「ギャラリーフェブ」引田かおりさん【後編】「昔の買い物が、いまにつながっていました」

大人の暮らしで見直したもの
2017.04.25

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吉祥寺の「ギャラリーフェブ」。オーナーの引田ターセンさん、かおりさん夫妻の五感に触れ、ハッピーをもたらしてくれた「いいもの」を紹介するギャラリーです。暮らしのなかで自然に出合ったもの、人に勧められてはまったものなど、「いいもの」の種類はさまざまですが、そのすべての根っこは引田家の暮らしにあります。
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ゴールデンウィークに行われるかごの展示会「そだてるかご展」は、かおりさんがうんと若いころに買った四角いかごに端を発した企画です。

「30年前に買った四角いかごがありまして、私はそれがすごく好きなんです。かごって丸が多いけれど、四角だと収納しやすかったり、物のおさまりも良かったりですごく使い勝手がいいんですね。持ち手が短いので重さも感じにくいし」

お茶の道具を入れたり、おにぎりとお茶を入れてちょっと公園まで出かけたりと、生活のいろいろなシーンで重宝し、いつだって引田家の暮らしのなかにありました。30年経ったいまでも、古びることなく、こっくり飴色に変化したかごは誇らしそうに艶めいています(写真右)。
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「とあるきっかけで、大分のかご作家さんに出合うきっかけがあり、この四角かごを復刻してもらったんです(写真左)。その方、とっても勉強になりましたっておっしゃってくれました」

かつての名人が編んだ目を手掛かりに、現代の作家さんがひと目ひと目編み進め……。出合うことのない二人の工人が「もの」を通して出合い、心を通わせるという素敵な物語を生みました。そして、再生された美しいかごを多くの人にシェアしたいと、かおりさんは「そだてるかご展」を開きます。

「決して安いものではないのだけれど、人の手で丁寧につくられたものが家にあると豊かな気持ちになりますよね。簡単に手に入って、安いものってお手軽ではあるけれど、そだてていくというよりは、消耗していくという感覚に近い」

そだてる楽しみ。それを知れたのは、ときとともにより美しくなっていく過程を目にしてきたから。そして、そのものが、自分の暮らしの幹を太くしてくれていると実感しているから。
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「昔の買い物がいまにつながっているとは、すごいことですよね。最近の若い人はあまりものを買わないなんて聞くけれど、『迷ったら買おうよ』と、私は思ってしまいます。自分でお金を出して買うって、経験になるし、ひとつの勉強だと思います。作っている人の応援にもなりますね。かごなんて特にそう。日本の手工業を応援しているって思えたら、すごく素敵なことじゃないですか?」

 

text:鈴木麻子 photo:大森忠明

 

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Profile

引田かおり

KAORI HIKITA

2003年、吉祥寺に夫のターセンさんとともに「ギャラリーフェブ」とパン屋「ダンディゾン」を開く。2016年に、ギャラリーの近くにある一軒家と運命的な出合いをし、そこをフルリノベーションして引っ越ししたばかり。その詳細は新刊『二人のおうち』(KADOKAWA)にて。4/29~5/5に開催の「そだてるかご展」では、よい素材でつくられた美しいかごを多数紹介。http://www.hikita-feve.com/

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