山形編vol.1 日常の中に金属を。金属工芸の工房とお店「汽水域(きすいいき)」
全国生産の7割を占めるさくらんぼをはじめ、フルーツ王国として有名な山形。
雄大な自然に加え、タイムスリップしたかのようなレトロな街並みの銀山温泉、クラゲの展示で知られる加茂水族館など魅力的な観光スポットが数多くあります。
今回案内してくれるのは金属工芸の工房とお店「汽水域」を営む太田さん。遠くの友人が遊びに来てくれたらおすすめしたい場所をイメージしてお店をチョイスしていただきました。
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初めまして、山形市に住んでいる金工作家で雑貨店店主の太田藍といいます。
皆様に山形の素敵な場所をご紹介する前に、まずは自己紹介として
私と夫が営んでいる金属工芸の工房と店「汽水域」をご案内しますね。
「汽水域」は、やまがたクリエイティブシティセンターQ1(キューイチ)という建物の2階にあります。
元々は山形市内の別の場所で店を開いたのですが、
ご縁があって2022年の9月にこの場所に引っ越してきました。
Q1は山形市立第一小学校の旧校舎で、1927年から街の移ろいを見守ってきた場所です。
建築当時の雰囲気がそのまま残された階段を上り2階へ。
「汽水域」は建物の西側、2-Iという部屋にあります。
まずは店内から。
後でご案内する金工工房で作った金属のアクセサリーや日用品をはじめ、
日常の中で金属と一緒に使って頂きたい、雰囲気の良い雑貨類をセレクトして扱っています。
この山の形シリーズのネックレスは長年の定番商品の一つ。
私の出身地は福岡市なのですが、山形に引っ越してきてまず印象的だったのが
五月でも頂きに雪の残る美しい山々。
お客様とお話をしていても、山形の方はそれぞれ心の中にお守りのように大切に思う山があるのだと感じることが多く、それなら本当にお守りのように身に着けられるような山を作ろう!と思い立ちました。
他にも、いろいろなテクスチャーを組み合わせたマネークリップや
エダマメをモチーフにしたイヤリング、面ごとに模様を変えたバングルなど定番の商品から出会えたらラッキーな一点ものまで
日々の暮らしやお客様との会話の中で思いついた商品を二人で作っています。
店内には手に取っていただきやすい比較的カジュアルなものを中心に並べていますが、
私たち、特に夫のメインの仕事は職人として預かる工芸に関するもの。
店からガラス越しに見える金工工房が汽水域の心臓部です。
並んでいる道具は、遠目には似たように見えてもそれぞれに役割が違っていて
その時の仕事に合わせて作り足すこともよくあり増殖中。
親御さんと一緒に来てくれた小さなお子さんが興味津々であれはなに?!と聞いてくれるとこちらまで楽しくなります。
金属工芸は大きく分けると、溶かした金属を型に流す「鋳金」、金鎚を使って立体的な形をたたき出す「鍛金」、私たちが得意としている「彫金」の3つになるといわれています。
彫金=アクセサリー作りと思われる方もいるかもしれませんが、
元々は読んで字のごとく金属に彫刻を施す技術の事を指す言葉。
昭和の習い事ブームのころに「彫金教室」という言葉が定着する過程でアクセサリーに関するイメージが強くなったそうですよ。
山形にはその昔から(一説によると平安時代から!)鋳物をはじめとした
金属加工の文化が根付いています。
汽水域では鋳物はやらないのですが、
地域の鋳物屋さんからお預かりした鉄瓶などの表面に
象嵌といって違う種類の金属を嵌め込む表面加飾などを担っています。
夫であり汽水域の代表を務める太田崇史は
江戸時代から祖父の代まで山形市内で金属工芸に携わってきた家に生まれ
自身は京都で10年あまり職人として働いた後、
故郷で金属の仕事がしたいと2017年に山形に戻ってきました。
鋳物関係以外にも刀装具や昔ながらの簪、帯留等…細工物を中心に職人としての仕事をしつつ、
オーダーメイドや思い出の品の修理などもお受けすることで
現代の私たちの暮らしから少しだけ遠ざかってしまった金属という素材を
身近に感じて頂けるような店になれたらいいなと願っています。
工房では趣味として通って頂く彫金教室や、月に一回程度開催する二時間前後のワークショップなど、
金属の加工を実際に体験していただける機会もありますよ!
山形旅の途中に遊びに来て下さるととても嬉しいです。
山形には、派手さはないけれど
こじんまりして、オリジナルで、素敵な場所が沢山あります。
今回の連載では、移住者でもある私自身が
遠くの友人が遊びに来てくれたらおすすめしたい場所をイメージして選んでみました。
皆様の心の中のやまぬ漂泊の思いを少しでもくすぐれたら幸いです。
〒990-0043 山形県山形市本町1-5-19
やまがたクリエイティブシティセンターQ1 2-I/J
TEL:023-676-5660
営業時間:10:00-18:00
定休日:火・水曜日
https://www.kisui-iki.com/
Instagram:@kisui_iki
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