第36回 ベルギーのワイルドすぎるたっぷり土つきごぼうで作る、おせち、きんぴら、ポタージュの味は…??
こんにちは、料理家の栗山真由美です。
2023年、あけましておめでとうございます。皆様にとって、幸多い年になりますように。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、新年最初のエッセイ、派手に始めたいところですが、テーマは地味なごぼうです。オランダ語ではSchorsenerenと言います。
今年も日本国外で作る、自由度の高い創作おせちを作りました。初挑戦したのは、“たたきごぼう“。
確か、2年前には気づいていたと思うのです。ベルギーにもごぼうがあるのだと。ところが、スーパーで目にしたごぼうは、もっと黒々していて、その姿にひいてしまった。正直、おいしそうに思えなかったのです。
写真下は行きつけのビオスーパーのごぼう。少し、やる気が出ました(笑)。そもそも、ごぼうは大好きな野菜。切り方や調理法次第で、七変化するのも魅力的ですよね。
こんなにたっぷり土のついたごぼうは久しぶり、おそるおそる試しましたが、もっと早く使うべきだった!と思うほどのおいしさでした。
見た目がゴツいので、日本のごぼうとは違うことを前提で挑みましたが、使い方によってはほぼ同じだと感じました。例えば、写真はささがきにして水に放した場面ですが、色も白いし、しなやかです。これで定番のきんぴらごぼうを作りました。
味のしみ方もほぼ一緒で、おいしくできました。少し太めのせん切り、薄切りなどいろいろ試しましたが、食感に関しては日本のごぼうとさほど変わらないかもしれません。冒頭のたたきごぼうも、実においしかったのです。
驚きがありました。違いは、皮がしっかりしているので、“こそげる”程度では安心を得られず、ピーラーでしっかりむきました。
日本の最近の野菜は品種改良が進んでいるせいか、アクがあまりない。ごぼうも例外ではなかったけれど、ベルギーのごぼうはアクが強いです。切ってから水に放すと水の色が即座に変わったり、空気に触れた切り口の変化も明らかでした。切り口に触った包丁や手には、滑り止めを塗ったかのようなアクも残りました。もしかしたら、日本のごぼうも昔はこんなふうだったのかも?と思いをはせました。
そして、じっくり火を通すと、少し芋類に近いようなほっくりした感じも出てきました。これは、以前から大好きなごぼう料理であるポタージュにしたら、すごく合いそうだと感じ、早速試しました。
ポタージュに関しては、ベルギーのごぼうのほうが合いますね。ほっくり滋味深い味に仕上がりました。これは発見です。
ごぼうって油との相性もよくて、ガラッと食感を変えてくれます。かつて、よく作っていたごぼうチップスも美味。
さらに、大好きなかき揚げも。カリカリでおいしい。日本で好きだった組み合わせは、桜海老と青のり。青のりは日本から持ってきたものを使いました。桜海老の代わりに使ったのは、ベルギーの北海で採れる灰色エビ。写真では見にくいのですが、しっかり入っています。ごぼうとの相性もバッチリでした。
灰色エビはベルギーらしい食材でもあるので、ご紹介しておきましょう。オランダ語でGrijze Garnalenと言います。殻付きのまま売られているものもあり、レストランで突出し的に出てきたこともあります。写真の灰色エビは、下ゆでされたむき身になります。
通年食べられますが、旬は初夏でベルギーの西側に面する北海沿岸でとれます。
ベルギーには特徴的なエビ漁があります。北海沿岸のOostduinkerkeを中心とした海岸線では、伝統的な馬に乗ったエビ漁(Garnaalvissers te paard)が今も行われています。かつてはイギリス・フランス・オランダでも行われていたそうですが、今ではOostduinkerkeが世界唯一の場所となりました。
2013年、ユネスコは「馬に乗ったエビ漁」を人類の無形文化遺産に登録しました。北海沿岸には、時々出かけていますが、その光景に出会えることは珍しいので貴重な写真です。馬に乗った漁師が海の中に入っていき、すくったエビをカゴに入れていきます。
今年も、
*写真の無断転載はご遠慮ください*
【栗山さんのベルギーおいしいもの通信㉟2年ぶりに開催されているアントワープのクリスマスマーケットと、それにまつわる食べ物について】はこちら
Profile
栗山真由美
料理家、栄養士。枝元なほみさんのアシスタントを経て独立。ポルトガル料理を中心とした料理教室「Amigos Deliciosos」を12年前から東京で主宰、日本ポルトガル協会の公認講師も7年間務める。2019年より、イギリス人のご主人とベルギー・アントワープに在住。著書に『ポルトガル流 驚きの素材組み合わせ術! 魔法のごはん』(エイ出版)、『「酒粕」で病気知らずになる ゆる粕レシピ』(池田書店)など。
https://ameblo.jp/castanha/
Instagram: mamicastanha
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