【後藤由紀子さん連載】エレガントな女性への分岐点は、美しい所作と姿勢です【前編】
50代になった後藤由紀子さん。二人の子どもたちも社会人となり、長らく手放していた「自分の時間」が戻ってきました。家族中心の生活を送ってきましたが、これからは自分をもっと慈しみ、広げ、豊かで健やかな毎日を送りたい! そんな後藤さんの思いを実現するべく、いままで気になっていたこと、悩んでいたことについて、その道のプロにアドバイスをいただく連載を不定期でお届けしまーす!
text:鈴木麻子
この連載の撮影で、久しぶりにお会いした後藤由紀子さん。あら、なんだか雰囲気が変わりましたね。トレードマークのベリーショートからイメージジェンジですか?
「はい、髪を伸ばしているんです。もう何年も同じベリーショットだったので、ちょっと伸びただけで『女性らしくなった』『ドキッとした』なんて言われることもあり、ウキウキしてしまって。いくつになっても、見た目のアップデートは大事だなと思いました」
アップデートといえば、しばらくお会いしないうちに新しく始めたことが。自身のYouTubeチャンネル『後藤由紀子と申します。』を開設し、日々のお気に入り、暮らしの気づきなどを発信しています。動く後藤さん、しゃべる後藤さんを初めて見た、という方も多くいたようです。
「YouTubeのコメント欄では、内容についてだけでなく、姿勢や仕草を褒めていただくことが多くて、それは意外な発見でした」。そこから意識するようになって、日々の所作により気をつけるようになったそう。
「若い時は見た目が美しいかそうでないかなど、判断基準が単純だったかもしれません。でも歳を重ねると、それだけではない『滲み出るもの』みたいなものが、とても重要になってくるのかなと思います。造形や服装だけではなく、立ち居振る舞いとか、言葉遣いとか、かもし出されるオーラとか。そういう内面から溢れ出る品格みたいなものが、大人の女性には必要なのだと、年を重ねるごとに感じています」
ということで、今回、連載「専門家の力をお借りします」で後藤さんが探求するのは、大人の品格。東京・田園調布で真のエレガンスを養うための教室を主宰する丹生谷(にうのや)真美先生を訪ねました。
先生のサロンにお邪魔すると、そこは薄いピンクが散りばめられた柔らかな世界。ピンクのソファ、ピンクのテーブルクロス、ピンクのお花と、優しくロマンチックな雰囲気に後藤さんの緊張もほぐれます。
「ようこそいらっしゃいました」。出迎えてくださった丹生谷先生も、淡いピンクのカットソーがとてもお似合いです!
後藤さん(以下、後):今日は大人の品格、美しい所作について学びにやってまいりました。歳を重ねるにつれ、外見だけを整えていてもダメだなと思うようになりまして……。
丹生谷先生(以下、丹):そうですね。外見を整えるだけでは表面のことだけになってしまいます。でもね、外見もやはり大切なんです。「中身が大事」「中身を磨いてこそ」と言われた時代も、見た目が大事と言われていた時代もありましたが、心はあって当然、形はその心を伝えるものですから「どちらも大事」だと思います。
後:なるほど、おっしゃるとおりですね。見た目は、人の印象を左右しますしね。
丹:そうですそうです。たとえば、大好きなお友達のお誕生日があって、お祝いしようとお食事に誘うとします。そこへ髪がボサボサのまま向かったら、お祝いの気持ちが相手に伝わらないでしょう? 「おめでとう」という気持ち、「あの方に会える」という嬉しい気持ちがあったら、自然と整えよう、きれいにしようって思いますよね。
この日の先生も、耳元や襟元に大ぶりのアクセサリーをあしらい、とても華やかな印象。後藤さんとお会いできることが嬉しいという気持ちが、こちらにも伝わってくるようです。
それでは、丹生谷真美先生の美しい立ち居振る舞い講座の始まりです。
01
美しい立ち方
丹:最初にお伝えしたいのは、立ち姿勢です。美しく見えるポイントは、背筋がピンと伸びていること。後藤さんは姿勢がとても美しいですね。
後:実は、姿勢だけはよく褒めていただくんです。幼いころから親が厳しくて。ちょっと背中が丸まっているとすぐ注意されていたので、常に背筋を伸ばすように気をつけてきました。母に感謝しています。
丹:猫背になっていたり、だらっと重心が傾いていたりすると、どんなにきれいに身づくろいをしていても素敵には見えにくいですものね。
後:どんなふうに意識するのがいいでしょうか?
