時間はうんとあるから、十年後も自由自在に家事を楽しめているはずだと、思いを馳せています。食べることは心にも体にも栄養を与えてくれるから、これからの暮らしを楽しむためにも、欠かせないことだと思うのです。

新居にはとりあえずすべてのキッチン小物を運び入れ、引っ越し後、居心地のいいキッチンになるよう整理しました。まず、リビングの床に、大きな器から小さなスプーン一本まで重ねずに並べ、必要なものをひとつひとつ確認。本当にいるかいらないかを取捨選択していきました。新しいキッチンを目にしながら作業を進めると、いらないものがすんなり判断できます。その中で、まだきれいなものは、親や友人が持ち帰ってくれました。残すと決めたものは、手入れをしながら数日かけて、どこにしまうかを検討。はじめにきちんと居場所を作っておけば、使ったあとは戻すだけなので、いつも容易にしまうことができます。

コンロや流し台の下のフロアキャビネットは、淡いグレーのものを選びました。引き出し式なので、奥まで収納できるよう、楽に引き出せるハンドルつきのものに。歳を重ねると指先の力が弱くなるらしいので、毎日使う場所は特に、扱いやすいほうがいいと思ったのです。この中には、鍋や保存容器、日々使うカトラリーや保存袋など、食器以外のものを収納しています。

その右隣の収納ユニットは、リビングとの繋がりを考えて、家具のような雰囲気のものに。様々なパーツから選んで組み合わせることができたので、横長のカウンタータイプのものと、奥行きのある縦長のカップボードの他、リビングから見える位置に、壁づけのオープン棚もつけました。最近は埃が気になるので、見せる収納はあまりしていませんが、ここだけは特別に、どこから眺めても癒されるような空間になればと思いました。

近頃は、夫とふたりでキッチンに立つことを目標にしていることもあり、リフォーム案を考える時に相談してみたら、「キッチンに住みたい」というリクエストがありました。長年夫婦を続けていると、その時々で楽しみ方が変わってくるのですが、ここ最近は、家で食事をすることが何よりの楽しみだから、私と同じ気持ちになっていたのだなと思います。

そのため、ふたりで広く使えるよう、カウンタータイプのカップボードは作業台としても使うことに。コーヒーは夫が淹れることが多いから、この上にコーヒーメーカーとラッセルホブスの電気ポットを並べて。カウンター越しの窓から庭が見えるから、ここに佇んでコーヒーを飲みながら木漏れ日を眺めるのも、家事の合間の、いい休息時間になっています。

よく使う器は、唯一設けた背の高い収納棚にまとめています。日々使うものだから、中の棚板を増やし、あまり重ねずに収納。一番取り出しやすい位置には、毎日欠かさず使っている北欧の器を並べています。それを眺めるだけでも食事作りのモチベーションが上がるから、扉を開けた時の気持ちの高鳴りも考えながら、収納場所を決めていきました。

上段の棚には、これから器が増えてもいいよう、少し余裕を残してあります。道具やカトラリーなど、ほとんどのものは、この先あまり増やさない予定ですが、器だけは例外。疲れた時の手抜きごはんでも、器が食卓の彩りを助けてくれることもあるから、私の唯一の趣味として、無理に我慢しないようにしようと思っています。


コンロ下はグリルをやめて引き出しに
魚焼きグリルは手入れが大変なので、引き出しに変更しました。計量カップや味見をしたり材料を仕分けしたりする時に使う小皿など、コンロまわりで使うものをまとめておけるので、とても便利です。キッチン収納の引き出しには、中身が動くのを防ぐために、樹脂製の滑り止めを敷いています。透明で目立たず、水拭きすることもできるから、清潔に使えて重宝しています。


油や調味料など、瓶ものは深さのある引き出しに。使う度に瓶を拭いて戻せば、清潔さを保てます。


食品保存袋は種類別に立てて収納。ダイソーで、ちょうどいい大きさの仕分けトレイを見つけて。


食器拭きと台拭きを手前に。奥にはタオルハンガーにかけて使うハンドタオルをスタンバイ。


シンク下の横長の引き出しには保存容器などを。上から見て探しやすいよう、できるだけ重ねずに収納。


コンロの下には、鍋やフライパンを。使い終えたらサビ防止で油を染み込ませる鉄製のスキレットは他の鍋に油移りしないよう、無印良品のファイルボックスに入れて収納。


トングやゴムべらなどの調理道具、普段使いのカトラリーを、引き出しの中で仕分け。よく使うラップは、一番手前に。

 

→vol.5に続きます

『家時間』より
photo:大森今日子

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Profile

内田彩仍

Ayano Uchida

福岡県在住。夫、愛猫と暮らす。ていねいな暮らしぶりや素敵な着こなしが注目を集める。主な著書に『いとおしむ暮らし』『家時間』(ともに主婦と生活社刊)などがある。

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

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