漢方薬でできることって何? Vol.2
先生、ちなみに……田中の体は、一体どういった状態だったのでしょうか?
「田中さんの場合は、簡単に言うと『血虚(けっきょ)』の状態。単純に血液が足りていない。血液は体の中をめぐりながら『酸素や栄養素を運ぶ』『体温を維持する』『老廃物を回収する』などの役割を果たしますが、それが不十分だから、体のすべての臓器が50%程度しか働いていないんですね」
がががーーーん。確かに私はとにかく日々「疲れやすい」。一日外仕事を終えて家に戻ると、ぐったりしてしまうのが日常ですが、その疲れと月経痛は、漢方的には同じ根っこから生まれたものだったのです。先生は問診の中で尋ねた、身長や体重、冷え症という体質や血圧の低さ、月経痛の痛みの種類といったことから、私に必要な生薬を割り出していったのでした。
「だから田中さんにお渡しした薬には、血液を作ってまわす芍薬や当帰、それと体を温め、体力を上げる人参や桂皮などを多く配合しています。これが西洋医学の薬だと、どうしても痛みをやわらげることが中心になるので、不調の根本的な解決にはつながりにくいのです」
同じ「月経痛」であっても、痛さがじわじわした鈍痛なのか、キリキリ刺すような痛みなのか、また、冷え症か暑がりか、太っているのかやせているのか、血圧が高いのか低いのかなど、それぞれのタイプで処方する薬は変わってきます。その人の不調を招く根っこの部分にアプローチしていくことで、不調を改善していくのです。
漢方による体質改善という意味が、何となく分かったような気がしました。しかし体質改善というと、何だかものすご~く長く、薬を飲み続けなくてはいけないようなイメージです。漢方薬の価格は決して安くはないので、それがネックで足を踏み出せない人も多そうな。しかし先生は、きっぱりとこう言います。
「みなさん誤解していますけれど、漢方薬は即効性がありますよ。きちんとその人に合う漢方薬であれば、風邪だったら薬を飲んで2~3時間後で治る方もいらっしゃいます。花粉症の方は問診している5分の間に、出した漢方茶でくしゃみや鼻水が出なくなる人がほとんどです。たとえば風邪で1週間服用し続けて治ったとしても、それは飲まなくても治っていたものでしょう」
確かに私も、「翌朝のすっきり目覚め」は、飲んだ翌日からのことでした。長い慢性病や重たい病気でも、長くても20日くらいで効果が現れてくることが多いのだとか。私のような月経痛は、数か月は飲んだほうがいいけれど、たいていの患者さんは体調が上向いてくると、知らず知らずのうちに薬を飲むのを忘れるようになり、忘れたときがその薬が必要なくなったとき。そのまま半年もかからず卒業してしまうパターンが多いのだとか。
ちなみに漢方の入口というと、「風邪に葛根湯」「生理痛に当帰芍薬散」など、西洋医学的に病気に当てはめている「病名漢方」の市販薬が一般的です。けれどもこちらは、あくまで不特定多数に効きそうな平均をとったもの。本来、ひとりひとりにあった処方で作った薬が、漢方薬のあるべき姿だと市川先生は言います。
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漢方相談は無料。相談により処方するすべての粉薬・煎じ薬1か月分¥16,200。癌の場合のみ1か月¥32,400。10日分、20日分でも調剤可。
Profile
市川仁
長野県生まれ。1996年、東京・阿佐ヶ谷に「市川仁生堂薬局」を開業し、女性特有の病気のほか、花粉症やアトピー性皮膚炎、動食物アレルギーなど、さまざまな病状の人の健康相談を続ける。
田中のり子
衣食住、暮らしまわりをテーマに、雑誌のライターや書籍の編集を行う。『ナチュリラ』(主婦と生活社)は創刊当初からのスタッフ。構成・執筆をした『これからの暮らし方2』(エクスナレッジ)が好評発売中。
肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。