「EB.A.GOS(エバゴス)」のバッグが生まれるところ(前編)
20周年記念書籍『EB.A.GOS バッグ ヲ ツクル』発行記念specialインタビュー
「ナチュリラ」や「暮らしのおへそ」読者の皆さんにもファンが多い、バッグブランド「EB.A.GOS(エバゴス)」が昨年、誕生から20年という節目を迎えました。直営店もホームページもなく、その全貌をなかなか知ることができない「エバゴス」の物づくり。この春、20年の歩みを書籍にまとめたというデザイナーの曽我部美加さんに、じっくりお話しを伺いました。
編集部がある都心から、電車を乗り継いで約1時間。とある私鉄の駅前から、今度はタクシーに乗り込んで運転手さんに行き先を告げると、「合点承知!」とばかりに車を発進させました。「お客さんはどこから? 東京都内? じゃぁ近いね。昨日は九州から、その前日は奈良からの人を乗せたよ」と運転手さん。年2回開かれる「エバゴス」の展示会を訪ねるときはいつも、こんなふう。つまり日本各地のショップのバイヤーが、わざわざ都内から1時間以上をかけてでも足を運び、「新作をこの眼で見たい」と思わせる、それが「エバゴス」のバッグです。
1997年にデザイナーの曽我部美加さんが、たった一人で始めた「エバゴス」は、昨年20年という節目を迎えました。帽子を逆さにしてバッグに仕立てたり、籐のかごにラビットファーをほどこして冬に持つかごを提案したり。曽我部さんがデザインするバッグは、それまでのバッグの概念を軽く飛び越え、自由で唯一無二の魅力にあふれていました。おしゃれさんのクロゼットには「エバゴス」あり。この20年でそんなイメージがすっかり定着しています。
「私たちが作るバッグがユニークなのは、うちが“ブランドでありメーカー”であるからです」と曽我部さん。
「通常、バッグ作りというのは、デザイナーが絵型とサイズバランスの指示書を作り、それを型紙に起こして工場さんがサンプルを作ります。そこに何度か修正を加えて最終形ができ上るのですが、私はそもそもデザイン画を描きません。心に浮かんだイメージを自分の手でまず作ってみるんです。それを専任のスタッフが実際の素材でサンプルに仕上げていきます。『ここを縫って』『ここをほどいて、こんなステッチに』と、切ったり貼ったりを何度も繰り返します。例えば……」
と曽我部さんが手にしたのは、「エバゴス」の定番素材である紅籐のかごバッグ。
「この外側のステッチは、持ち手を補強するものですが、わざとランダムに針を入れています。整然と美しいステッチを入れる場合もあれば、踊るようにリズミカルなステッチを求める場合もあって、針目の大きさから向きまで、ものすごく些細な調整を繰り返すので、自前の”コウジョウ“でないとできないんです」
サンプルを作るときには『後戻りしない』が口癖
「糸が途中で切れてしまったり、生地がはみ出てしまっても、後戻りせず、とにかく心に描くものを1回作ります。だから最初のサンプルは決して美しくないし、頭に描いていたアイデアは「この程度だったか」と、たいてい気に入らないんです。そこから切ったり、貼ったり、手を動かすうちに「あ、これならいい! これがいい!」と思える瞬間が訪れる。それは頭では到達できる領域ではないんですよね。頭から生まれるアイデアは手がつくるものにすぐ越されます。逆に越されないと、商品にはしません」
曽我部さんの話を聞いて、「エバゴス」のバッグを初めてわが家に持ち帰ったときのことを思い出しました。部屋の一角に置いたそのバッグについつい眼を奪われて、知らず知らずに見つめてしまうのです。バッグなのに、バッグを超えた何かがある。それはデザイナーである曽我部さん自身も思いもよらない、“その先”を形にしているからなのかもしれません。
photo:岡 利恵子
後編に続きます
『EB.A.GOS バッグヲ ツクル』発売を記念して、イベントが開催されます!
◎6/16(土)〜6/27(水) 「メリーゴーランドKYOTO」
京都府京都市下京区河原町通四条下ル市之町251-2 寿ビルディング5F
◎7/3(火)〜7/8(日) 「森岡書店」
東京都中央区銀座1-28-15 鈴木ビル1F
*出版記念に合わせて、特注のミニバッグのオーダー会を予定。
イベントの詳細は、決まり次第「エバゴス」のフェイスブックでお知らせします。
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