旅が教えてくれた、古いモノの魅力。その記憶は今も私の原風景

今日のひとしな
2025.12.03

〜「tömpa(東巴 / とんぱ)」より vol.3〜


古いものを大切にする祖父や父のもとで育った私は、いつのまにか自然と、時を経たものに心惹かれるようになっていました。
そして、古道具以外の“古いモノの世界”に本格的にのめり込んだのは、学生を終えたばかりの20代はじめのこと。アルバイトで資金を貯め、友人とバックパックを背負って出かけたヨーロッパ1年の放浪旅が、そのきっかけでした。最初に訪れたのはイギリス。現地で待ち合わせをしていた古着屋の知人に誘われ、ロンドンのカムデンやコヴェント・ガーデンのマーケットで、買い付けの現場を間近に見せてもらいました。当時、彫金を学びながらヨーロピアンバイクのBSAゴールドスターに憧れていた私にとって、マーケットの光景は衝撃的で、道行く人の洋服や持ち物、街で使われる道具や人々の熱気、そしてそこに流れる時間のリズムにまで、その鮮烈な印象が、今でもはっきりと心に残っています。


イギリスで過ごした3ヶ月間は、美術館やお城を巡り、週末にはマーケットや蚤の市へ通う毎日でした。見つけた古いものを日本へ送りながら、夜はカフェやパブで友人たちと語らい、旅の話に花を咲かせる。
バックパッカーのはずが、マーケットを巡るたびに心惹かれるものが増え、気づけばリュックはいつもいっぱいに。国を移動する際、大きなアイアンアートの花入を背負って歩いていた自分を思い出すと、今では懐かしく、思わず笑ってしまいます。あの少し贅沢な日々こそが、私の「モノを見る目」を育ててくれた原点だったのかもしれません。


クリニャンクールの蚤の市では、東京から来られていたバイヤーの方にお会いし、アンティークのお皿について、年代ごとの窯元やスタンプの違いを教えていただきました。その時は正直、よく分かっていなかったのですが、年上の先輩方が惜しみなく知識を伝えてくださる姿に感動し、何も知らない若者の私に真剣に向き合ってくださったことが、とても心に残りました。
あのときの経験が、今の私の原動力のひとつになっています。いつか自分も、あの時のように学びを次の世代へ繋いでいけたら… と、そんな思いを常に胸に抱いています。


以前はアジアンフードやお酒を出すお店をしていたことや、山岳民や少数民族の衣装を販売していたこともあり、海外に行くと、ジンクスみたいな、自分ルールみたいな感覚で、ヨーロッパでも、まずはパッタイかフライドライスを食べるのが習慣になっています(笑)。
 


それと、どこへ行っても、フルーツや野菜を買って食べるのが楽しみです。買えないときは、眺めるだけでもなぜか元気が出るんです。


ベトナムの熱気あふれるマーケットでも、フランスの穏やかなマルシェでも、まず足が向くのは、果物や野菜が並ぶあの一角。
朝の光を浴びて、山のように積まれたトマトやハーブ、果汁を滴らせるパパイヤ。
売り手の笑顔や、通り抜ける風のにおいまでが、その土地のリズムを教えてくれ、旅の疲れも、色と香りの中に溶けていく気がします。


古いもののある暮らしは、少し不便で、でも心が落ち着く。そんな時間を、誰かの日常の中にも分かち合えたらと思います。今日のひとしなは、そんな想いそのもの。モノを選ぶことを通して、自分の暮らしをどう整え、どう生きたいかを考えるそんな小さなきっかけになればうれしいです。



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tömpa(東巴 / とんぱ)

静岡県湖西市新居町新居2731
TEL:053-594-8633
営業時間:11:00〜17:00
定休日:日・月
(※展示会期間中は日・月も営業 / 最新情報はSNSを確認)
Instagram:@tompa_japan
(※営業日や展示会・料理教室などWSについては随時Instagramでお知らせ)

Online Store:
https://www.83com.com/
https://tompa-antiques.stores.jp/
https://www.rakuten.co.jp/tompa/

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