丹:頭のてっぺんが天から糸で吊られているようなイメージで、背筋をまっすぐに、というのが基本です。でも「姿勢を良く」といわれると、つい肩に力が入ってしまう方がいらっしゃいます。肩の力は抜いて、体の状態はリラックスしたまま、おへその下あたりの臍下丹田(せいかたんでん)に軽く意識を持ちましょう。両足をそろえて立ったら、片方の足を少し後ろに45度くらいの角度にずらします。カタカナの「イ」の字をさかさまにした形です。これが基本の立ち方、重心は後ろの足に置きます。手はおへそのあたりで軽く重ねるといいですよ。
電車やエレベーター中でも、信号待ちの時でもいつでも
・臍下丹田に軽く力を入れる
・片方の足を引いて逆「イ」の字の形にする
・重心を後ろの足に置く
というのを意識するように、と後藤さんに優しく語りかけます。そして、+αの決め技アドバイスもいただきました。
丹:写真を撮られるときは、前の足のかか
そんなお茶目な先生のアドバイスに、後藤さんも思わずウフフと笑います。
02
美しい座り方
さて次は、美しい座り姿勢を教えていただきます。
丹:さきほどの基本の立ち方で椅子の前に立ったら、「天から吊られている」ような姿勢をキープしたまま、頭を傾けないで垂直に腰を落とすのが美しい座り方です。いきなり椅子に深く座ろうとせず、椅子に浅くまっすぐ腰をおろして、それから後ろにお尻を移動させます。足元も基本の立ち方からそのままの形ですので、きれいです。
後:どかっと腰を下ろすと、「どっこらしょ」っていう感じに見えますもんね。ポイントは垂直に、ですね! これから気をつけるようにします。
次は足の置き方について、よりエレガントで美しい姿勢に見せるための3ステップを教えていただきました。
ステップ1(写真左)は、基本の立ち方そのままの足。これが基本の座り方。
ステップ2(写真中)では両足をやや斜めに流します。前の足の方向に、体の側面より外に出ない程度まで。
ステップ3(写真右)では、後ろの足の甲を前足のかかとに引っ掛けるように絡ませて。そうするとロックされたようになって安定感が増し、リラックスしつつもエレガントに見えます。
では後藤さん、さっそくトライしてみましょう!
まずはステップ1。
後:ちょっと緊張……。ぎこちなくて、すいません(笑)
丹:大丈夫、きれいですよ。上半身は背筋を伸ばしてリラックスしてくださいね。
ステップ2で、両足を斜めに。
丹:足を流すことで、基本の座り方より少しリラックスした雰囲気になります。
ステップ3は、後ろ足を前足の足首に掛けて。
後:足を斜めにしたままキープするのは、けっこう太ももの筋力が入りますが、足首で固定すると、少しラクになりますね。
丹:慣れてくるとより自然にできるようになりますよ。さらに体の向きを少し斜めにすると、よりくつろいで、しかもエレガントに見えます。女性の体は、斜めのラインを意識するとより美しく見えるんです。ただ、食事や仕事のときはテーブルやデスクの下で足をそろえてくださいね。本当はお膝もつけておきたいところですが、長時間は難しいですから、気がついたときに軽く足を閉じるようになさってください。
そして、ここでも先生から、+αの決め技アドバイスが。
丹:たとえばカフェで待ち合わせのとき、本を読みながら待っているとします。読んでいるフリでもいいのよ(笑)。向こうから待ち合わせの方が来るのが目に入ったら、さっと足をももで組んで斜めに傾け、両足を平行に。そして足の甲をピンと伸ばすんです」
そうすると、あら不思議。目の錯覚で、足がさらに長く見えるのだとか。でもずっと続けられる体勢ではないので、ここぞというときの決め技なのだそう。
丹:第一印象は大事ですものね。それと、もしけっこう長く待っていたとしても、相手が負担に思わないよう「あら、私も今来たのよ」といった表情をつくることも大事ですよ。
先生、さすがの心配りですね! さて、美しい立ち居振る舞い講座【前編】は、これにて終了です。明日の【後編】では、和食のテーブルマナーについて学ぶ予定です。お楽しみにー。
Profile
丹生谷真美
1986年より6年間、日本初のフィニッシングスクールの初代校長を務めた後、1992年独立。東京・田園調布にサロン教室「丹生谷真美のフィニッシングスクール」を開設。日本の歴史と伝統文化に基づいた生活美学を中心に、幅広い分野のカリキュラムを提案。現在はオンライン講座も。『暮らしを磨く美しい言葉』(主婦と生活社)など著書多数。
https://www.finishing-salon.com/
後藤由紀子
静岡県・沼津で器と雑貨の店「ハル」を営む。最近は「出張hal」として日本各地で期間限定の出店も。二人の子供は社会人となり、子育てもひと段落。暮らしの工夫や気づきを綴った飾らないエッセイも好評。近著に『気持ちを伝える贈りもの』(大和書房)。
Instagram「@gotoyukikodesu」
YouTube「後藤由紀子と申します」
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