最終回「それでええねんよー」と背中をポンポンされた気持ちになった、土井善晴先生の『一汁一菜でよいという提案』と万願寺唐辛子について。

京都「本と野菜OyOy」から
2022.09.05

今回ご紹介するのは土井善晴先生の『一汁一菜でよいという提案』(グラフィック社)です。
愛読されている方も多いかと思います。
10〜15年ほど前に、雑誌や書籍などあらゆるメディアで「丁寧な暮らし」「ひと手間をかける」などをコンセプトにした展開ばかりになった時がありました。
その頃は、それがすごく素敵に見えて「そうそう、そうやんな」と土鍋でご飯を炊いてみたり、竹ざるで米を研いでみたり…。
が、息子たちの成長や仕事が変わったりなど生活に変化がある度に、「丁寧度」が低くなったり荒くなったり、止まったりで疲弊し続かなくなりました。そんな自分がいやで落ち込んだり。
そのうち、大量のご飯が炊けないから一升炊き炊飯器にしたり、早く帰った人が誰でもすぐご飯が炊けるように無洗米に変更。
結局「じゃないと生活が成り立たない」のです。
やはり、その時の生活スタイルに合ったやり方じゃないと続きませんでした。
時間がないときは、コロッケや餃子を買って帰るし、レトルトカレーやインスタント麺も常備。
これは手抜きではないはず。
自分ですぐ食べられるもので、とりあえずお腹を満たして気持ちを落ち着かせる方が大切だと思う。そこに誰かが炊いておいてくれたご飯と、冷蔵庫にあるもので作った具だくさんなお味噌汁があれば良し。
まだ作れるな、と思えば野菜を炒めたりお浸しを作れば、上出来!と思うようになってずいぶんと楽に。
しんどいなと思いながら作るより、「今日も疲れたけどおいしいなー」と思えるよう気持ちに余裕を残したい。

なのでこの本を読んだときは、うなづきまくりました。
土井先生に「それでええねんよー」と背中をポンポンされたような感じでした
成人した息子たちはまだ家で一緒に暮らしているけれど、近い将来にそれぞれの暮らしが待っています。楽しくおいしく食べた日々を忘れずにいてくれたらなあと思うので、なるべく気負わずにイライラせずに過ごして行けたらなぁと。


さて、今月の OyOyのメニューのメインは万願寺とうがらしです。
この時期の夏野菜はじっくり育っているので皮は固くなりがちですが、コクがあります。
万願寺とうがらしは京都の北部にある舞鶴市が発祥とされています
とうがらしですが、辛味はありません。(まれに水不足などで辛みがでてしまうことも)
一般的に出回っている万願寺とうがらしは緑の未熟果で、香りがさわやかでほのかな甘み。
珍しいのが完熟した万願寺とうがらし。真っ赤でとっても辛そうなのですが、甘味がしっかりで、とってもフルーティーな味わいです。


店頭のメニューでは、緑と赤の万願寺とうがらしをふっくらジューシーに焼き、プルーンや酒粕、すだち果汁などを加えたさわやかな甘味噌を添えて。
収穫したてのかぼちゃは、さっとローストしてマリネに。ホクホクした食感を楽しんでいただけたらと思っています。

ご縁があり、2年近く続けさせていただいたこの連載。
41回目の今回が最終回となります。
拙い文章にも関わらず、お読みくだったりコメントをくださったり、本当にありがとうございました。少しでも料理本のおもしろさや、野菜の魅力がお伝えできたかなぁと思います。
また、お会いできたらうれしいです。

← 【京都「本と野菜OyOyから」連載記事はこちらにも】

本と野菜OyOy
京都市中京区烏丸通姉⼩路下ル場之町586-2 京都市営地下鉄「烏丸御池」駅直結 新⾵館1階

営業時間 11:00〜21:00
TEL 075-744-1727
https://oyoy.kyoto/

Profile

佐藤夕伽子

YUKAKO SATOU

京都「本と野菜OyOy」にて本の選書・売り場作り、運営を担当。
子供の頃から本はもちろん料理書が好きで、編集・メーカー企画販促・カフェ・雑貨店・書店などで勤務。ずっと本と食に関する仕事に携わる。大阪府出身で大阪と京都を行ったり来たり。社会人と大学生の息子ふたりと三人暮らし+ねこ。

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

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